第78回 田んぼに水が届くことの尊さ、お米づくりも雨が必要。

2023.8.1
映像の持つ力

休眠するもの、輝きを増すもの

トマトが生えてこない。
えっ、毎年、自家採種を繋いできた、うちのトマト。がっくり肩がおちます。
種採りが出来ないとは・・、トマトを食べられないことより苦しい。

うちの “小さな森のある畑” は、水道がないため、天水だのみです。
今年の7月は、40度を超える勢いの高温日が続き、そのうえ、夕立のひと雨さえ降りません。
手だてが無いとはいえ、畝で萎びてゆくキュウリやナスを見るとやるせない。

救いは、実験栽培中の果樹の下に植えた、キュウリやナス。
梅の木が広げた葉が、猛暑の熱波を和らげる、木陰をつくり、なんとか耐えています。
木陰の他に、リーチング効果で、木に茂る葉から落ちる雨露からも栄養を吸収でき、しっかり根を張ることが出来ているからかも知れません。

そして、こんなにもお手上げ状態の、あばれた天候でも、びくともしない植物がいました!
漢方果樹のナツメの木。葉の表面は艶々し、実もびっしり生っています。

 

果樹の成熟とセミの羽化

七月一日。ジ~~と、ニイニイゼミが鳴き始めました。
今年も、うちのポポーの木からセミが羽化したようです♡。

ソルダム(スモモ)は大豊作。
生理落果が減り、熟成が進んでくる頃には、一度に樹上完熟の実が50個ほど採れました。
熟成落果と合わせ、追熟や保管のため、冷蔵庫とクーラーボックスが大賑わいです。

翌朝、畑に行くと、いつもと様子が違います。
大粒で美味しそうに熟したソルダムの落果実が8個も、かじられていました。ギョッ。
騒ぐ気持ちを抑えて観察。
この連続した歯形は・・、ナメクジや虫や鳥の跡ではない。動物だ!!

ほどなくして、車道に面した、となりの畑との境にフィールドサイン(動物の糞)を発見。
その中をかき分け観察するとソルダムの皮が出てきました。
うーむ、ソルダムを食べ、お腹いっぱいになり畑を出て巣に戻ろうとした、その時に糞を残したのかな?。

私たち、そして、虫や鳥や動物に食べ物を与えてくれたソルダムの木。
今か今かと十年待ち、今年は200個を超えるほど収穫できました。(昨年は数十個)
ありがとう。

 

収穫できないことより苦しいこと

わたちしたちの、小さな森のある畑では、毎年、トマトは勝手に生えます。
手をかけて育苗したトマトの苗より、通路やそこかしこで自然に発芽したトマトの方が見事に育ちます。

そんな調子ですから、今年は苗を止め、自然生え一本にしたところ、猛暑の高温、雨枯れの極みがたたり、トマトが生えてきません。
いくら雨が苦手なトマトだって、発芽の時に、雨が降らないことには、どうにもならないよね。

 

今年はミョウガが広がり立派な繁茂ぶりをみせてくれました。
雨が少ないとはいえ、7月中旬になんとか、30個ほど収穫できました。

ですが、二週間も経つ頃には、葉焼けをおこし枯れる寸前です。
これでは、秋ミョウガは採れそうにありません。

収穫できない残念さより、せっかく成長したのに、天候異常から枯れてしまったことに、ただただ申し訳ない気持になります。

 

人も生物多様性の一員だということを実感できる場所

それでも自然は生きています。

なんと、ミョウガから、ニイニイゼミが羽化したのです!
ミョウガの実を探しに分け入ると、ミョウガにキラキラ緑色に光るセミの成虫が止まっていました。
初めは羽化した後に飛んできたのとも思いましたが、 いえいえ、すぐそばのミョウガにセミの抜け殻があります!!。

 

そして、なんと、なんと、
同じ日に、ポポーの木から、4匹のニイニイゼミの抜け殻を発見しました。
その中の二つはペアのように、並んでいます。

 

クモの世界では、
コガネグモが姿を消した後に、ナガコガネグモが、果樹に大きな糸を張ります。
さらに、最終の土曜日の夜、畑に行くと、初めて見るクモがいました。

ライトを当てると、今までで最大規模のクモの巣が夜空に浮かび上がります。
コガネグモと同じぐらいの大型のクモが、離れた二本のスモモの木にクモの糸を張っています。
クモの糸も太く見えます。何グモかしら?

 

毎日が異常気候、へばりますね。

それでも生態系は生きています。

枯れる植物もあれば、生き生きとする植物もいます。

新しい昆虫も現れました。

この小さな森のある畑は、人も生物多様性の一員だということを実感できる場所です。

 

このお水。もともとは雨なんだよね。

急きょ、新しく、田んぼをお借りすることが出来ました。
休耕田群の田んぼの一角です。

稲を移植したあとは、水路の掘りさらいと、崩壊した水路の壁を修復です。
昼間は、全身を熱波が覆い苦しく作業ができません。
毎夜、二人で、取水口から、うちの田んぼまで100メートル、こつこつ進めました。

一週間がたち、
なんとか、取水口から、うちの田んぼまで、水路に水を通すことができました。やったぁ。

用水配分の、このお水、もともとは雨よね。
雨が降り河川になり、用水や水道で使うための水利が可能になる。

今年も雨が降ってくれるから。かんがい深いことです。

 

生態系の中で、人間だけは、他の生きものから捕食されるません。
自然の摂理を乱さずに、自然を利用し、手をかけ、食べものを得る知恵を働かすことができるのも人間。

 

「お米を食べる人みんなが、田んぼの水路のことに思いを馳せることが出来たら、この国はいい国になるよ。」

そんな言葉が、身に沁みます。

(中川美帆)

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