神奈川・緑の劇場 vol.19

2023.1.31
神奈川・緑の劇場


ろうばい園里人(さとびと)の夢青空に

松田町・寄(ヤドリギ)。谷あいの集落を見下ろす丘の斜面が光を受けて黄金色に輝く。小学生が卒業記念に植えたロウバイ。年ごとに本数を増やし立派な光の回廊が楽しめる。柔らかい枯れ葉の足元も心地よく、踏み音も愉しい。

茶店で、どれもこれも魅力的なお品書きから、豚汁を頼んだ。味噌が旨い。すべて地元の野菜も旨い。具材の丁寧な作り方が嬉しい。

寄で40年、有機栽培でお茶づくりを続ける佐藤成緒(しげお)さん宅を訪ねて、豚汁が絶品だったと話をしたら、作ってくれた人は、もう辞めようと思ったけれど、皆に頼まれて今年も作ることにしたんだという。

甘酒も濃い味にほどよい塩味。竹の皮でしっかり包んで蒸したおこわ。一品一品に気持ちがこもる。味が心に沁みる。

全部食べたい。胃袋が足りない。と最初は冗談で言っていたのだが、本当にそう思う。寄の人々の思いに、また触れに行きたい。

身近な神奈川の山里に〝ふるさと〟があった。

(2023年1月30日記三好豊)