神奈川・緑の劇場 vol.11
2022.5.31神奈川・緑の劇場
写真・「れくいえむ」の朗読を再開しました。
平潟湾に近い、金沢区洲崎町・金沢平和センターにて
〝観客〟の方が録音をとってくれました。
5月29日三好さんの朗読、郷静子さんの「れくいえむ」は
7時間40分話し続けた超人的なものでした。
語り始めとエンデイングまで、声の調子も呼吸も乱れることはありませんでした。
エンデイングの箇所からの録音を添付でお届けします。
8月15日の終戦(敗戦)に向けてもう一度8月中に朗読されます。
次回は戦争の苦しみと悲惨を知らない学生・若い方も含めて多くの方をお誘いし
ましょう!
※写真を撮ってくれたかたからのメールより引用
●地産地消の運動に携わって35年がたちました。
35年前。1987年。日本国憲法を改悪しようとする動きに危機感を持った横浜の弁護士の皆さんは、日本国憲法を守る活動をされていました。(その中に、オウム真理教に家族とともに殺害された坂本堤弁護士もいました。)彼らは、より幅広い人々に、日本国憲法の大切さを伝えるにはどうしたらよいのか?演劇によって伝えることができるのではないか?!一歩先に、東京で上演されたふじたあさや氏の作品がありました。横浜でも上演できないだろうか!?
●横浜には横浜の憲法に関わる課題があるじゃないか!
のちに、作・演出を長年に渡って担うことになる濱田重行氏と、横浜演劇鑑賞協会事務局長の中山誠一氏に相談がもちかけられた席に、中山氏からのお誘いを受けて私も参加させていただいたのです。当時は野毛の大沢屋ビルにあった横浜演劇鑑賞協会の事務所でした。
「横浜で上演する作品は、横浜オリジナルがいい。」タイトルは、「頑張れ!日本国憲法」にしよう!こどもから老人まで、初心者から経験者まで市民が数十人で創る市民ミュージカルの始まりでした。
●郷静子さんの作品「れくいえむ」との出会い
第一回の上演は憲法記念日を前にした4月下旬。前後して、中山氏に教えていただいた郷静子さんの芥川賞受賞作品「れくいえむ」の朗読会を催しました。当時は、横浜大空襲の場面を中心に部分的な朗読でした。7時間30分かかる全編の朗読をするようになったのは、「はまどま」での活動が始まってからです。
●神奈川農畜産物供給センターへ
そして、杉並区の劇団展望時代から交流のあった、のちに、湘南演劇鑑賞会事務局長になる黒川栄氏に「三好さんに向いている職場で職員の募集があるよ。面接を受けて見ない?」と紹介されたのが、生産者たちが自主運営する産直センター、神奈川農畜産物供給センターだったのです。正確に言えば、黒川氏に職員へのお誘いがあったのですが、彼は演劇関係の仕事を求めていたこともあり、子どもが二人いた私の先行きを案じて替わってくれたのです。
日々を農業とともに、生産者とともに働くことができる!?十代のころから農業への憧れがあり、劇団展望では、演劇を通して農林水産業に近づく機会を得ていましたので、私にはこれ以上の職場は無いと思えました。5月25日付けで同センターに入職し、32歳8か月にして初めて正規職員となりました。ユニオンショップ契約を結んでいた職場でしたから、正規職員は(パート職員も)労働組合に入ることが義務づけられていて、初めてメーデーや、機会あればデモ行進にも参加し、シュプレヒコールのマイクも握る“組織労働者”になったのでした。
●農業と演劇「神奈川・緑の劇場」につながる道をこれからも
今、憲法を変えようと声高に言われるようになり、しばらく休んでいた「れくいえむ」の朗読も始めました。5月29日は、横浜大空襲から77年。当時の横浜で暮らした若者たちの姿と苦悩は、体験者として語ることができる人々が次々と鬼籍に入る中で、郷静子さんが作品として書き残してくれたことに深く感謝しています。
ロシアによるウクライナ侵略。今までの朗読では得られなかった感情がこみ上げて苦しい朗読になりました。はたして、休憩を含んで7時間40分。どうやら、まだ体力はあるようです。とうぶんの間は、「れくいえむ」の朗読を続けなければならないと思います。
もっとも、楽しい作品や短編の作品の朗読も再開したくなりました。
紙芝居や民話も、コロナ以来2年半ぶりに声をかけていただきましたので、こちらも子どもたちとの出会いが楽しみです。
●農業は?食料危機にどうやって備えるか?食料危機はある日突然やってきます。
約40年前。食料自給率(カロリーベース)が50%を切るようになり、食料安保の必要性を訴える声が上がりました。以後も食料自給率は下がり続けました。ついに37%。史上最低にまで下がっています。食料だけでなく、肥料の原料、燃油、農業資材までもが輸入が滞り、高騰して農業経営を圧迫しています。
“種”も、大資本におさえられ、多くを輸入しなければなりません。少しでも自分で栽培しようと、種や苗を求める人が増えているといいますが、その種も足りなくなるでしょう。
●命を支える食べものを、私たちはどう確保していけばいいのでしょうか?
政治家や“有識者”たちは、食料自給率を向上させるべきと口をそろえます。が、その手立てはまったく不十分で、戦後の農業政策のほとんどを担って日本農業を破壊してきた与党の政治家が、本気とは思えないのです。
食料危機が襲ってきてからでは間に合いません。いよいよ輸入できなくなれば、食料自給率はいやでも上昇するのではないですか?今となっては食料自給率を見ることにどれほどの意味があるでしょう?NHKでも昆虫食をこれからは!という番組を作っていました。
●大切なことは、農地の耕作率の向上をし、作れる限り作る政策への転換
最大600万ヘクタールあった日本の耕作地は、400万ヘクタールに減って、さらに耕作放棄地は広がる一方です。基幹的農業従事者の平均年齢は67歳を超えてしまいました。大半が後期高齢者になろうというのに、あらたに作物の増産を担えというのが今の政府です。
少しでも若い世代に、農林水産業に携わってもらうしかない。国土と環境も守ってもらわなければなりません。家族を養い人生設計を立てられるように、心豊かな暮らしができるように、欧米並みの国をあげた政策が必要です。
●これからの世界は気候危機による大不作の連続。飢餓人口の拡大。日本は人口減少だから必要が減る、と作れる国なのに作らないで良いのか?
自然農法は日本オリジナルの農法です。日本は、世界的に見ても有機農業に適した自然環境だといいます。そして、日本の里山の豊かさは世界随一だと。ここまでは、最近の「食べもの通信」情報です。ですが、日本こそ、食料輸出国になる時代へ!とずっと思っていました。日本での米の消費が減ったから、需要にあった作物を作れと政府はいいます。ほんとうにバカだとしか思えません。「今だけ・金だけ・自分だけ」の日本人と最初に言ったのは誰なのか?いつになったら、里山に学び、自然から学ぶ豊かな心の暮らしをみんなで分かち合うことができるのか?日本の自然環境にあった作物。季節にあった作物を作り、食文化にすることが、化学肥料や農薬に頼らない道では?持続可能な道ではないでしょうか?
●資源の無い国と小学校時代から教わってきましたが、ずっと納得できませんでした。“自然”の恵みに溢れた日本列島を世界の人々のために活かす時代へ!みんなで力を合わせてできることを!
親・兄弟・友人・知人に農林水産業に関わっている人がいたら、精いっぱい応援してください。生協や産直団体など、生産者との繋がりのあるコミュニティーに参加することもお勧めします。ご自身で家庭菜園や、一鉢、1プランターでも作物を育てましょう。
食生活の見直しも必要です。小麦を使った製品は、国産小麦に切り替えながら、主食は米を中心に。畜産・酪農は壊滅寸前です。肉や乳製品は高騰が避けられません。
国民全体に食料危機が襲うわけではありません。富裕層には影響も無く、貧困層、社会的弱者にまず、影響が深まるのです。それは“戦争”と同じです。
(2022年5月30日 記 三好 豊)
三好 豊(みよしゆたか)
1954年に生まれ父親の転勤により各地で育ちました。 1975年10月、杉並区阿佐ヶ谷南の劇団展望に入団。1982年退団して横浜に戻り演劇活動に参加してきました。1987年5月、(有)神奈川農畜産物供給センターに入職し、県内各地、各部門の生産者に指導を受けることができました。2004年に退職し「神奈川・緑の劇場」と称して県内生産者限定の野菜の移動販売を始めました。NPO法人よこはま里山研究所・NORAの支援はたいへんに大きく、これからも都市の暮らしに里山を活かす活動の一環として生産者との関わりを大切にしたいと考えています。また(株)ファボリとその仲間たちとの繋がりには、心躍るものが生まれています。