第61回 お花のない花見の風情
2022.3.1映像の持つ力
「越生梅林(※1)の梅まつりへ行かない」と、相棒クン。
埼玉県入間郡越生(おごせ)町にある「越生梅林」は、関東三大梅林の一つ。
梅を植えはじめた起源は南北朝時代。
園内には樹齢650年の古木が保存され、2ヘクタール(20,000㎡)の園内には1,000本もの梅が植えられています。
ということは、梅の花見をしながら1,000種類もの枝の流れが観察できるのです。
梅の木の剪定の参考になります。何とありがたいことか、いざ越生へ。
・・「あ、越生うちわ」と、車を止めた相棒クン。
「越生うちわ」(※2)は、江戸時代から続く伝統の団扇。
25年ほど前に購入した相棒クンの団扇は、ところどころが破れています。
そうだ、この機会に団扇を修理してもらおう!
今では1件のみとなった越生うちわを生産している「うちわ工房しまの」さんへもたずねることにしました。
梅は春告げ花。
2月に入り暖かい日差しの日が何日か続くと、咲き始めます。
今年は寒さの厳しい日が続きました。
寒さのためでしょう、川越にあるわたしたちの “小さな森のある畑” で育つ梅の木は、2月の2週目ごろに、かたい蕾がすこしずつ開きはじめました。
越生梅林は川越よりも山寄りの地域です。
梅まつりの初日2月11日の開花状況は、梅林を遠目にみたところ咲いている様子はなし。
地元の方は、梅が咲いていないから入場料はとれないねぇ、と言います。
さて、梅林に入ると・・。
なんと、どれも同じ梅の木はなく、枝ぶりや、幹の立ち上がり方、コケむす様子、生きている幹肌、枯れて空洞のある幹、剪定など人の手入れ跡。
200年以上になる梅の古木はうねり始めます。
どれも同じ梅の木はない、あたりまえのこと。
その1000本もの集まりに身をおくと、ながい時間をかけた命の動き、人の手が加わること、その風情に、ただ感心するばかり。
梅林が満開の時期でしたら、花のかれんさや賑わいに目をとられ、その元にある命のさまを感じられなかったかも知れません。
梅が咲いていなくても、この時期こその梅見を堪能しました。
手入れをしてきた地元のみなさんの尽力に頭がさがります。
グミの剪定
こんなに薪が出来ました。
春の畔ぬり
小さな森のある畑で田んぼの始まります。
“小さな森のある畑”の春告げ花
オオイヌノフグリでした!
地表にはよもぎが繁茂しはじめました。
地中では、スギナの胞子茎、ツクシが控えています。
モグラ塚
変わらずモグラは畑の土を耕してくれています。
モズが2匹やってきました。
この畑は餌場なの?。
梅が咲いた!
実生の梅の木。
あら、ミミズ。モズの早煮えです。
にぎやかな花見となりました。
「小さな森のある畑」を描き、相棒クンがはじめた自然農ふうの畑は、13年目に入りました。
植えた果樹は30本近くになります。
年々、生態系ができているのを感じます。
そんな、生態系に見合うように、体調をととのえることを含めて、足元に畑や田んぼがある暮らしのサイクルをつくってゆきたい。
人も生態系の一部。
(中川 美帆)
<参考>
※1 <越生梅林> 越生町役場の公式ホームページ
※2 <うちわ工房 しまの>公式ホームページ
https://ogose-uchiwa.sakura.ne.jp/index.html