第60回 今年も春が来た。季節の運行に狂いなし、これが自然の真意。

2022.2.1
映像の持つ力

春のおとずれ

あと一か月で梅が咲くよ。
新年を迎えた畑から、相棒くんが春のおとづれを教えてくれました。
春告げ花の梅。枝に付く蕾は、その時に向かい、ふくらんでいます。

そうね、確かに、もう春はきている。
まだまだ寒い1月の畑。小さな梅の蕾を見ると心もほころびます。
我が家の花見は、二月の梅見から幕開けです。

 

モズのはやにえは、オスの養育力も左右する

昨年にベランダから畑に移した梅の木は順調に根を張っています。
あれ、梅の枝に、何か引っかかっている。カメムシです。これは、モズのはやにえ(早贄)。
は、早い。じぶんのなわばりに入った新入りの木を、さっそく利用しています。

早春は鳥の繁殖期。オスがメスの気をひき、メスがつがいになる相手を選びます。
モズの場合は、早口で歌うオスがメスに好かれます。

昨年のコラムで紹介したように、こうしたモズのはやにえ行動は、冬の餌が少なくなる前に生き残ろうとする貯食行動、「個体の生存」の働きだけではなかったのです。

 

2019年大阪市立大学の研究から、モズのはやにえは、子孫繁栄の「繁殖」の働きに大事な行動であることが分かりました。(※1 大阪市立大学 2019新着情報より)

・オスがモズのはやにえを食べる時期はモズの繫殖が始まる直線の1月に最も多い。
 → モズのはやにえが、メスとつがいになるために肝心な声質を高めるエネルギー源として機能していることを示す。

・繁殖期間中(2~5月)の観察から、モズのはやにえを食べたグループは、食べないグループよりも、つがい成功率が高く、より早い時期にメスとつがいになっている。
→ モズのはやにえ行動は、
生殖時にメスに選ばれる目的達成の効果を高めることを明らかにした。

 

また、モズのメスは、早口で歌うことの出来るオスに、「養育」に相応しい、高い子育て能力があるオスなのか、つがいになる前に知ることが出来ているのだそうです。(※2 バードリサーチニュース「良い親仮説」の実証研究解説より)

 

先週、わたしたちの小さな森のある畑に、モズが姿を現しました。
それまでは、ずっと木の枝に残されたモズのはやにえのみ、やっぱりモズのはやにえだったと納得。
モズは忙し気です。果樹やティピの支柱へと、行ったり、来たり。

それにしても、このかわいらしいモズがのこした、もずのはやにえは、子孫繁栄のために必要な、生殖、繁殖、養育という各工程の質を高める作用に関わっていたなんて。

 

「撰米の儀」を行うわけ、お米には石ころが混ざっています

年が明けて、お正月を迎えたあとは「撰米の儀」を行います。
お米の選別です。今は機械化された「石抜き」「異物選別」作業を手で行います。

田んぼの会に納める年貢米から、石ころや殻、砕けたお米の破片など、異物を取り除く大事な作業です。
トレイにお米を広げ、目を皿のようにして1粒1粒を検査します。

 

お米の選別で、きっちり取り除きたいのが石ころ。
ご飯を食べている、ガリっと石ころを噛んでしまったら、さあ大変。
歯が欠けたなんてことになれば、泣くに泣けません。

 

相棒くんが自然農の田んぼをはじめて13年、わたしは5年目。
昨年は田んぼを2畝に増やしお米をつくりました。
6種類ともに、今までで一番の収量がとれ、会に納める年貢米は5.2キロ。収量の8%です。

二人がかりで2時間ほど、5.2キロ分を選別しました。
取り出しものがこちら。

 

稲魂さまに囲まれているのが、見つけ出した石ころです。
たった5キロのお米なのに、手で異物を選別する作業はなんとも大変なことか。

悲願の機械化、コメの歴史を変えた「石抜機」

今、買ったお米を食べる時に、石ころが入ってるかを気にすることはないですよね。
それを実現したのは、東洋ライス創業者の雜賀慶二さんが発明した「石抜機」のお陰です。

1961年に製品化されるまでは、お米に石ころが入っているのは当たり前
当時の技術では、コメより大きい石粒しか取り除くことはできなかったということですから、東洋ライスの発明は、どれだけの人を助けたことでしょう。

なんと、コメの歴史を変えた「石抜き機」の原理は、発明した雜賀慶二さんが小学生のころの記憶にあった、当時売られていた「鰹節の箱」から、選別の法則を導き製品化に結実させたのだそうです。(※3)

科学技術の原理は、自然のエネルギーの法則を活かした生活の中から生まれるものですね。

 

生態系と効率

自然界は誰が指示するわけではなくても、様々な生き物に設計された法則、自然の摂理のなかで生きています。

人も生態系の一部。
人に役立つ技術が、自然の法則を応用して発明されていることからも、これを示しています。

科学技術の発展がもたらした、便利な暮らしは、人がどんどん生態系から離れていく社会へと変えることにもなっています。

科学技術の発展が人が自然を活かす暮らしの助けになる、
お百姓しごとの科学者的知見が科学技術に応用される、
調和がとれたとき、。

少なくとも、健全な生態系の一助になる役割は、他から捕食されない、人が適任ですよね?。

食べることは生きること、人がじぶんで頂くお米や野菜を育てることは、健全な生態系の一助であるはず。

(中川美帆)

<参照サイト>

(※1)大阪市立大学ス公式サイト
モズの『はやにえ』の機能をついに解明!―はやにえを食べたモズの雄は、歌が上手になり雌にモテる―

(※2)バードリサーチニュース公式サイト
「良い親仮説」の実証研究解説

(※3)東洋ライス公式サイト
東洋ライス 「米を変えた60年の」歴史」

 

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