第58回 米と麦の二毛作

2021.12.1
映像の持つ力

11月に稲刈り

11月は待ちわびた稲刈りの時期。
田んぼに入り、ひと株ひと株、鎌で刈取り取り、束にして稲ワラで結わえます。
それにしても、一粒のお米から、よくこんなに増えるものだなぁ。
稲の収穫倍率は約140倍(小麦は約20倍)。うちのお米は何粒あるかしら。

稲刈の適期は、稲穂の籾や茎がどれだけ黄色く変化したか黄化率を見極めます。
順当に、早生(わせ)・中生(なかて)・晩生(おくて)種の順で、「あきさかり」「チベット黒米」「紅染め」「初霜」「朝日」「緑米」と、刈り取りました。
刈り取った稲は、逆さまにし稲架に掛けます。脱穀までの2週間、天日干しの乾燥です。

緑米

自然農の田んぼです。草刈りが大変では?と聞かれます。
なんと、昨年に続き、今年もほとんど草刈りの必要はなし。助かりました。
その理由は、日本の特化した気候と生態系を利用した農法にあったのです!!。

 

 

小さな森のある畑

11月に入ると週ごとに寒さが増しました。
小さな森のある畑では、薄桃紫色の島ラッキョウの花が、いっそう濃く咲いています。

あれ?枝にびっしり鈴なりの赤い実。クコの木です。
こんなにも花が咲いていたかしら・・。
実った実は去年よりも大きくぷりっとしています。

剪定や整枝をしていないから枝がこんもり密集しているのに豊作とは。
剪定を兼ねて実は枝ごと収穫し、クコの葉はお茶にします。
ありがとう、クコの木もお手入れ要らずの雑草化です。

 

 

スズメは玄米食?

自然農の田んぼ、一番に収穫したのは、早生品種の「あきさかり」。
脱粒しにくい品種のため、正月のしめ飾り用に育てています。
1列のみの作付け。少量ですから家のベランダに干し乾燥させることにしました。

「ちゅんちゅんちゅん」スズメです。ベランダから鳴き声がするっ!!
きゃぁ、乾燥中の「あきさかり」の地面を見ると、モミ殻が散乱しています。
やられたぁ。5日目にしてベランダに稲を干していることを、スズメに見つけられてしまいました。

先月は、落花生のカラス防御対策をしたばかり。
落花生につづき、稲の束も網で覆いました。
昼休みもうかうかしていられません。

自然農の田んぼの緑米。とうぜんスズメ除けの網を掛けています。
それでも、通路側にスズメのジャンプ台のような柵がある一帯の稲は、ほぼスズメに食べられています。
柵を利用し次々稲に向かいジャンプしては、稲穂に留まり籾をついばみます。

それにしても、スズメさんは上手に籾から殻だけを外しお米を食べるなぁ。

いったいスズメさんの口の動きはどのようになっているのでしょう。
まさか、東洋ライスのロウカット玄米のように、玄米のロウ層まではがせるのかしら?
ほぼ、玄米を食べているのかしら?

 

スズメに食べられても、緑米は豊作です。
緑米の稲は柔らかい。来年の正月飾りのしめ縄は今年の緑米で綯います。

 

除草剤を使わない自然農の田んぼで草刈りの必要なし、その理由

<日本の気候条件>

日本は温暖湿潤気候に位置します。
また、ハワイのように常夏でも、グワテマラのように常春でもなく、一年のなかで夏と冬の気温差が大きい。

そのため、自然農のように、深く地面を掘り起こさない農法を続けた圃場では、人為的に種が土壌表面に露出しないため、生態系が保持されます。
雑草は冬草、夏草のように入れ替わりが起こります。

<田植えの時期>

わたしたちの田んぼでは、
冬草と夏草の入れ替わる6月に田植えをします。
田んぼでは冬草が枯れているため冬草を倒す程度で田植えができます。
田植えのために稲の苗を植える一帯に生えた雑草の根切りや大掛かりな草刈りをする必要がありません。

<不耕起>
もう一つは不耕起。深く耕さないことで地中にある雑草の種が地表に露出しない。

<草は土に還します>
倒した草や刈った冬草が田んぼの地表を覆っているため、水生植物は生息できません。

それに加え、夏草が生える前に大きい草体を植え付け(田植え)、成長のスタートラインを早めることで、その後に夏草が生えたとしても稲の成長を追い越すことはできません。

以上の、生態系サイクルに沿った農法を行うことで、除草剤や大掛かりな草刈りをする必要がなく稲を育てられます。

自然農の会の世話人さんはここまで来るまで20年かかったと、感慨深い様子です。

 

(中川美帆)

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