釜飯仲間

第47回 釜飯仲間・おこげのお話

2012.9.29
神奈川・緑の劇場

『はまどま』のある横浜市南区蒔田界隈は、戦前から多くの人々が集まり暮らしてきた横浜の中心部で、一見するとアスファルトとコンクリートに固められた下町的市街地。だが、地域に親しんで歳月を重ねると、見えなかったものが見え、感じられなかったことを感じたりする。そのひとつは、街にゴミが落ちていないなあと気が付いた。

きっと、各家々やお店や事業所が毎日のように掃除をしているのだ。だから、掃除する人のいない一角、例えばコインパーキングの脇のようなところにゴミが吹き寄せられ、空き缶が放置されていたりはする。

また、緑区や金沢区など周辺区の一戸建てのように広い庭がある家はまれで、道路からすぐ玄関だったりするが、それでも、いつも通る道の、ささやかな鉢植えやプランターの様子が気になったり、楽しみになったりする。そして、人間以外の住人と顔見知りになったりもする。

ネコが好きか、イヌが好きか、猫派か、犬派か・・。猫が大好きなKちゃんは、突然、姿が見えなくなった、と思うと携帯電話のカメラで猫を追っかけている。たまにはポーズをとる粋な猫もいるのだろうが、見ているとたいていは迷惑顔に思えてくる。

私は、犬派のつもりでいたけれど、初対面の猫が膝に乗ってくつろいだことがあって、飼い主が『私には、そんなことはしないのに・・。』と驚いたものだから、まんざらでもなくて、猫に親近感を感じ始め、やがて、近ごろ猫語を”感じ”たりもする。そう、”わかる”なんてめっそうもない。例えば、道路の真ん中でくつろいでいる猫様がいる。この先は袋小路、入ってくる車は限られている、だからかどうか、猫様は、私の車が近づいても動じることもなく、運転席の私を睨みつける。そうして、かったるそうに身を起し、『俺にどけってか?ふん、しかたねえ』とでもいいたげに、道を開けてくださる。私は、ホントに声に出す。『すいません!失礼します!』

この猫様は別格としても、猫たちは私と目があうと、動きを止める。そして、一呼吸、目で物を言っているように思えてしまうのだ。

猫たちが自由奔放に暮らしているように見えるのに対して、われらがワンちゃんたちはリードに導かれて飼い主とお散歩する姿は対照的だ。

ダディ、バルサ、コタロウ、ショコラ、リュウノスケ・・。『はまどま』のご近所にも、だいぶ仲良しが増えてきた。機械仕掛けの人形のように小さくてクシャクシャっとして飛び跳ねるように歩く白ちゃんは朝6時と夕方6時がお散歩タイム。150人とも200人とも知れず人が集まる蒔田公園のラジオ体操。

チョコレート色がピカピカのタレ耳ちゃんは、ご主人が体操を終えるまで、リード無しでおとなしくしている。若くて元気のいいワンちゃんばかりではない。高齢化が著しいのは人間社会と一緒。ひたむきに必死で歩いているのは15歳前後か、彼らもすごいが、つきあうご主人も尊敬する。

この夏、『はまどま』前にゴーヤのグリーンカーテンを施した。当初、ゴーヤの実には興味がなかったのだが、実をつけると一層いとおしくなって、途中からは楽しみに変った。10個はゆうに越える収穫があった。ゴーヤのグリーンと引き立てあうように、黄色いマリーゴールドと、濃いオレンジのサンパチェンス。見事に花をつけ道行く人たちの目を楽しませたようで誇らしい。こうなると、秋から冬の仕込みをどうしようか、と考え始める。ゴーヤは気温が下がれば急速に衰えるだろう。次に何を?

お友だちになったHさんとTさん、ご高齢のお二人の元気が近ごろ心配だ。Kさんは、華やかな服を身にまとい早朝散歩を初め、いつにも増して明るくされているから安心だけれど。

そうだ、ラジオ体操の往き帰りやお散歩の途中、ちょっと休めるベンチがあったらどうだろう?『はまどま』は、地域の皆さんに気軽に立ち寄ってもらえる場所にしていきたい、と思いながらも、なかなか難しいけれど、ベンチがきっかけになるかもしれない。

猫や犬と仲良くなるのも大変だけど、やっぱり人と人が仲良くできることを考えたいよね。町のご近所も、国のご近所も。

2012年9月28日記   おもろ童子