第146回 釜飯仲間・おこげのお話

2021.2.27
神奈川・緑の劇場

「釜飯仲間」=おこげのお話=

国連「家族農業の10年 2019年~2028年」そして新型コロナウイルス災禍の中で
~みんなのしあわせは、おいしさの先に!~

内藤正雄さん。代々木上原まで野菜の販売にいってくれるという。友人の拠点があるらしい。

正雄さんは、アンティーク家具、古道具などの展示・販売を手掛け、それ以前から料理の修行を重ねてきた。割烹料理を土台にしつつも、沖縄料理を学び、今では創作料理、特に神奈川野菜をふんだんに活かした料理を提供してくれる。毎週火曜日のNORA野菜市で出会った方、すでに親しくなった方も少なくない。

妻のはるかさんと二人、大型自転車におおきな荷台を付けて野菜を運んでくれる。代々木上原までは自転車ではないが電車で野菜を運ぶという。昔々、始発の電車で体の三倍はありそうな野菜や漬物を都会に売りにきてくれた行商のおばちゃんたちを思い出す。

正雄さんは車の免許は持っていない。きっと思いがあるのだろう。私は、正雄さんより21歳年上だが、車の免許は欲しくないと20代までは思っていた。理由は、年間何万人も亡くなる交通戦争と排気ガスも大きな原因となった大気汚染、環境破棄。そういう時代だった。今のように、車々の生活になって年間4万キロ、5万キロも乗るようになるとは思いもしなかった。

正雄さんには、自身が経営する3つの拠点がある。

展示フリースペース「たけのま」では月1回第二土曜日の「縁側まるしぇ」にお客様が途切れなくなってきて、まだ初めての方も多いので、私もいつにも増して説明に力が入る。

関内・常盤町の「カモメのバー」石川町と山手の中間、山元町の「山の上」両飲食店は、新型コロナ感染予防の「自粛期間」で8時以降の営業ができないが、両店とも野菜の販売をしてくれて、近在のお客様も楽しみにしてくれているときく。

かつて、東京在住で横浜まで通勤されていた方が「三好さんが持ってくる野菜なら東京で倍の値段でも売れる!」と言ってくれたことがある。また、東京から藤沢に移住した方からも、同様のことを言われた。「ああ、実家の母に食べさせたい!」

私が野菜市をやっているのは、神奈川に暮らすものどうしの繋がりを大切にしたいからだ。そして、安全でおいしい作物を育むことができる自然豊かな神奈川を次の世代に手渡したい、そのための野菜市。申し訳けないが都民の胃袋に届ける余裕はない。

生産量も、大根やキャベツなど一部の野菜、わずかな時期を除いて、神奈川にはない。県内の一般店頭にさえ極一部しか並ばない作物が大半だ。それに、私も都内暮らしをしたことがあるが、東京には、全国、全世界から食べ物が集まってくる。それが東京。神奈川県内生産者限定など、どれほどの都民の関心をひくだろう?

だが、神奈川県民と都民が一緒に考えなければならないこともある。三点ほど指摘したい。

一つ、食料自給率。一つ、農薬・化学肥料の削減(美味しくて野菜本来の栄養のある作物づくり)。一つ、食品ロスの一環として出荷されず廃棄される農産物、などである。

次回には、これらの点について記してみたい。

(2021年2月26日記  三好 豊)

★★心と体・社会の健康を願う月刊情報誌「食べもの通信」の定期購読をおすすめします。

信頼できる情報を共有し、体験などを分かち合う読書会を開いています。
リモート参加も、遠方の方、小さなお子様のいる方にも参加いただけます。

mail:tabemono@trust.ocn.ne.jp

ホームページ:http://tabemonotuushin.co.jp

読者会は、第二月曜日夜7時から9時・参加費リモートとも500円です。

 

★★「たけのま チャンネル」→→★★★

(株)ファボリが運営する展示・イベントスペース「たけのま」から配信します。

第二土曜日午後5時から約30分、三好が「神奈川県産野菜を食べよう!」と題してお話します。神奈川の民話もご紹介しています。その後はユーチューブをご覧ください。

 

三好 豊(みよしゆたか)

1954年に生まれ父親の転勤により各地で育ちました。

1975年10月、杉並区阿佐ヶ谷南の劇団展望に入団。1982年退団して横浜に戻り演劇活動に参加してきました。1987年5月、(有)神奈川農畜産物供給センターに入職し、県内各地、各部門の生産者に指導を受けることができました。2004年に退職し「神奈川・緑の劇場」と称して県内生産者限定の野菜の移動販売を始めました。NPO法人よこはま里山研究所・NORAの支援はたいへんに大きく、これからも都市の暮らしに里山を活かす活動の一環として生産者との関わりを大切にしたいと考えています。