第47回 紅白のしめ縄とマンドラゴラ!

2020.12.30
映像の持つ力

稲の色

あれ?この稲藁、何だか桃色っぽい。
お米作りの締めは田んぼ納め。脱穀したあと田んぼに置いた稲束をほどき、田んぼの表面に敷いてゆきます。(茶こしでケーキに粉砂糖を振りかける感じかな)(稲藁は微生物に分解され田んぼの堆肥になります)

稲藁を何束か手に取る中で、なんだかふわっと桃色がかる稲束があることに気づきました。あれ?よーく見ると初めて蒔いた品種の「紅染め」です。田んぼ11年目の相棒クンも初めて見たとのこと。

この色、色見本で言うと、紅梅色(こうばい色)#f2a0a1。早春を知らせる梅の色かぁ。師走の頃に、新春の香り。なんともお目出度いお知らせです。

ふくらむ梅。あとひと月もすれば開花。

 

品種「紅染め」の名前は、籾を外した玄米の果皮・糠の部分の赤み、それと田んぼで太陽の光を受けると藁まで紅梅色に染まることから付いたのかも。

脱穀で籾がとれた赤米と黒米。果皮が赤褐色→紅染め、黒色→チベット黒米

 

それにしても天日干しの力を感じずにはいられません。
(うちのお米は、収穫の後に天日でじっくり乾燥させる「天日干し米」。太陽光で乾燥させたから桃色がかったのかしら?)

なんと、脱穀の後、田んぼに置かず、稲藁の観察用で家に持ち帰った「紅染め」の藁は、他の品種と同じで桃色ががっていない。うぐぐ・・、こうなったら「紅染め」の藁をベランダで再び天日干して観察続行だ。

 

今年は「あきさかり」「チベット黒米」「紅染めもち」「朝日」(コシヒカリやササニシキの先祖)、「初霜」(寿司米)の五品種を作付けしました。
それぞれ背丈の高さ藁の質で見分けがつきます。と言っても、元々似ている「朝日」と「初霜」の稲藁の見分けはできません。

チベット黒米、藁丈は低く、自由に伸びてる

 

紅白のしめ縄

思いも寄らず、紅梅色の稲藁ができましたので、比較用に室内保存した「紅染め」の稲藁からより青いものを選び二色の紅白輪飾りをつくってみました。
正確には葉色ですから紅緑の輪飾りですね。色見本で言うと紅梅色(こうばい色)#f2a0a1と翡翠色(ひすい色)#38b48 。

 

自宅用には、玄関と神棚、車用の正月飾りを用意しました。ありがたいことに素材は全て自家製。
結束材も市販の紐を使わずに藁で束ねています。

カボスを留める紐も藁で綯いました。紙垂は相棒クン作。

 

上が神棚、下が車用

 

正月飾りを自分で作り始め五年目。自分で育てた稲わらを使い三年目。
年神様を迎える玄関飾りは満を持して、輪飾りから、牛蒡・前垂れ型にチャレンジ。

稲穂の品種、中央は「紅染め」、左右は「あきさかり」

 

飾りは、代々栄える縁起物の橙ではなくカボス。
苗から育て十年がたちます。カボスと言いましても、橙の名の由来と同じく、うちのカボスはただいま二世代の実が同居しています。縁起物としてOKですよね?

 

柿など果物は熟すと実を落としますが、橙やカボス、金柑は、冬に熟した実が年を越して実をつける。
夏になると実は青く変化し秋から冬にかけ黄色く熟する。そして年をまたぎ、数年、実を付け続ける。
何世代もの果実がひとつの木に宿る。なんともにぎにぎしい眺め。先人が橙の命名に込めた思いがしのばれます。

カボスが豊作でした

 

(橙の縁起:実が年をまたぎ成り続け何世代の実が一つの木に同居している様子から、果実の強い生命力、何代にも渡り家が栄えること、末永い繁栄を連想させる縁起物となった)

 

 

クロロフィルとアントシアニン。タンニンも?

 

さて、紅梅色の稲藁の葉色の変化を考えます。いったい稲の中では何が起きているのだろう?先ずは光合成のおさらいから。

・葉の緑色は光合成で太陽エネルギーを受ける葉緑素のクロロフィルの色。葉の赤い色はアントシアニン。

・秋になり気温が下がり光合成の働きが弱くなる。光合成の働きが弱くなったところに太陽を浴びると光合成の装置自体が壊され、酵素が発生しクロロフィルの分解が進む。

・クロロフィルの分解が進むと、赤色の素のアントシアンが生成されるために必要なグルコース(糖)が溜まり、アントシアニンが次々と合成される=(グルコースの増加でアントシアニンの合成が)増える。

・脱穀を終えた稲の色はほとんど黄色。黄色の基はカロテノイド。春から夏にかけて光合成が盛んな頃は、クロロフィル8に対し1の割合だったカロテノイドが、クロロフィルが減ったことで表に出てくる=(クロロフィルが減ることで相対的にカロテノイドが)増える。

これから脱穀する「紅染め」

冬の畑で繁茂力が一番のからし菜

二番目に静かに元気なのが、喜界島のそら豆

 

・そうか! 脱穀は12月19日、確実に光合成の装置は壊されている、田んぼに置いたことで、クロロフィルの分解がさらに進み、赤色の素になるアントシアニンがつくられたから赤みを帯びたのですねぇ・・。

▷ 違う、早とちりでした。(+_+)。「紅染め」は赤米。赤米にはタンニンが多く含まれている。アントシアニンが増えた作用ではなさそうだ。

 

・葉色の変化の最後は茶褐色。葉が稲本体を成長させる役割を終える頃には、(葉の老化)カロテノイド、アントシアニンが分解される。ここからタンニンが登場。タンニンはカロテノイド、アントシアニンだけでなく、葉の老化の過程で分解された様々な物質と結合し増えることで葉が茶褐色になる。=(光合成の働きに必要だった物質が分解され、これらと結合しやすいタンニンが)増える

▷ 確かに! 田んぼに置いた紅染めの藁の色は、灰色がかる紅色。アントシアニンの増加より、アントシアニンが減りタンニンが増えた結果の変化なのでしょう。

 

紅葉する蛇イチゴ

多年草のイチゴは赤褐色の葉でもイキイキ!

 

はぁ・・・、葉色の変化を例にしただけでも、その植物の中では、なんとダイナミックな生物の仕組みがあるのだろうか。

農研機構(NARO)では、有色稲の色の仕組みの質問に、「米、穂、葉、茎等の色は必ずしも同じではなく、色が着く仕組みは複雑です。」と回答しています。(※1)

 

 

まるでマンドラゴラ!

日本一うまい牛蒡こと大浦太牛蒡。こぼれ種からこんなに育ちました。きちんとした畝に植えたらもう少し真っすぐだったのでしょう。また太い根をアスパラガスの近くで張るものですから、地中で切磋琢磨。マンドラゴラが誕生!

マンドラゴラ・ファミリー

 

昨年の食べそこないの芋を畑に植えた安納芋。こんなに育ち収穫できました。

収穫が遅くなったので、はい、ねずみに見つかり味見されてます。

 

牛蒡は筑前煮、たたき牛蒡、サツマイモは芋きんとんになる予定。

里、海、山のものが詰められた、お節料理は、人間らしさの確認作業かもしれませんね。

自然を活かして、こんなにいろーんな種類のものを食べることができるのは霊長類の人間だけ。

人間も自然の一部。
正月飾りやお節づくりは大変だけど、先人たちの思いに触れられる気がします。

 

小さな森のある畑、十二年目。

(中川美帆)

 

里山レシピ
蒔く→食べる→採種

収穫した完熟実を採種用に追熟

追熟がすすんでいます。

 

トマトの採種: 種に水を入れ発酵させているところ。発酵で種の周りに付いているゼリー状の部分を分解させ種だけを取りだします。

 

自然農法センター(※2)では自然農法で育てた種の購入ができます。 小さな森のある畑では、購入したブラジルミニで自家採種を続けています。粘土質の土壌に慣れてきました。

 

種採りに使わなかった追熟トマト
緑、黄、赤、色の変化がきれい。
①できる限り色の鮮やかさを残したい!
②形を崩さず、だけど、火を中まで通したい!!(冬だからお腹が温まるように熱を加えたい)
→  煮込まずに厚い鉄鍋で皮がはじけない程度にソテー。

 

塩トマトと追熟トマトのリゾー二

 

☆リンク紹介

※1:農研機構(NARO)による、有色稲の色の仕組みへの回答
http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/tarc/rice_faq/color/025207.html

 

※2:自然農法国際研究開発センター 自然農法の種子のページ
https://www.infrc.or.jp/seeds/

映像の持つ力