第137回 釜飯仲間・おこげのお話

2020.6.1
神奈川・緑の劇場

「釜飯仲間」=おこげのお話=

国連「家族農業の10年 2019年~2028年」そして新型コロナウイルス災禍の中で

5月30日土曜日の夕暮れ、緑溢れる谷戸では、田植えを済ませたばかりの小さな田んぼが数枚。そこにささやかな光。待っていた蛍が舞い始めた。コロナ災禍の日々に、まったく異次元の時が流れ、近く遠く、高く低く、愛おしい空間が生まれた。

幼いころ、自然破壊と汚染の最前線で、高度経済成長の担い手、電気技術者として働いた父に連れられて行った防波堤の釣り場。暖かい工場排水に寄ってくる魚たち。あるいは運河の汚泥の中からつまみ出すゴカイを餌にしたハゼ釣り。青春時代は登山をかじるなど“自然”をもとめたりもしたが、蛍の舞いを見たのは還暦ごろの横浜市内が初めて。以来、毎年のように蛍を見に出かけてしまう。いずれも神奈川県内だ。

かつて農業などいらないと言われた神奈川。今でもそう考える政治家はいるらしい。50年前、真っ黒な海水の東京湾では悪臭がたち廃油ボールが残された砂浜に打ち上げられた。今は埋め立てられてその浜も無い。が、人間が汚水を管理し海藻を育て、やがて自然は応えてくれて今の東京湾はある。元来、世界有数の水産資源の宝庫と言われた東京湾。

一方で、県土の1割にも満たない農地面積に減らされても「農業にとってここは最適の場所」と慈しむ生産者たちがいる。彼らは、自らの大地に適した作物を育み後世に伝えていく。神奈川で生まれ育った品種も少なくない。ところが、生産者から種を「自家増殖」する権利を奪い、営利目的の企業に種子、種苗を委ねようとする、と生産者が危惧する「種苗法改正案」が今国会に提出された。グローバル企業の種子の独占、市場経済優先の新自由主義と、持続可能な開発目標SDGsや小農主義に舵を切る食糧主権の流れ。食糧不足にさいなまれる人々が急増する世界で生産者による種子の「自家増殖」を規制することがあってはならないと訴える人々。

蛍が舞う里山を、さらにさらに取り戻すのも身近な里山とともに暮らす人々に違いないと思う。そして、都会でも、彼らと繋がった暮らし方が、「新しい生活様式」でありたい。

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(2020年5月31日 記 三好 豊)