第39回 ベランダ里山とフェノロジー
2020.5.1映像の持つ力
先月のコラムでお伝えした家の迎えの森で芽生えたキンラン。
四月も半ばに入ると先行して芽生えたものから花が咲き始めました。
キンランの群れ。奥から手前に向けて光の道が見えるでしょうか。
ここは森の東側。ちょうど朝日が差し込みます。キンランはうっそうとした森ではなく、適度に日のあたる場所に生息すると言われていますが、その通りで群生しています。
この伸び方は、絶滅の恐れがある野生生物種に指定(レッドデータリスト 絶滅危惧Ⅱ類)されているとは思えないほどの旺盛さを感じます。
こうして、植物は決まった季節に花を咲かせ、実を結び、葉を落とすという姿を変えますが、こうした生き物が季節の変化を捉えて変容する現象をフェノロジーと呼び多くの研究者が注目しているのだそうです。
自然現象と植物の関係は、里山をつくりだした昔の人や、お百姓さんの専門で分野ですね?
海・山・川、自然と共に生きる人は科学者そのものでは?。
ノーベル賞受賞者の大村智さんは「研究を支えた基礎は、幼少の頃の農業の手伝い」と受賞が決まった後のインタビューでおっしゃっていました。
農作業は、科学者のやることであると。「気候を気にする、温度を気にする、それから水分がどうであるか」。
それにしても、フェノロジーって概念の説明だからか、なんだか実態をとらえずらく感じてしまいます。生態の話しだから、多様な自然環境から生まれた言語で表現できないかしら。
そう考えると「里山」という言葉を作ることができる日本語は生態を表現することに長けた言語の一つかも知れないですね。
お向かいの森のキンラン、10日も過ぎると随分、花を開いてきました。
キンランにとって、この場所は、こんな風に、陽のあたるところと影、そして風通しのバランスが良いのでしょうね。
ベランダ里山のフェノロジー「タネツケバナ」
タネツケバナが花盛り。田畑で過ごす週末の川越のベランダの様子。草と仲良くするとプランターの表土にも里山の季節の移ろいが観られます!。
タネツケバナの名前の由来は、「静岡県 おいしい野草」※ によると、稲の種もみを水につけ、苗代に蒔くころ花盛りになるから付けられたのだそうです。
この季節感、その通りです!。先週にちょうど、田んぼで稲の種まき、苗代作業を終えたところですもの。
今の米作りは、3月頃からハウスで育苗するから、最近の人は「タネツケバナ」と言ってもぴんと来ないかも知れませんね。
ベランダ里山のフェノロジー「アブラムシ」
2月のコラムで紹介した越冬アブラムシ。羽がはえていないから越冬のアブラムシと予測はしてみましたが、さてどうなのか?
このあと、自然観察大学※の講演会があり、アブラムシ専門家の松本嘉幸先生に答えていただくことができました。写真をご覧になり、今年は暖かかいから越冬したのだろうということ。
せっかく目の前に先生がいらっしゃるので、もう一つ質問。そもそもアブラムシは何を頼りに2月早春、春を告げる梅の花が咲くことを知ったのか、「におい」だそうです。
さて、4月のベランダ梅の木。この陽気に誘われてか、いつのまにかアブラムシがびっしり。
ということは・・・。
そうです。こちらはヒラタアブの幼虫。アブラムシを食べて大きくなりました。そろそろ蛹になる頃かな。ヒラタアブの幼虫がいる回りはきれいですね。アブラムシが居ない!
相棒くんがヒラタアブのお母さんが飛来してきたのを観ていますが、子供が気になったのでかしら?。
自然界にはどれだけの生物がどのように関係して成り立っているのでしょう。知らないことがいっぱいですね。
自然観察大学の講演しかり、膝を付け合わせられる距離で専門家にお会いでき、知見を分けていただき、日頃の疑問が解決できる機会は本当にありがたい。三密を避けないといけない今だから身にしみるな。新型コロナが収束して、人と人が参会できるときが待たれます。
NORAで開催している、はまどまシアターで開催している里山の恵に出会う上映会は延期中ですが、またみなさまと再会できますように。
(中川美帆)
<リンク紹介>
※「静岡県 おいしい野草」流通は中古だけのようです。
(上野明(著者)、寺田洋子(著者)/静岡新聞社(発行所))
以下は、日本の古本屋サイトです。
https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=60921653
※自然観察大学のサイトはこちら
http://sizenkansatu.jp/