第134回 穂発芽
2019.10.31いしだのおじさんの田園都市生活
前回の陸稲の続編。
前回、原稿を書いた9月末までは、ほぼ順調だったが、今、苦戦している。
9月29日の稲刈りは、4人ほどで手刈り2時間弱。
前回、
「とりあえず、稲刈りが終わって、ホッとしている。」
「初めてのチャレンジは楽しかった、と、思う。仲間がいたので、、、」
と、書いていた。
書いてあった。
自分でも忘れている。
それは、俺が忘れっぽいのもあるが、厳しいことがいろいろあってのこと。
台風と長雨にたたられた。
10月12日の台風15号で掛け干しの足場が倒された。
翌日、集まれた仲間4人ほどで立て直し、1時間ほどだった。
しかし、その後の長雨と日照不足で脱穀のタイミングがつかめず、、、
(普通の天候だったら10日も干せば脱穀はできる)
10月27日には、青葉区の畑から、新治の我が社幸陽園農耕班の畑に移した。
ハーベスター(脱穀機)がそこにあるので、機械を運ぶより楽になるし、
場合によっては、我が社の脱穀と併せてできる。
その27日、「穂発芽」が確認された。
掛け干ししている稲が、雨で濡れて乾かないうちに蒸れて発芽しているのだ。
通常、種まき前に籾を発芽させるには水中に漬けておこなう。
それが、干そうとしている状態で起きてしまったのだ。
稲束の中にヒョロヒョロと白い芽と根が伸びている。
もちろん、米としては食べられない状態だ。
こういうことがあるのだと、知識としては知っていたが、見たのは初めてだった。
干していた稲の一部ではあったが、ショックだ。
それでも、気を取り直し、軽トラに積み込んだ。
ここでも軽トラが活躍してくれて、軽トラちゃん可愛かった。
今度、名前を付けようかな。
新治では今年度から導入したスチールの掛け干し足場が活躍。
竹の足場の10分の1くらい?の時間で足場が組める。
ちょうど道路から車を入れられるところの畑が空いていたのも幸いした。
30分弱で、軽トラから足場に掛け直す作業は終わった。
帰り道、軽トラの助手席の仲間が、つぶやいた。
「このお米は絶対に美味いですよね。3回も掛け干し作業をしたから」
「掛け干し作業って、何回やっても楽しいですよね。癒されます」
「新治って、気持ちのいい場所ですねぇ。日当たりもいいし」
そうかぁ、そういう考え方もあるかぁ、、、
たぶん、彼は本心からそう思ってしゃべっていたのだろうが、、、
俺にはない発想。
俺は、、、
稲刈りして掛け干ししてから1月以上も乾いていない米は苦いのではないか。
1回で済むはずの作業を3回もやるなんて、大損だ。
新治は確かに気持ちのいい場所ではあるが、基本的には谷戸。
我が社の畑の辺りは開けているが、周囲に森がある。
朝が遅く、夕方が早く、1日の中で直射日光が当たる時間は平場よりも短い。
俺にはない発想に苦笑してしまったが、少し気分が軽くなったのも事実だ。
仲間とはありがたい。
新治に移した稲は、晴天が3日も続けば脱穀できただろうが、また雨。
9月に刈った稲を11月に脱穀することになりそうだ。
我が社、幸陽園農耕班の稲刈りは10月の初めだった。
昨年の稲刈りのこともこのコラムに書いた。
昨年も稲の出来は良くなかったが、利用者さんの頑張りや子供たちの参加がみられた。
もう、田んぼ止めようかな、などと思いながらも、乗り越えられた。
しかし、今年は利用者さんに頑張ってもらおうにも時間も足りなく、、、
それは、天候のこともあるが、施設運営などの事情もあってのこと。
そのために、今年はバインダーという機械を借りてきて、ほとんどを俺が刈ってしまった。
掛け干し作業は利用者さんが頑張ったし、子どもたちも参加して笑顔を見せてくれた。
しかし、稲刈りとして本来の姿ではなかった。
(機械を借りることができて、それなりの技術もあって、稲刈り自体はできた。
しかし、俺がいなかったら、ここのところが成立しなくなる。
それは、組織としては大いに問題だ。
俺は組織人として俺が死んでも成り立つ事業を作っておかねばならないのだが、、、)
みんなで時間をかけてやることが楽しく、意義があるはずの稲刈り。
今年は、残念だった。
来年、どう巻き直そうかと、、、
横浜市の水田の面積は、1980年に1,156ha、2015年には155ha。
13%しか残っていない。
埋められて畑になったところも多い。
耕地面積全体を見ると、5,542haが2,845ha。
農業センサス(農林水産省)のデータを見ると、激減しているし、
俺には実感としてそれがある。
1980年、俺の卒業した高校の周囲は田んぼだったが、今は道路など。
1990年、子どもたちと取り組んでいた田んぼは、その後埋められて畑。
今の幸陽園農耕班の畑も以前は田んぼだった。
一方で、農林水産省統計部「米生産費調査」で米の生産にかかる直接労働の時間が分かる。
1980年は64.4時間(10a)が2006年には27.96時間と半分以下だ。
単純に言うと、機械や技術の進歩で、米作りの労働は大幅な時間短縮を達成している。
働き方改革?
かもしれない。
もちろん、これは全国的な話であり、そこから見ると横浜の稲作は規模が小さく特殊だ。
働き方改革が達成?されたのに、激減。
?
と、この話は、今回は時間と紙面の都合?で、またいずれ、、、
どうしようか?
この先の田んぼ、、、
陸稲、、、
石田周一
田園都市生活シェアハウス、
よろしくお願いいたします。