第116回 釜飯仲間・おこげのお話

2018.8.31
神奈川・緑の劇場

『釜飯仲間』=おこげのお話=
~神奈川の農業のこと、食べ物のこと。生産者に寄り添って31年~

おいしい野菜の力は素晴らしい、そして助けられると思いながら「はまどま」の企画を続けています。

8月28日(火曜日)「はまどま寄り合いライブ」は、シンガーソングライター・Chojiの出演です。(野菜市でもBGMで流しています。CDも販売しています。)18名の“お客様”に5名の“スタッフ”Choji(ちょーさん)とマネージャーで妻の、ひーさん、総勢25名の宴になりました。「はまどま」では、おおむね25名ぐらいが最大定員と思います。

毎年8月、ちょーさんとひーさんはツアーに出るのが恒例で、特に秋田・大曲の花火大会では、テーマソングを歌っているのがChoji。開催期間中、各所でのコンサート出演にも忙しい様子です。そして、大曲の帰路「はまどま」に、ただいまって寄ってくれるのです。

もともと、横浜育ちの二人ですが、各地をライブ活動で回りながら、土地に根ざした人々と語らう中で「日本中どこへ行っても、米作りを知らなければ土地の人と話にならない!大好きな日本酒も酒米だ!」と自ら米作りの仲間の輪にも加わり米作りを習得しました。ひーさんとの努力と、縁にも恵まれ、昨年から三重県津市美杉町に築150年の古民家と農地を譲り受け、新しい生活と音楽活動の拠点づくりが始まったのです。

(これから先、何度も訪ねたいと思います。)

「はまどま寄り合いライブ」は、温かく和やかな時間が過ぎていきました。「はまどま」は、ちょーさん、ひーさんにとってもホームグラウンド、たくさんの出会いと思い出を積み重ねてきた場所です。そこに、また一つ、お客様とスタッフと一緒に、おいしい野菜とお米が醸し出した素敵な夜が加わりました。

料理名人が「はまどま」に名を連ねる中で、今回は、私が献立を計画しました。私の場合は、野菜の素材そのまんまが多いです。スタッフを担ってくれる仲間が上手に修正してくれるので助かります。神奈川のお米「はるみ」のおにぎり三種類・トマトと大豆・玉ねぎ・豚バラブロックの煮込み/ジャガイモとニンジンの煮込み/とうがんとシイタケの煮込み。煮込みばっかりですね(笑)。山芋と赤玉ねぎと生きくらげ春雨の酢の物・デザートには、牛乳寒天にキウイフルーツ(この季節に貴重な国産・柏木圭介さん)・太秋柿(昨年産のドライフルーツ・細野真哉さん)にブルーベリーソース添え。

いろいろ美味しいのは何より素材の味です。特に今回注目を集めたのは、「はるみ」と三浦のこだわりかぼちゃ(長谷川浩一さん)・何しろ、一口サイズにカットしたかぼちゃを約15分蒸しただけで味付けせず。その美味しさに皆さん感動してくださいました。

カゴメが調査した全国都道府県別野菜利用状況では、神奈川は平均以下で下位のランクでした。同じ大都市圏の東京が上位で埼玉も続いていましたから、なぜ神奈川が下位だったのか不明ですが、全国的にみて野菜の利用は減っています。(年間の国内需要は960万トン)特に若年層が野菜離れしていると言うのです。野菜の利用を促進しようと1983年に制定したという8月31日「野菜の日」。私は昨年まで知りませんでした。語呂合わせで831=ヤサイ。

腕前いらず、料理名人を泣かせるおいしい野菜を作る生産者と、求める利用者をつなげたいものです。野菜の利用促進に必要なことは、一にも二にも「安心・安全・おいしい野菜づくり」。それ以外にはないと思います。価格は別の問題をはらんでいます。私の予想では、今後は超高騰を繰り返すと思います。そして、そのたびに消費者の野菜離れが進み、輸入農産物が増え、今度は、一時的に国内産野菜は暴落し生産者の離農を誘います。農業崩壊への悪循環です。それを押しとどめる農業政策は現政権には期待できません。(選挙公約ではすばらしいことを言うでしょうが)二年連続食糧自給率38%(カロリーベース・史上最低の37%に次ぐ低さ)が物語っています。1965年度は73%、1990年度は48%でした。急に下がったわけではありません。

9月30日(日)に、世界の家族農業に取材したドキュメンタリー映画「未来を耕す人々」を「はまどま」で上映します。国連では、2019年~2028年までを「家族農業の10 年」として小規模・家族農業の重要性を認識し支援しようとしています。世界の食糧の8割は、家族農業によって生産されているというのです。

ぜひご一緒に映画を観て、農業・食糧のことを話し合いたいと思います。ご参加下さい。

日本政府も含めて世界の指導者は、大資本の目先の利益のために、世界の人々が生きるために大切なもの、次の世代、末代までつなげなければならないものを失う危機に陥れているとしか思えません。工業製品と同様に農産物を扱おうとする貿易自由化は、各国に自国の食糧生産を守る権利があるとする「食糧主権」「食糧安保」の考え方とは真っ向から対立します。その最たる恐ろしい企てが、「自家採種の禁止」です。種子を資本の「知的所有権」とみなして生産者が「種子を取って蒔いて作物を作る」権利を奪い、種子は必ず資本から買わなければならず、そうなれば種子の価格は儲けの対象で大幅に高騰する恐れがある、というのです。

みんなで囲む食卓。誰が作ったかわかる農産物を使った料理。笑顔いっぱい、皆んなに喜んでいただけるように!状況が、どんどん厳しくなっていくからこそ、よけいにそう思います。「はまどま」での企画の多くは、神奈川の野菜を使った食事をセットにしています。

皆様のご参加を、心よりお待ちしています。

(2018年8月31日記  おもろ童子)