第115回 釜飯仲間・おこげのお話

2018.7.30
神奈川・緑の劇場

~神奈川の農業のこと、食べ物のこと。生産者に寄り添って31年~

再び、野菜の高騰が話題になってきました。冬の厳しい寒さが続き、農産物の価格が超高騰した記憶も残る中、春以降は、価格が落ち着いてきた(生産者からすれば低迷していた。)

と思ったのもつかの間、神奈川では6月のうちから梅雨明け宣言が出され、やがて観測記録を次々と更新する酷暑・炎暑・連日の命にかかわる猛暑となり、西日本を中心に、同時多発的な豪雨災害が襲いかかり、そして、台風の7月・12号の襲来です。なんと、12号台風は、関東沖から西に向かい、伊勢に上陸、そのまま西日本を縦断し九州を南下するという稀有なコースをたどりました。

“異常気象”という言葉で表すことは、すでに適当ではなく、どのようなかたちの災害が私たちに襲い掛かるのか、いつ起こっても、もう珍しくもなくなってきたように思います。

もちろん、農業への影響も甚大です。全国の、そして豪雨災害の地域での、農業への被害の実態把握に関係者は懸命な中で、さらに追い打ちをかける台風の襲来、そして、いつまでも続く高温の日々。

さて、現在、マスコミで話題になっている高値の野菜は?

大根・キャベツ・レタス・ほうれん草などの葉物野菜・・・。これらは、本来は冬野菜です。ごく一部の例外はあるものの、夏には「高原野菜」として冷涼な気候のもとで生産されています。高温になれば生育に影響が出るのもやむをえないと思われます。大根は青森・北海道産が店頭に並びます。

夏野菜の代表と思われるキュウリが高値になってきたようですが、例年よりも時期が早まっているものの、八月中旬すぎには品薄になり価格が高騰するのが普通です。

ハウス栽培ではない露地物のトマトは、この台風による雨で一気に水分を吸ってしまい、実が割れて販売できない物がほとんどになっています。

リンゴや梨、ぶどうなどこれから収穫期に入る果物への影響が心配です。一年一回のみの収穫です。やり直しはできません。

野菜をはじめとした農産物の価格高騰は、消費者にとって生活に直接影響する問題です。

高くない方が良い、けれども、国内の生産者や、生産者団体が気象現象の悪影響を最小限に抑えよう、安定して流通できるように産地間の連携を取るなど、最大限の努力をしよう、消費者に安心して利用してもらえるようにしよう、という努力を重ねていること、しかし、生産者の高齢化と担い手不足によって思うにまかせない現状があることなど、ほとんど報道されていないのではないでしょうか?

そして、野菜の高騰に拍車をかけているのが、飲食店チェーンなどの外食用、お弁当などの中食用、いわゆる実需者向けと言われる農産物です。提携農場などで不足する農産物を市場に求めるために、市場価格がさらに高騰する、というわけです。

そして、国内の不足を埋めるために、海外から大量に農産物が輸入されます。輸入農産物は、国内生産が回復しても止めることできません。欲しい時に欲しいだけよこせ、などということは通用しません。ですから、今年も春以降、輸入農産物の増加が止まらず、国内生産者の農産物価格が低迷した大きな理由とされています。

激しい気象現象の影響を受ける農産物。

高齢化と担い手不足による生産基盤の弱体化で対策も思うに任せない。

外食・中食産業による農産物手当が市場価格高騰に拍車。

不足を補う農産物輸入が、国内生産回復後も継続し、国内生産者の経営を圧迫。

さて、私たち(利用者)は、どうすれば、良いのか?

私の立場から言えば、31年ずっと同じことの繰り返しになりますが、

身近な「顔が見える(名前のわかる)」生産者の作物を、収穫できたものだけ利用する、に尽きるのです。たいへんに幸運なことに、私たちの神奈川では、「利用する人の立場」に想いを廻らせて農産物を生産する生産者が何人もいます。彼らは一人ではなく仲間を作り、学び合い努力し合ってきました。

そして、神奈川の気候風土は、一年中、多種多様な農産物の収穫を可能にしてくれます。

それでも、夏に大根やキャベツ・レタスは無いし(25年ぐらい前には作っていましたが)

ほうれん草や小松菜も難しい。日本列島の多様性に感謝して、スーパー等で購入していただくか、きっぱり諦めて、無いことをプラスに転じて地場の季節の作物で工夫していただきたいと思います。

8月中の「はまどま」イベントで、従来は「神奈川野菜」で献立を作ってきましたが、今年は、「よこはまの自然農法・有機農法(移行中も含む)」生産者の野菜」で料理を作ってみたいと考えています。何が出来るかは、全くの白紙です。当日に手にできたものだけで工夫したい。それでも、生産者の思いが詰まった作物の味が楽しみです。

(2018年7月29日記  おもろ童子)