第118回 3歳児の自給

2018.6.30
いしだのおじさんの田園都市生活

どう?横浜?
・そりゃあ、快適、だよ。ははは。
あ、そ!
・ごめん。(ヤバッ)
謝ってもダメ。高いよ。
・ははは。通勤時間が3分の1。
ま、それは、楽だよね。
・それにね。通勤経路の半分ほどで田んぼが見える。
えーっ!びっくり!田舎だね、横浜って?
・そんなにホメなくてもいいよ。
ホメていない、けど。
・稲が育っていく姿を日々見ることができる。
シアワセ?
・うん。とっても。
三鷹に背を向けて?
・いやいや。(逃げたい、、、)
いいけど。
・家を出て1㎞いかないうち、5分で田んぼがある。
スゴイかも。
・大学のころ、ね、家で電話していると相手が「どこにいるの?」って。
?家でしょ。ケータイも無い時代だから。
・もちろん。
何で?
・カエルの声が響いている。後ろで。
へぇ~。
・直線距離で1㎞のところに谷本川があって、周囲は田んぼ。
そういう環境で育ったんだ。
・うん。今は、田んぼも減って、家も増えて、交通量も増えて、まず、聞こえないけど。
耳を澄ませば?
・ねぇ、そんな、期待もしているよ。
田んぼねぇ。
・お世話になっているKさんや、同級生のSちゃんの田んぼもあるんだ。
ローカルだねぇ。
・その向こうに俺の母校が見えていて、俺のころは学校の周りも田んぼだった。
田舎田舎。歩いて通っていたんだよね。
・うん。そう。でも、今のようには田んぼを見ていなかった。
どういうこと?
・漠然と見ていた。って、いうか、ただの風景。
うん。
・ただね、タバコ吸いながら、川沿いを歩くのを「ホタル」って言っていた。
ホント、馬鹿だよね。
・ははは、ホメるなホメるな。
呆れます。
・田んぼを見ても、田植えだ、とか、稲刈りだ、なんて、思ったことなかった。
そりゃあ、そうでしょ。
・分かっていなかった。
フツーの高校生、だもんね。分かっているほうがオカシイでしょ。
・ま、ね。でも、今は、作業の進み具合から、稲の出来などまで、見ればある程度分かる。
それも、あまりフツーじゃないけど。見ていると、気になる?
・うん。自分のところと比べちゃったりする。
ははは。ライバル?
・やぁ、ライバルになれればいいけど、まだまだ、プロと素人の差。
そうなんだ。
・特にここ数年は大きく負け越している。
そうなんだぁ。へぇー。落ち込む?
・落ち込んでも、しょーがない。我が社の稲もそれなりに育っているよ。草も元気だけど。
困るね。草は。
・うん。でも、今年はそんなに気にならない。不思議と。

・まぁ、現状、現実を受け入れ、それに、チガウ意味が出てきた。

・みんなで楽しめばいいじゃん、みたいな。
理想を捨てて?
・いや、いや、、、それでも、今日は草取りというか、草退治をしたよ。

・丁寧に取っていられないから、踏んで歩くんだ。
へぇ~。
・で、年甲斐もなくエンジンかかちゃって、モリモリ歩きまわったよ。
それは、それは、ご苦労様でした。疲れたでしょ。
・疲れたけど、楽しかったよ。でも、まだまだ、草だらけで手強い。
じゃ、明日も?
・それが、ねぇ、明日は一日Pだよ。
Pって?
・駐車場だよ。出稼ぎだよ。
そりゃ、また、タイヘンだねぇ。
・ま、ね、でも、楽しいよ。
えっ、楽しんだ?へぇ~。
・みんなでさぁ、作業して、片付いてキレイになると、気分はいいよ。
ふぅん。そうなんだ。キレイねぇ。いい仕事、かもしれない。
・うん。そう思ってやれば、ね。
それに、稼げるんだったよね。
・そう、確実に、稼いでいるよ。2ヶ月で畑の売り上げの1年分を超えちゃう。
あらら。
・1年かけて収穫を迎えたタマネギ150㎏と半日で片付けたP1個が同じ売り上げ。
あらら。嬉しいような、、、
・悲しいような、、、
そのうち、「P専業で行け」なんて、指令が出るかもよ。
・あり得ないとも限らない。稼ぎのことは現実的。
でしょ。
・実際、世の中はそう動いてきた。
P?
・いや、いや、でも、Pって、プロレタリアート、だね?

・稼げるところに労働力が向かって、さ。
出稼ぎ?
・いや、昔の雪国からの出稼ぎの人がそのまま都会に住んじゃう。
故郷を捨てて。
・捨てたかったわけでもないだろうに、いや、ステルなんて、、、
イヤな言葉だね。(断捨離、好きだけど)
・集団就職とか、もね。いや、現代でも地方から都会へと人は流れているし。
うん。
・それに、横浜などでも農家が農業を手放して別の稼げる仕事をしている。
それが現実。シカタナイ。
・でも、その流れが変わってきている、部分もある。
横浜で農業が盛り上がっている。
・三鷹あたりでも。
渋谷や恵比寿でも。
・そして、地方に移住する人も増えている。
オモシロい。いろいろあって。
・うん。そして、俺の現実もオモシロい。
何が?
・週末に、子どもたちと田の草取りをする。
へぇ~。子どもに草取りができるの?
・そりゃあ、しっかりやるのは無理でしょ。大人だって、カンタンじゃないよ。
でしょ。
・でも、いいんだよ。半人前でも、それ以下でも、田んぼに入ればそれでいい。

・来てくれるだけで、ウレシイじゃん。
そうなんだ。石ちゃん、オモシロい、かも、やっぱり。
・終わったら、お父さんが来ていればいっしょにプシュッ、したいし。
やっぱ、そこか。
・いやいや、まんなかは子どもだよ。田んぼ、子ども、3歳児の草取り。
はいはい。
・そう。食べてほしい人に参加してもらう。田植えもやったし。
3歳児の自給?
・ははは、オモシロいこと言うね。それでいこう。3歳児の自給だ!

(田んぼに出かけていく週末の朝に投稿! 石田周一)

今朝、この原稿を仕上げて、投稿して、
(その前に5時から犬の散歩をして)
三鷹から横浜に向かい、
3歳児とその母たちと田の草取りをした。
とっても楽しかった。
子どもたちは、またまたヌードになって、
全身に泥を塗ったくって笑顔がはじけていた。
母たちも、泥の感触を楽しみ、
「あらー、水があったかい!」
などと、言いながら、草を取ってくれた。
ある、母、
「あんまりお手伝いになりませんでしたね」
(そりゃ、まぁ、初心者だし、暑い中頑張った方だよ)
「いやいや、みんなで田んぼに入ることが大事なんだよ」
「個々の仕事量は二の次」
と、返した。
「ああ、みんなで一つの草取りなんですね」
と、言ってくれた。
楽しい、充実した草取りだった!

これから、
今日も参加してくれたKさんと、
まつもと食堂の最後の夜に行く。
(20180630)

いしだのおじさんの田園都市生活