第104回 釜飯仲間・おこげのお話

2017.8.31
神奈川・緑の劇場

=神奈川の農業と食べ物のこと・生産者に寄り添って30年=

2017年の夏も盛りを過ぎて・・・。それでも、とてつもない蒸し暑さの横浜・神奈川でした。そして、都市の排水能力を超えた局地的な集中豪雨。河川のの氾濫と甚大な被害。亡くなった方も。

8月は連日の降雨、日照不足で野菜の生育が遅れたり、病害虫の発生が深刻になったり。ですから、お米の生育も心配でしたが、先ごろの作柄予測では、神奈川は良好とのこと。ほっとします。もっとも、神奈川では、大半の水田が10月の収穫ですから、まだまだ安心できません。

病害虫に強いお米、神奈川の気候風土に適したお米、収量が多く、美味しいお米。それは、各都道府県ごとに研究・開発されてきました。

日本列島は、狭い国土でありながら、気候風土はたいへんに変化に富み、山一つ、川一つ、谷一つ隔てれば、気候風土が異なり、各地に名産・特産の農産物が伝えられてきました。地域に適した農産物は、豊かな食文化も育んできました。

都市化が極端に進行した神奈川であっても例外ではありません。その神奈川で生まれた米「はるみ」が、全国トップレベルの食味評価を得たのは昨年のこと。一気に、県内産のお米への関心も高まりました。かつて「神奈川の米なんか食えるのか?」などと流通業界の幹部に毒づかれ悔しい思いをした一人として、やっとたどり着いた道。そして、長い歳月をかけて開発に携わった人々への苦労を思い感謝にたえません。

激変する気候に対応する作物の育成、種子の確保は、食文化の豊かさ、美味しさの追求ももちろんですが、世界人口が90億人を超え、食糧不足がいっそう深刻になることが予想されるこれからの世代に、私たちの世代が残していかなければならず、目先の利益で判断してはならないと思います。

だからこそ、特に日本の食を支えてきた米・麦・大豆について「主要作物」と定め、優良な種子の生産・普及を「国が果たすべき役割」としてきました。それが、「主要農産物種子法」(種子法)です。

しかし、国は、この法律が「民間企業の参入を阻害している。」として、種子法の廃止を閣議決定しました。そして、廃止法を国会で可決、成立させてしまったのです。2018年3月末日に種子法は廃止されてしまいます。

なによりも、このような法律によって、現在の豊かな米食文化が育てられてきたことを、私も含めほとんどの国民は知らなかったと思われます。そして、廃止を提案する趣旨などの説明も国民にはされないまま、農業関係者へさえも十分な説明もされていないまま成立してしまったのです。

来月の、このコラムでも、「種子法」の意義と廃止による課題、私たちが知っておきたいこと、声をあげていきたいことについて書いてみたいと思います。

(2017年8月31日記  おもろ童子)