第106回 水、田園都市生活

2017.6.29
いしだのおじさんの田園都市生活

雨でジメジメ、イヤだなぁ。

・はいはい。でも、ピーカンに晴れるのもキライなんでしょ。

ま、ね。あー、雨はイヤだ。やめてほしい。

・何を言ってるんだよ。雨が降らないと困るだろ。畑も。人生も。人類も。

それは、分かっているけど、、、ジメジメはやっぱりイヤでしょ。

・そうだね。まったく、ね。、、、家の中にお犬様が来たからね。

イヤーな言い方。(怒)

・ははは。(ヤベ、、、)

降っていても、散歩に出なくちゃいけないし、、、(でも、カワイイ)

・ゴクロウサマ。(無責任)

行ってよ。たまには。(怒)

・しかし、今回の雨不足には困ったよ。ほとほと、、、(話題、チェンジ)

田んぼの話?(まだ、怒)

・今年は、ホント、苦労しました。(必死にチェンジ)

しました、って、終わったみたいな言い方。

・いや、やっと植わっただけだけどね。これからが本番だけど、ね。

ソーでしょ。

・しかも、今はそこそこ降っていて順調に草も伸びてきている。

息ついている場合じゃないでしょ。

・でも、「植えられないかも」まで追い詰められたからね。「苦労した」んだよ。

それはそれは、、、横浜の田んぼのみなさんがみんな苦労したわけ?

・いや、そうじゃない。

じゃあ、お天気ばかりじゃなくて、石ちゃん達の実力の問題でしょ。

・まぁ、そうだけど。我が社の田んぼの条件が悪い。

・水が来ないんだよ。降らないと、、、

他は?降らないと、横浜中、みんな、水が来なくて商売あがったり?

・いやぁ、、、そーいうわけでもない。

どーしてるの?

・ポンプがあったり、川の水を引いていたり、ある程度自由に調整が利くんだよ。

そうなんだぁ、、、

・我々のような天水だけが頼みの田んぼはごくごく少数だよ。

へぇ。

・と、いうか、天水頼みの場所から田んぼが埋められていったんだろうね。

うん。水が来なくなって、できなくなった?

・いや、今回、改めて、そのことを身をもって意識したよ。

なるほど。

・我が社の田んぼの周囲は、もともと田んぼだったところがほとんど畑になっている。

水に苦労して、畑に切り替えた。

・そう、そうなんだよ。ただ、水がちゃんと来るところでも田んぼは埋められている。

・田んぼは、機械がそろっていないとできないし、儲からないから、って思っていた。

よく、言ってるよね。

・数百万円の機械を揃えて米を作っても、コメの値段が安すぎる。

うん。

・だから、大規模に機械が本当に効率よく活躍できないと赤字。

横浜みたいな小規模じゃ、赤字。

・そう、横浜では多分2~3反(1反は1,000㎡)が平均で、1町(10反)以上は稀。

産地の専業の農家さんは?

・最低でも10町くらいだろうね。横浜の100倍。

横浜の田んぼは厳しいんだね。

・いや、産地でも厳しいんだよ。米は安すぎる。

うん。

・中山間地も厳しい。横浜では、田んぼを埋めて畑にすればまぁなんとかなる。

経営できる。

・と、いうか、少ない機械でいろいろ作れる。野菜なら、、、

だから、田んぼは埋められてしまう。

・と、思っていたんだよ。だけど、水の問題も大きいこと改めて知ったんだよ。

でも、昔の人はどうしていたの?

・?

水が来ないところは、昔も来なかったんじゃないの。

・いいところに気が付いたねぇ。

・だけどね、我が社の田んぼにも、昔は水が豊富に来ていたらしいよ。

へぇ?

・だって、今畑になっているところも田んぼだったんだよ。今の4倍。

昔はもっと雨が降った?

・いや、雨の降る量はそう変わらないんだろうけど、流れてくる量がチガウ?

・我が社の田んぼは上流に森があるじゃん。

うん。市民の森、じゃん。

・そう、でも、尾根まで行ったらその向こうは住宅地、なんだよ。

高級?

・そういう問題じゃない。でも、一時期元ジャイアンツの江川が住んでいた。

えーっ?そうなんだ。スゴイねぇ。

・イヤイヤ、そういう問題じゃない。

何の問題だったっけ?

・水の問題でしょ。田んぼの、、、(ちょっと怒、けどアキラメ)

ははは。(特に何も感じていない)

・うちの田んぼの地主さんのおばあちゃんがいるんだけど、、、

うん。

・「〇が丘ができて水が来なくなった」って言うんだよ。

できて、って?どういうこと?

・もともとは尾根向こうの山で、開発されてから町名が「〇が丘」になったからね。

ふうん。よくワカラナイ。

・おばあちゃんが若かったころ、森の向こうも森だったんだよ。森と森で山だよ。

いつの話?

・1970年代はそうだった。俺が田園都市生活を始めたのは60年代だけど、ね。

そのころから開発が進んだんだよね。

・で、森が町になったら水が来なくなったって言うんだよ。

水の流れが変わった?

・そういうことだろうねぇ。詳しくは島村さんに聞いてみたいけど、、、

「水の流れは絶えずして」の島村さん。

、、、(分かっていない、全く。ゴメンなさい。島村さん)

・田んぼは開発されずに残ったんだけど、山の向こうが開発されて水が来なくなった。

で、石ちゃんも苦労している。

・ま、ね。青葉区も、俺が子どものころはあちこちに水が湧いていた。

へぇ。

・水のあるところが大好きだった。

・カエルとかいろいろいる、というか、「いそうだな」って思うだけでワクワクした。

まぁ、子どもらしいというか、、、

・今でも、そう思うけど、ね。田んぼにいると、、、

それは、オッサンだから、キモい。

・でも、水があるからワクワクするのが田園都市生活だよ。俺にしてみれば、、、

田園都市生活、ねぇ、、、

(つづく)

(石田周一)