第3回 春が来た。田の神へ託した願い。

2017.4.1
映像の持つ力

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春はもうすぐそこですね。ここ数日は冬を思わせる寒さですが、今年も桜の芽がふくらんでくれています。ふと見つけては、目尻がさがります。嬉しい季節ですね。

生垣の木も気づくと若芽がたくさん出ていました。ちょっと酸っぱいご飯のチラシ寿司とワカメのすまし汁にワクワクするわたし。(これは、ただの食いしん坊)

今月のはまどまシアターは「春まつり・田おこし行事・農耕行事」の特集です。映像を見ると、土と共に生きた先人たちの思いが偲ばれます。また、こうした年中行事を通して、子供たちに農作業を伝えることも出来るわけで、どの映像を観ても、地域で連綿と続けられた集落の暮らしは、理にかなっているなと関心しかりです。

 

4月23日、はまどまシアター開催

4月23日(日)。はまどまシアターの上映作品は「大隈・薩摩の春まつり」と「佐渡の車田植え」の2作品です。三好さんの手作り神奈川野菜のお食事と共に、みなさまのお越しをお待ちしています!!詳細・お申し込みはこちらをご覧ください。

はまどまシアター 民俗映像を観る会は今月より毎月・第4日曜日に開催します。
(はまどまシアター2017年 。上映会の詳細はこちらをご覧ください。)

春、山から神を迎え豊作を祈念する

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これは、23日、はまどまシアターで上映する「大隈・薩摩の春まつり」から。映像で取り上げている春まつりは、農耕機を控えた春に行われる「打植祭り」です。

「打植祭り」は五穀豊穣を祈念する行事。農作業の工程を模した演目が行われます。田遊びや、御田植祭と言うとイメージつくでしょうか?。

「大隈・薩摩の春まつり」は、田植えの前に行いますから予祝行事になりますね。映画で取り上げた「打植祭り」は、ご神木を山から迎えるとこらから始まります。

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わっしょいの掛け声と共に、男衆がご神木を担ぎ、山から集落に迎えるところ。まるで東京下町の神輿担ぎみたいです。南国九州の熱気でしょうか。今年も変わらない豊作を願う強さの表れでしょうか。

 

日々のなぐさめと苦楽を共にした牛への感謝

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これらは、「打植祭り」の一つの演目。人が引いているのは、どれも牛です。

かつて、田おこしや代かきを牛の力を借りて行っていた時の様子を模しています。
なんとも牛のデザインが斬新ではないですか?

あ、耕運機がない、当時の様子を知らないと??でしょうか。
そんなときはグーグルに聞いてみてください。「田おこし 牛」と入れると、かつて牛を使い田おこしをしていた様子を見ることが出来ます。

今のように機械を使わず肥料も自分たちでつくっていた。
決して楽でなかったであろう農作業。自然と共に生きるということ。
こうして、牛を囲み楽しむ人々をみて、きっと田の神も一緒に喜んでいるのではないでしょうか。

 

子どもの成長と春まつり

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この集落の「打植祭」は、五歳を迎える男の子が演目のいくつかを担います。がんばってきなさいと、付添人の青年に連れられ家から送り出されます。「打植祭」を通して、子供たちに農作業を伝えることもできる。

こどもたちは、年齢に応じて集落の習わしにそった通過儀礼を行います。年中行事でも、こどもから青年へ成長に合わせた役割を担い一人前になってゆきます。ほんとうに集落の暮らしは理にかなっているなと関心しかりです。

注目したいのは、「打植祭」で模される農耕の工程は、昔ながらの方法。機械がなくても、お金で肥料を買わなくても、じぶんたちの身近になるものを利用した方法が伝えれていること。自然を利用した技術は、時代や価値観が変わっても、変わることなくその時代に開発される技術に転用されていくのではないでしょうか。

郷土映像ラボラトリー。4月の上映テーマは「土と共に生きる」。
はまどまシアターでの2作品の他に「奄美の泥染め」(大島紬がつくられる記録)を上映します。土を耕す、田の泥で布を染める。土・人・田・農耕儀礼や緻密な手仕事の映像から、今を生きる私たちの足もとのこと考えてみませんか。

「奄美の泥染め」4/4、4/8、4/15に上映します。ご興味ある方は郷土映像ラボラトリーFBをご覧ください。


《 上映作品クレジット 》
「佐渡の車田植」(1981年作品・32分・両津市教育委員会企画,民族文化映像研究所製作)
「大隅・薩摩の春まつり」(1981年作品・43分・鹿児島県教育委員会企画,民族文化映像研究所製作)
*上記、映画の写真:(C)民族文化映像研究所

映像の持つ力