第96回 釜飯仲間・おこげのお話

2016.12.2
神奈川・緑の劇場

2016年は、農産物の高騰が続く中で暮れようとしています。

NORA野菜市でも、秋冬野菜が豊富に収穫されるこの時期に、かつて経験のないほどの高値で皆様に利用していただかなくてはならなくなりました。全国的には、主食のお米は豊作傾向だったためでしょうか、食糧不足の危機感は薄く、市民は、野菜の量を我慢してしのいでいるようにも見えますが、皆様はいかがですか?私には、いよいよ本格的な食糧危機時代の始まりがきたと、思えるのですが。

ついに異常気象とも言われなくなった気候変動に加え、そもそも生産力の土台が弱くなり、近年は高騰の頻度が高まっていました。これからは、団塊世代が生産現場に立てなくなる日も近づいています。一気に担い手が減少します。

国の農業政策は「意欲ある若手農業者に農地を集約」とか、「農事組合などの法人化で合理的、効率的な生産体制を」などといいます。攻めの農業で、農産物の輸出を奨励しています。しかし、生産力の弱体化を押しとどめることにはつながらず、ここでも、格差が広がる一方です。圧倒的多数の生産者と、一般市民の暮らしは豊かにはなりません。

中山間地の耕作不利な農地から耕作放棄が続き、鳥獣被害も深刻になる一方です。神奈川でも猪が筍を掘り返して食べ尽くし、黄色く実った蜜柑も食い荒らされています。

神奈川のような、大都市農業、大都市近郊農業も、経営面積が狭く、生産効率が低いとして国の農業政策から見放されてきました。ここにきてようやく、その大切さがみとめられつつあるようですが。

身近に生産できるものを身近な地域で利用する「地産地消」は、高度経済成長時代から、バブル時代を経て、少子高齢化時代がいよいよ目前となった時代に、地域の経済的な自立を目指そうとする中で起こってきました。顧みられることの少なかった身近な資源、それは、祖先から受け継いできた農林水産業とその加工品でした。

一方で、神奈川では「農のあるまちづくり」が望まれるようになりました。

神奈川県の面積の3割が森林、1割足らずが農地です。世界有数の水産資源を育む海、東京湾と相模湾にも面しています。

そこに暮らす日本人の1割近くの私たちがどのような暮らし方を選ぶのか。

「里山の恵み」を暮らしに活かそうというNORAの提案とも重なります。

(2016年12月1日記  おもろ童子)