第64回  玉ねぎが大きく育ち豊作です! 肥料は無くても良く育つもんだ・・

2022.6.1
映像の持つ力

豊作を支えるもの

肥料食いと言われる玉ねぎ。
うちの“小さな森のある畑”では、昨年11月に植えた151株の玉ねぎが収穫を迎えました。
今年は玉ねぎが大きく育ち豊作なのです!!

それにしても肥料は入れて無いのに、良く育つものです。

昨年と違うことは、藁を敷いたことです。
よく見ると、敷いた藁がずいぶん減っています。
ミミズが藁をエサにしたようです。その証拠に、ミミズを捕食するモグラ塚が増えています。

畑の中を観察すると、
モグラの通り道は土がふかふかで掘りやすい。

掘り上げた玉ねぎの根の周りには細いミミズが付いてきます。
このミミズが藁を食べて分解し、その糞は栄養いっぱいの肥えた土「みみずふん土」となります。

みみずふん土は団粒構造。
粒と粒の間に小さな隙間ができるため、粘土質で粘りのある土が、ぽろぽろした土に変わります。
土壌の水はけ・通気性が改善され、植物の根が張りやすくなります。

わたしたちも誠にありがたい。
粘土質の土壌は、土の養分を保つ力や水持ちが高い反面、粘りがあるため掘るのに一苦労ですから、
モグラやミミズに、ふかふか、ぽろぽろの土に土壌改善していただき、ありがたいばかりなのです。

 

それにしても生態系の力にはいつも驚かされます。

うちの小さな森のある畑は、粘土質の土壌にくわえ、肥料なし、耕さない畑です。
それなのに、各産地で不作の玉ねぎは、前年よりも実は大きく育ち豊作となりました。

私たちの代わりに、モグラやミミズや雑草が、せっせと土を起こしてくれたお陰です。

 

通年の安定供給に利用した性質

玉ねぎは昨年から値段が高騰中ですね。
原因は、肥大期におきた異常気象。
(その1)去年6-7月にかけて、主力産地の北海道に起きた記録的な干ばつによる不作。
(その2)生産量第2位の佐賀では、今年1-2月の雨不足が影響した生育の遅れによる供給不足。

玉ねぎは、一年を通して安定したお値段で購入できるお野菜でした。
理由は、
1、貯蔵性が高く
2、早生(わせ)・中生(なかて)・晩生(おくて)といった、収穫時期の違う品種を栽培している
3、生産地により収穫時期がズレでいるから。

とは言え、長年に渡る品種改良や工夫された生産の仕組みをもってしても、いまの異常気象は手に負えないのですね。

<参考リンク>
日本農業新聞 2021年8月4日の記事
渇く北海道 「災害級」干ばつ 深刻な農作物被害

 

家庭菜園のうまみ

豊作の玉ねぎ。肝心な味はどうかしら。
抽苔(とう立ち)し、花茎が出た伸びたもの、そうでないものと食べ比べ。

とう立ちでネギ坊主が出てしまった玉ねぎは固くで食用にできないと言われます。

南部鉄パンで無水蒸し。・・・どちらも、とろっとあまみが濃く、おいしーい♡。
蒸すことで玉ねぎの甘みがぎゅっと濃縮されました。味付けしなくても大丈夫。
とう立ち玉ねぎは、筋ばる食感が残る程度で、あまみは引けをとりません。

玉ねぎの皮は良いお出しが取れます。我が家の野菜スープに欠かせません。
皮の色素に含まれるケルセチン(抗酸化作用のあるポリフェノールの一種)はアンチエイジングの点でも注目されています。

栄養価が高い野菜の皮は残留農薬が気になりますね。
その点、じぶんで育てたものは安心です。
食べ物を自ら育てることは、身体を動かす労働以上の価値があります。

 

食べものは薬にもなる。
ほんと、食べ物が育つ土壌があるってありがたいなぁ。
美味しく食べられるからだがあることも感謝です。

 

種下ろし真っ盛り

5月に入ると、お米の苗代づくりに始まり、夏野菜の種下ろしで大忙しです。
ベランダは所狭しと育苗場へ。

うれしいことに果樹も昨年以上の大豊作となりました。
イチゴを皮切りに、グミはたわわに実り、収穫が追いつかないほど。
種下ろしの最中に、果物の収穫→下処理→保存加工 の繰り返しです。

肥料はなくても、年々実りよく育つことに関心しきりです。
相棒くんが庭園デザインした、グミとサルナシとの組み合わせも功を奏したかしら?
露地栽培・無農薬のイチゴ。考えてみたら、ぜいたくなことです。

 

5月も下旬になると、ベランダで育苗した種が育ってきます。
カボチャ、落花生を順次、畑に植え付けます。

いちばん、ゆっくり成長しているのはナス。
ピーマンと同じで、芽吹きはゆっくり、茎もひょろっとしています。
先週の突然豪雨の雨粒があたり、茎がぽきっと折れてしまったほどです。

 

一番美味しいところを食べるのは、わたしたちではなく、畑を棲み処にしている生き物たち。
いいのでーす。健全な生態系あってこその収穫ですから。

 

体さえ動けば食べものに困らない、身体を動かすことって何かしら?

「ここでは、体さえ動けば食べものに困らないよ」奄美大島で聞いた言葉です。
確かに言い得ています。

大潮のとき浜に下りるだけで漁にでなくても磯場で貝やタコが採れたり、シーズンになればどこかの海岸で天然モズクが採れます。
奄美は亜熱帯性気候の繁茂力をもち、三方を山に囲まれ集落の前には海が広がる生物多様性の島です。

豊かな自然環境にくわえ、奄美はおすそ分けが常ですから、体が動かなくても大丈夫でしょう。

 

「労働の基本は、ヒトが体を動かすことです。
すると人の全身全霊が外部の自然と交流し、意識した対象に対して働きかけます。
これがヒトの労働です。労働の対象は、知り尽くせない深い自然です」(抜粋)

「目的をもって身体を動かすことによってヒトの肉体的・精神的能力は発展し、さらに文化が生まれます。
逆に、労働を回避すると、ヒトの肉体的・精神的能力、そして文化的能力は後退します。」(抜粋)

この論考は、
『石油文明はなぜ終わるか ― 低エネルギー社会への構造転換(田村 八洲夫:著/石井 吉徳:監修)』
第8章 自然と共生する低エネルギー文明へ/「身体を動かすことの値打ち」の項で、述べられたものです。

身体を動かし自然に手を加えるノラ作業や、里山のある生活文化をうみだした人の本質について掘り下げられているようで納得です。

<参考リンク>
『石油文明はなぜ終わるか ― 低エネルギー社会への構造転換』
(田村 八洲夫:著/ 石井 吉徳:監修 /東洋出版 2014年発行)
NPO法人もったいない学会 書籍紹介サイト

 

“低エネルギー社会への構造転換”は、さしせまった世界共通の課題です。

数百年前に、3000万人が暮らす完全有機社会を実現した江戸時代を経験している日本。
足元には、持続可能な有機社会の象徴・里山のある生活文化をうみだした土壌があります。
品種改良を経て継がれた固定の種も持っています。

人は生態系の一部。
プランターや田畑を手入れし土に勤しむことから得た経験値は、低エネルギー社会への構造転換の備えとなりますね?。

(中川美帆)

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