第六話 谷戸の生い立ち
2014.3.1水の流れは絶えずして
谷戸の底がなぜ平坦のか疑問の思ったことはありませんか。コラムの第二話、第三話で台地の生い立ちについて話をしましました。今回は谷戸の生い立ちについての話をしたいと思います。
丘陵・台地に降った雨が地下にしみこみ、関東ローム層に蓄えられた後、ゆっくり移動していることを前回お話ししましたが、この地下水が再び地上に現れるのが湧水です。谷戸の一番奥には、必ずと言っていいほど湧水が湧いています。
この谷戸の原型は、この湧水が崖から湧き出ることで台地が徐々に浸食され、谷が形成されました。ここで原型といったのは、台地が湧水によって浸食されただけでは、谷戸の特長である、谷底の平坦面は形成されず、谷戸地形にはならないからです。では、どのようにして今の谷戸地形ができたかというと、台地の生い立ちと同様に海水準変動が関係しています。
今から約2万年前は最後氷期と呼ばれ、海水が氷河などに閉じ込められたことで、正確な高さはまだ解明されていませんが、海水面の高さが今より120m~135m低かったといわれています。
このため、東京湾は古東京川と呼ばれる河川となり、谷戸もV字型の谷地形をしていました。神奈川県と千葉県は古東京川の対岸にあったのですね。
その後、地球が暖かくなってきたことによって海水面は上昇し、約7千年前の縄文時代には、海水面が現在より3m~4m高く、海が内陸部に海が進入しました。この海の進入は縄文海進と呼ばれ、内陸部に分布する縄文貝塚はその証拠とされています。ちなみに鶴見川流域では、貝塚の分布から小机あたりまで海が進入したと考えられています。
さて、谷戸地形ですが、約2万年前から約7千年前まで海水面が上昇するのに伴って、谷は土砂が堆積し谷の底に平らな面が形成されました。その後、海が現在の高さとなったため、河川(水路)が形成され、谷戸地形が完成しました。
図 谷戸が形成された過程のイメージ