第九話 水質のはなし
2014.6.1水の流れは絶えずして
いままで、水のながれについてお話をしてきましたが、今回から水質について考えてみたいと思います。
河川や地下水の調査をしていると、「この水飲めますか?」とか「何か汚染されているのですか?」なんてことを聞かれることがよくあります。こんな時、相手の顔をみながらどう答えたらいいのか迷ってしまうことがよくあります。
水質調査では、結果が数値で出てくるので、成果がわかりやすく何となく満足感があるのですが、出てきた数値をどう解釈するかで、時に関係者や住民が意図しなかった方向進んでしまうこともあります。
調査結果は、大切な環境情報となりますので環境行政や調査研究の経験からお話ししたいと思います。
最近は、パックテストなど水質検査薬の種類が増えていて、手軽に調査できる項目も増えてきています。河川や地下水の調査では、COD、アンモニア、リン酸、窒素、pH、電気伝導度などはよく調査がおこなわれる項目でしょうか。また水温やpH、電気伝導度などの測定機器も安価で購入できるようになっています。色や濁り、においなどは五感で確認できる項目です。
水質調査で必ず考えることは、測定方法は間違ってなかっただろうかとか、出てきた結果がどんな意味をもっているのだろうかということです。
それは、水質が常に変化することや、分析結果には必ず誤差が含まれること、環境条件によっても結果が異なるからです。
最近の経験で、今年の冬に東北地方で久しぶりにパックテストを使った水質調査をする機会がありました。気温は1℃から3℃、日陰に入ると厚い氷がはっているような日でした。凍える手でパックテストを取りだして、CODを測定しようとしたところ、説明書には「20℃で測定して下さい」とあり、温度補正は10℃から30℃まで。測定温度を間違えると結果が正確に出ないのだ、ということを思い出し、採水してホテルで検査しました。横浜では、滅多にこんな寒い条件でパックテスト使わないので、危ないところでした。
水質調査では、どんな条件でも、数字として結果が出てきてしまうので、出てきた数字を何も疑いなく使うことは怖いのです。