第134回 釜飯仲間・おこげのお話
2020.2.29神奈川・緑の劇場
釜飯仲間・おこげのお話・国連「家族農業の10年・2019年~2028年」
日本穀物検定協会による2019年産米の食味ランキングが発表され、44道府県の155銘柄が対象となり、最高ランクの特Aに54銘柄が選ばれた。(2月27日付日本農業新聞)
1971年産から始めた食味ランキング。1989年からは特Aを設け、各産地は特Aを目指して年々取得する銘柄は増えているという。
近年は天候不順の影響を受けても克服し、高温に耐える品種の取得も目立つ。
“はるみ”は神奈川県のオリジナル品種で16年・17年と二年連続特Aを取得したことから購入を希望する県民も増え、県内の米生産者は“はるみ”を作付する人が増えた。残念ながら、18年、19年は特Aに続くAランクだったが、神奈川の米“はるみ”は、県内に定着しつつある。水の良い神奈川は戦後の一時期までは“米どころ”の評価もされていた。静岡県御殿場あたりに暮らしていた人々の中には、“相模の米はうめえけんど、なかなか手にへいらねえ。”という人もいたという。今では47都道府県中、最下位に近い米の栽培面積でありながら、オリジナル品種で全国の米どころとランキングを競おうというのが楽しい。
全国に、その土地に適した品種が選ばれ、栽培管理が行われ“地酒”のごとく、土地の米の味が生まれている。“ふっくりんこ”“まっしぐら”“雪若丸”“てんこもり”“森のくまさん”などなど多彩な品種が並ぶ。福岡県の“夢つくし”などは、神奈川でも作りやすく美味しいと試しに作った生産者もいた。通称“夢さがみ”と言った。
“土地の味”を大切にしたい。地酒のように、土地の米のように。
江戸時代から続く“菜っ葉”がある。有名なのは“小松菜”“野沢菜”。神奈川にもある。“子易菜”と言って大山山麓の在、子易でしか出せない味の菜っ葉だ。今では、“大山菜”と名前を変えて、漬物が神奈川ブランドに認定されている。お隣りの駿河小山には“みずな”または“とうな”という名品がある。うまい。が、年々、栽培する人は減っていると聞く。独特の栽培方法は容易ではないらしい。
土地の名前から、さらには、生産者個人の名前で評価が確立する作物もある。野菜市の常連さんの中には、“○○さんの野菜”として受け入れられている。まだ本人と会っていなくとも親しみを込めて「今日の〇〇さんの野菜はどれ?」と尋ねてくれる。私も驚いたのは、野菜を見て「あっ!○○さんのだ!」とわかった人がいた。生産者にとってはうれしいがプレッシャーでもあろう。良い評価ばかりではない。「また○○さん、こんなの出してる。」なんてことが無いとも限らない。
私は、どこまでも、生産者の名前を伝えながら、一品、一品を利用する人に手渡したい。今日のこの野菜に込められた生産者の思いがある。利用する人に手渡すまでの月日、作物に降り注いだ出来事がある。さらに、作物は料理する人の思いに受け継がれ、食べる一人一人の思いに受けいれられていく。そうやって、生産者と利用者の輪が繋がっていく。
(2020年2月29日記 三好 豊)