第31回 早苗とりしか いつの間に・・

2019.9.2
映像の持つ力

今年は7月の長雨で、太陽が出ない日が続き稲はどうなる?と心配したけれど、草よりも勢いを増し無事に分蘖が進み、8月下旬には早生の稲が穂ばらみし顔を出しています! 草取りは1回だけでしたが、よかった、よかった。

よーく見ると、水田の端に植えたクワイの葉にカエルが!アマガエルくんが門番をしてくれたのね。ありがとう。

 

・・ 稲葉そよぎて  秋風の吹く

「 昨日こそ  早苗とりしか  いつの間に  稲葉そよぎて  秋風の吹く 」まさに、古今和歌集の一首のよう。つい昨日、田植えをしたと思ったらもう穂が出ているのね・・。なーんてことはなく、田植えのあとも、月ごとに作業は続きます。

しっかり分蘖しています

弱ってしまった苗があったら補植で植え替え。稲より旺盛な草が出てきたら草刈り。特に適時を見極めることが肝心な水田の水調整。中干し、深水にと判断したもの、台風予報で大雨だと水位が上がり返ってマズイなと悩んだり・・。猛暑の草狩り作業以外にも気をもむことも多い。

田植えをしてから、分蘖、穂ばらみ、出穂へと成長しますが、どの作業も適時を見極めることが必要。平安時代に和歌が詠める人にとって田植えは実感ではなく、風情で楽しむものだったのでしょうね。

ここまで育てば大丈夫。鴨よけ棒を外しましょ。

秋の知らせ、イチジク熟す

今年初のイチジクは4粒もとれました!

秋風に誘われて? ポポーの木が初めで実をつけた今年。無事に収穫ができました。わたしは不在のため食べられませんでしたが、なんとも甘美な南国の味だと言うじゃないですか。

年々亜熱帯を思わせる気候はポポーにも合っているのか?

帰るまで、待っててね。ポポーさん。

小さな森のある畑にぞくぞくと住人が

こちらは住人ではなく、あっと言うまに草に覆われた混植の畑で、せっせと草刈りする人。まっさらの畑から、1年、2年と・・11年。土に暮らす微生物たちをとりまとめ、そこは、小さな森のある畑になりました。

草刈りと言っても根っこは、伸びることで土を耕してくれるから、根は残しておきます。刈った草は表土の上に敷き、日よけや緑肥となります。

草刈りの後は、こんな風に植えたお野菜がくっきり見えてきます。手前は大豆、ずいぶん大きくなりました。こぼれタネで生えてきたシソ、雑草のように畝や通路や関係なくそこら中で育ってきたので、畝に移植したところ、葉っぱは虫くいもなく、めちゃ立派なシソの木となっていました。水は天水だけなのに、ほんと、よく育ってくれるなぁ。

そうそう、小さな森のある畑のはなしに戻って。こちら、コガネグモ。生き物の豊かな草原に生息するクモと言われて、その指標にもなっているとか。

なるほどー。わたしたちの「小さな森のある畑」は、手作業だけだから、いつもどこかに、(手が回らない)背丈のある草が育っているからね。たしかに草原地帯だわ。コガネグモが網を張るためにはちょうど良いみたい。

そんな目で見ると、草原区域を進むたびに次々とコガネグモを発見。1本、1本網をはったのだなぁと思うと、今までがしがし歩いていたのに、急にクモの巣を切らないように気をつけたり、優しくなるのでした。

 

八月 夏の祭礼

今年の夏も各地でお祭りが行われていますね!
これからの収穫に向けたお田植祭、南方では収穫の時期になるため収穫に感謝する豊年祭、無病息災を願う夏越しの祓い、神輿の渡御を行う神幸祭りなど。みなさんの地域ではいかがでしょうか。

こちらの祭礼では前日、集落の方々が自ら、神殿と鳥居に飾るしめ縄をつくります。

光栄なことに、しめ縄の最後の結びには、わたしがなった縄を使っていただきました。

雲の近くに鎮座する神社、ことしも、夏の祭礼が始まります。

 

こちらは海の地区の神輿渡御。
千枚田で有名な千葉県鴨川市、大山地区(高蔵神社)の祭礼。平塚では八幡神社から神様をのせた神輿が集落をめぐり、高蔵神社のある大山不動尊に集まります。

ていねいなのぼり。

猛暑でも集落のみなさんに神様をお連れして。人々の安寧を祈る。

 

「押し切り」あるある。〜 ところ変われば、平島編

「ワラが欲しいからお米をつくる」
<稲ワラ>・・ その柔らかさは加工がしやすく、また保温性にも富んでいる。その性質を利用し、身につけるものから、敷物、畑や家の材、など、様々な生活用具を作りだしてきましたが、加工を助ける道具をみると先人の言葉を思い出しますネー。

これは「押し切り」。長さを揃えたり、ワラ束をざくざく切るときに便利な道具。でも、どうして、まな板の上にあるの?

なんとー! トカラの海で釣れたバラクーダー。身をぶつ切りにする時に使うのでした。

バラクーダーの骨は太い! ほら、歯も牙みたい。

ぎゃっ、背びれの骨も頑丈でしかも先が尖ってる!

身を貫くの骨も同じ。そこで、漁師で畑もやるMさんは考えた。「そうだ!押し切りがあるぞ」、かつて使っていた、やわらかく保温性に優れた素材の藁を切る押し切りを、ごつい骨があるバラクーダーのぶつ切り道具へと変身させました。

勢いをつけて、ガシャン!!

次々にシーラの切り身が出来ていく!

ここ平島は、トカラ列島にある有人島7つの中のひとつ。中でも昔ながらの行事が今でも旧暦で行われている島として知られています。他にはお米が育つ土地だと言うこと。今では田んぼをする人はいなくなり、棚田も竹に覆われていますが、魚をさばく道具として生き残っていることからも、棚田を“稲葉そよぎて南風の吹く”風景が偲ばれますネ。

以前のコラム(こちら)では、トカラ列島では3度もお迎えする正月行事を紹介しました。

 

条件さえ整えば、何万年前の種が開花するのですから、今は人の手が入らなくなり藪に覆われた田畑も、また、誰かが起こし、お日さま、水、空気が入れば息を吹き返しますよね?。

遊ばせている田畑ってタネの貯蔵庫かも知れませんね。人の手が入れば、地中から芽が出てまた、風に稲葉がそよぐ。

(中川美帆)

「竹があれば生きていける」 9/30(月)
里山の恵み・伝統文化に出会う上映会のテーマは“竹と人”

今回のはまどま劇場で行う上映会は、竹と人がテーマ、千葉県君津市の泉ざるの記録。
里山の暮らしで体得した「暮らしの知恵、技、その心」を観ます! ぜひご参加を。

 

photo(C)民族文化映像研究所

「竹に暮らす」(1989年・41分/撮影地:千葉県君津市泉、富津市竹岡、勝浦市)

 映画のあとのお楽しみは・・
いちばん身近な里山の恵み、神奈川の「お野菜たっぷり」お料理と、お時間ある方はお話しも楽しんでくださいね!
<作品の内容> 千葉県君津市泉では、近年まで300戸ほどある村全部が竹ざるや籠を編んで生計を立てていた。県下で泉ざるの名で有名になったものである。ざるは米上げざるとして、農家には100から200個ほどもあって必需品であった。その泉ざるの伝統を引き継いで、ざるを専門に作る家が一軒ある。その方から、竹と人間の関係を少しでも明らかにしようとした作品。(千葉県教育委員会委嘱/民族文化映像研究所制作)

日 時

 2019年 9月30日(月) 19~21時 [夜の部 ]のみ開催。(開場30分前)

・上映会の前は・・> 藁から縄づくり「縄ない」自主練を行います。
・映画上映の後は・・> 神奈川お野菜の軽食を囲み懇親会(参加自由です)

お申し込み、詳細はこちらを。

▷NORA上映会のページ

NORA上映会の都合が合わない方は、郷土映像ラボラトリーでは、東京・川崎でも上映会を行っていますので、郷土映像ラボFBを参照くださいね。みなさまのご参加をお待ちしています!

▷ 郷土映像ラボ上映会のページ

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