第131回 下農の夏
2019.7.31いしだのおじさんの田園都市生活
よく雨が降りました。
・酷かったよね。お天道様、隠れてばかりだった、、、
野菜たちもツライね。
・人間だって、、、
光合成が必要!でしょ。
・そうだよ。
元気が出ない。?
・でも、身体は楽だったのかも?
涼しかったからね。30日遅れで梅雨が明けて、これから大変だね。
・そうだよ。年々。おじさんにはツライ。
おじイさん、、、???
・そもそも中学生のころから「おじさん」って、呼ばれていたから、、、
だから、いしだのおじさん。
・いや、大学生のころ、ボランティアのとき、まわりが中高生だったから、、、
そうなんだ?
・障害児の「兄弟姉妹と若者の会」という活動をしていたんだよ。
そのなかで、おじさん、だったんだ!ははは、笑える。
・笑わなくていい。これは、いい活動だったんだよ。評価もされた。
ふぅん。
・気のない返事だな。他人事と思っているな。
昔の話でしょ。
・でもね、最近も、また障害児の兄弟姉妹が話題になっているけど、、、
うん。タイヘンだよね。
・障害児に手がかかる分、いろいろ我慢したり、ね。そういう子たちを集めて活動していた。
へぇー。何していたの?
・まぁ、こどもの国に行ったり、餅つきしたり、、、特別なことでもないけど、、、
でも、それが嬉しいんだよね。その子たちには、、、
・そういえば、そこで餅つきをしたことから田んぼをやるようになったんだよ!
?
・そうだった!忘れていたぞ、おじさん。
何を言っているんだか、、、
・でも、いろんなことが結びついているんだよね。忘れるほど、、、
それは、よかった、、、
・よかったけど、梅雨明け猛暑。身体がついていかない、、、おじさん、、、
うん。マチガイなく本物のおじさんだもんね。年寄りの冷や水、、、
・いや、冷や水じゃないけど、冷房が苦手でしょうがない。
悲しいね。無理するな。
・でも、どーしても、無理も必要な状況なんだよね。
人手不足?
・それもあり、出稼ぎ、頑張って、結局、畑にシワヨセがいっている。草ぼっこ。
どーする?
・やるしかない。下農、として、、、
下農?
・前にも話したぞ。「上農は草を見ずに草を取る。」
中農は、、、草を見て、とかなんとか。
・「中農は草を見て草を取り、下農は草を見て草を取らず」、だよ。意味、分かっている?
よく分かんないけど、、、草取りが下手だと下農になる?のかな?
・ちょっと、違う、、、実体験がないと理解しにくいかもね。
そういう実体験はあまりしたくないんですけど、、、
・畑でね、草とか、野菜とかの芽が出る瞬間が分かることがあるんだよ。
へ?
・生まれる瞬間。
へ?
・芽が動く、とも言うんだけど、茶色い土の中に小さな緑の粒みたいな、、、
動くんだ?
・うん。
赤ちゃんみたい、、、
・そう、これが野菜ならカワイイけど、雑草の場合、、、
イヤかも、、、
・田植えから数日経った田んぼの稲と稲の間に緑の点々、、、
わいてくる感じ?
・そう、これを点々のうちに田んぼの表面を撫ぜてやれば、まぁ、何とかなる。
何とかなる、って?
・死んでくれる。
撫ぜて殺すの?
・いや、デッキブラシとか、田車とか、チェーンとか、そういうもので撫ぜるんだけどね。
けれども、放っておいたら、、、
・今、その、放っておかれた状態が今の我が社の田んぼ。
あらら、、、
・草で地面が見えない、稲よりも高い草もある。
そんなんで、お米、取れるんすか?
・稲の分の栄養を草が吸っちゃったよね。でも、それなりに米は取れると思うよ。
全滅ではない。
・稲も一応元気に育っているように見えるよ。
そうなんだ?
・でも、本当はもっと元気なはず、株が太って地面が見えなくなっている、はず。
でしょ。
・そうだね。そして、畑もタイヘン。
畑、撫ぜなかった?
・畑も、草の芽が出るか出ないうちに撫ぜるか、出始めにカリカリ削れば済むんだけど、、、
要は、赤子の手をひねるように、できればよかった?
・いいこと言うねぇ。そうなんだよ。でも、もう、今では立派な不良少年。いや、中年。
たちが悪い。戦い挑んで、返り討ちに合う。
・ハハハ、あるかも、、、
どうすんの?
・今、考えているのは、ボランティアの導入。
また、そうやって、人様に頼ろうとする。
・いや、頼れる人がいることは、いいことだよ。いれば、だけどね、、、
草ぼっことの闘い、したくないでしょ、フツーは。
・う、うん。でも、10年後の俺をイメージしている。
石ちゃんみたいなカワリモンはいないんだから、自分の基準で考えてどーすんの?
・いや、65歳過ぎてさ、少し時間に余裕があってさ、、、
ま、そういう人はいるかもね。お金にもヨユーあるといいけど、、、
・夕方に畑に出て、少し身体を動かしてさ、ね、
ああ、だいたい言いたいことが分かった!
・えっ?分かるの?スゴイね。
すごくないでしょ。あれしかないから、、、
・夕方に少し身体を動かして、畑がキレイになって、ちょっと、野菜なんかもらって、さ。
で、プシュッと、でしょ。
・えええーツ!
あほ!
・まぁ、気持ちのいい仕事をして、人助けにもなって、畑が喜べば自然にも良くて、
なんだかなぁ
・ということは、地域や社会にも貢献しているわけで、、、
ビールを飲む口実ができる。
・いや、口実だなんて、、、美味しいビールを飲むのはいい人生なんだよ。
はいはい。
・そういう10年後を夢見ている。
でも、ビールは今でも呑んでいる。
・炎天下の作業で泣きながら、ああ、あと6時間でプシュッだ、と、、、
ビールに助けられて作業をしているわけね。
・ですよ。ビールに助けられて人生ですよ。
っていうか、ボランティアさんの話。
・今日、都筑ハーベストを訪ねたんだけど、ボランティアさんが黙々と草取りしていた。
うん。
・ああいう助っ人さんは、心強いと思うよ。
その方も楽しんでいるなら、なお、いいね。
・まぁ、今日は炎天下だったけど、ね。ご自分のペースでやっているんだと思うよ。
うん。
・福祉ボランティアというより、農ボラ。
そう?
・ハーベストの皆さんも個々のペースで特にという手助けは要らないみたいだから。
そうなんだ?
・いや、俺は今日ちょっと見ただけだからわからないけど、、、
でも、いちいち介助したりは必要ない。
・そうだね。精神的なケアというか支援は必要なんだろうけど、、、
直接的には職員さんの仕事?
・うん。きっと間接的にボランティアは利用者さんを支援している。
支援じゃない支援?
・そうそう。
でも、石ちゃん、夕方に畑に行ったら利用者さんは帰る時間でしょ。
・まぁ、それは夏場の話で、、、
農ボラだからそれでもいいのか?
・それもあるね。
緩い感じで、人が来てくれるといいね。
・はい。募集します。
(石田周一)