第108回 釜飯仲間・おこげのお話
2017.12.30神奈川・緑の劇場
『釜飯仲間=おこげのお話=』
~神奈川の農業と食べ物のこと・生産者に寄り添って30年~
「国連家族農業10年」を国連が決めました。
地球上で、世界の人口が爆発的に増加する一方で、気候変動による食糧の生産困難の危機が予測されています。世界の飢餓を防ぎ、自然環境を保全するために、何が大切なのか?農地のさらなる大規模化と生産効率の向上でしょうか?人工知能を駆使した低コスト化でしょうか?
国連では、そうは考えていません。2014年を「国際家族農業年」に位置づけた国連では、2030年までを目途に世界食糧の8割を生産する家族農業こそが、世界の食糧安全保障を支え、環境を保全し、生物多様性の保護を実現し、地域の活性化をすすめるなど、重要な役割を果たしている、そのことの重要性を認識し家族農業が崩壊するような市場原理主義や規模拡大、その弊害としての生態系の破壊を押しとどめるためにも、家族農業の再評価が必要になっている、というわけです。
(12月27日付・日本農業新聞論説より)
今の日本で農業をやっている人々が、誰も経験したことのない生鮮農産物の不足と価格の超高騰の中で2018年を迎えます。食糧自給率は史上二番目の低さで38%になっています。農業に就いている人の平均年齢は65歳を超えました。明らかに食糧危機です。農産物だけではありません。畜産・水産・酪農・・・
すべてにおいて生産者は減少し価格は高騰しています。
さすがに、あまりの価格の高騰に多くの人々が不安を感じているように思います。それでも、国の政策は、国内生産を守ろうとする動きは鈍い、どころか、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)や、ヨーロッパとの自由貿易協定など一層の関税撤廃で農畜産物や酪農製品の輸入増加が進められようとしています。
あいも変わらず、農業の規模拡大一辺倒なのが日本の農業政策です。
市民レベルで、いったいどうすれば良いのか?何ができるのか?
「地産地消」の活動に30年携わってきた立場から、あらためてその原点に帰る時期なのではないかと提言したいと思います。それは、生産者と利用者が対話を重ねること、研究者や流通に携わる人々だけが議論しがちなのだけれど、必ず現場に携わる生産者を交えて意見を出し合うことです。
市民(生産手段を持たない、お金でしか食べ物を手に入れられない人々)は、必死で生産者との絆を作ることです。死にもの狂いで生産者の手を握りしめ決して離さないことです。それ以外に、自らを守り子どもたちの命を守るすべはない、と言っても過言ではありません。
2018年は、あらゆる局面で「命を守る」をテーマに活動していきたいと思います。2017年も、多くの皆様に支えられ、新しい出会いにも恵まれました。ありがとうございました。
皆様にとって、2018年が良い年になりますように、心よりお祈り申し上げます。
(2017年12月30日記 おもろ童子)