
第15話 まだ名前のない歌
2025.7.28わけ入れど谷戸はなお深く
若い頃から歌をつくっていた。作詞・作曲のマネゴトである。とはいえ僕はギターなど楽器はできない。楽譜もかけない。ただ鼻歌の延長線のように、ある期間こねくりまわして仕上げては、頭の中にひたすらしまい込んできた。
でも、その幾つかを伴奏してくれる人がいて、先日、人前でマイクを握る機会があった。
そのうちの一曲を、この場で紹介させていただくことをご容赦ください。詞だけになるけれど。
メロディは何十年も前に舞岡の谷戸でこしらえたもの。歌詞は当時のものを少しだけ残して、ほぼリニューアル。これまでお世話になった大勢の先達や同行者への感謝、そしてこれからへの祈りの歌です。歌の名前はいろいろ迷ってるけど、決まってません。
- ススキの原の踏み分けみちを
仲間たちがやってくる
足は萎えて 目はかすんでも
とびきりの笑顔で手柄ばなしは尽きることなく
さかずきを酌みかわせ
物言わぬ友の面差しは
ほほえみ浮かべてるごらん 山は何もかわらず
おおきなお月さま顔出す
うかれ野ウサギおどる畑に
やわらかな光ふりそそぐ - 何度も何度でも繰り返す
あやまちを抱きしめて
もうやめようよ みんな帰ろうと
呼ぶ声がこだまするまちを渡る風はすずしく
むらは実りの時
ススキの原の踏み分け道を
僕もたどりゆくこんどわが子と過ごす夜は
眠れぬその子に約束を
ニセの神様はもういない
おとなは正気に戻ったと
佐渡島在住 十文字 修