水の流れは絶えずして

第四話 地下水を蓄える関東ローム層

2014.1.1
水の流れは絶えずして

 

今までに、横浜の台地、丘陵地の成り立ちについて話しをしてきました。今回は、谷戸に湧水を供給する地下水の貯水層「関東ローム層」の話しをします。

関東ローム層は、富士山や箱根火山また、遠くは浅間山などの噴火によって供給され降り積もった火山灰の総称です。前回と前々回にお話しした丘陵や台地が形成された時代には、活発に活動していた火山から火山灰が供給され、火山活動の時代に対応して多摩ローム層、下末吉ローム層などと呼ばれる古期ローム層が堆積しました。

その後は、武蔵野海進によって東京では武蔵野台地が形成されていた時代ですが、大河川のない横浜市域ではこの海進では河川沿いに小さな河岸段丘や海岸段丘が形成された程度で、下末吉台地のような大きな陸地の形成はありませんでした。この時期には5万から4万年前頃に堆積した武蔵野ローム層、4万年から1万年前頃に堆積した立川ローム層が分布し、新期ローム層と呼ばれています。下末吉台地や多摩丘陵における新期ローム層の厚さは5m~15mです。

関東ローム層は、自然に堆積している状態では地層の空隙(粒子と粒子の間の隙間)が多く、保水力が非常に大きな地層です。このため、台地や丘陵に降った雨が地下にしみこみ、下末吉層や上総層郡といった基盤を受け皿として、関東ローム層内に地下水がたまっています。谷戸の湧水は関東ローム層に蓄えられた地下水の出口となっているのです。

地下水循環2

台地に降った雨の水循環イメージ
湧水断面

大規模造成地で下末吉台地の断面がみられたところ。
関東ローム層の基底部から地下水がしみ出しているところが確認される。

 

つまり、丘陵や台地上に降った雨は、森林や畑などから地下にしみこみ関東ローム層に一度たまります。そして徐々に谷戸に水を供給しています。このため、この水循環の仕組みは、天然のダムの働きをし、洪水を抑制する上で重要な役割を果たしています。
台地の上の川のないところで、直径1mぐらいの丸井戸(写真)を見たことはありませんか?台地上の多くの井戸は関東ローム層に溜まった地下水を利用しています。機会があったら井戸の持ち主にお願いしてふたを開けて見せてもらって下さい。きっと深さは5m~10mぐらいで手で掘ったと聞くことができると思います。

 

水の流れは絶えずして