第十三話 井戸を掘る
2014.10.1水の流れは絶えずして
コラムの話題を探していた月末、そういえば昨年のいまごろトンボ池づくりのお手伝いで井戸を掘っていたことを思い出し、紹介することにしました。
実際に井戸を掘ったのは、宮城県登米(とめ)市登米(登米)町の「手のひらに太陽の家」です。この施設は、東日本大震災で被災した子どもたちの支援と被災地の活性化のために建設された復興支援施設ですが、地元木材と自然エネルギーを活用した自然共生型の施設として、復興のモデルになることも目的としています。http://taiyounoie.org/
水田に映る「手のひらに太陽の家」 水資源豊富な地域です
昨年は5月から10月にかけて、庭にトンボ池をつくるお手伝いをしていました。登米市の大半は水田地帯、ラムサール条約に登録される伊豆沼のほかため池もいくつかあり、自然資源豊富な地域です。このため、トンボ池に移入する水草やいきものには苦労しませんでしたが、最後までトンボ池を維持するための水源が最後まで決まりませんでした。
トンボ池作成前の前庭、個々に水を供給する井戸を掘削します。
深井戸を掘るだけの資金もなく、周囲を探索すると近くの民家の裏庭に丸井戸があるのを発見。また、登米市の文化財でもある旧登米高等尋常小学校の庭にも井戸があり、地元の人の話では、「手のひらに太陽の家」の前面は、かつて谷戸の沼地だったが、伊達正宗による北上川改修と新田開発で水田になったところだから、井戸掘れば水が出るよ!と言われ、その気になってしまいました。
井戸づくりを決めることになった旧登米高等尋常小学校の井戸
とは云いつつも、地元の協力者の好意で手のひらに太陽の家周辺の地質断面図を役所から入手してもらい、地下の様子を調べると、表層付近には、地下水が溜まりそうな礫層があるのですが、その下には登米層と呼ばれる古生代の粘板岩(この地層から産出する粘板岩は、登米の特産でもあり東京駅の瓦にも使われた「玄昌石」の原石となります)が浅いところに有り、これにぶつかると地下水を得るのが難しいということがわかりました。
「周辺民家に井戸はある」、「でも岩盤も浅そう」、などの議論を関係者と議論を交わしながら結局、ダメ元でもいいか、ということで掘削することになり、6月から8月にかけて、毎週末地元にボランティアのみなさんと人力で井戸掘りを進めました。
道路脇でとりあえず井戸掘りを始めました
ボランティアの皆さんとの井戸掘り
1mは順調に掘削できたました。
まわりの土が崩れないように、地域のかたの協力で井戸管を挿入します。
実査に掘ってみると、最初の1mは順調で、「井戸掘りなんて簡単じゃん」なんていっていたのですが、1.5mぐらいからだんだんと地層が堅くなり、2mほどで懸念していた粘板岩の岩盤が。あきらめかけていたところ、一緒に掘っていったボランティアの新田さんが、隙間から水が出てきているよ!と。1日おいて見ると、翌日には地面近くまで水が溜まっていました。
水の量は絞り水程度で、それほど多くはありませんでしたが、池の水が減ったときだけ補給するには十分。
岩盤到着、ここから1m進のに、1ヶ月以上かかりました。
上部の砂礫層と岩盤の間から地下水が出ているのを確認しました。
並行してボランティアのみなさんとつくっていたトンボ池も完成しました。
今年の夏のトンボ池、井戸から供給される地下水で、植物も育ちすぎるぐらい育っています。
というわけで、夏に時々井戸枯れすることもあり、100%成功というわけには行きませんでしたが、今年の夏も、なんとか地下水をトンボ池に供給してくれていました。