水の流れは絶えずして

第十六話 ホタルの棲む水辺

2015.1.1
水の流れは絶えずして

新年おめでとうございます。
今年は、水と関連して、NORAであまり語られなくなっている、「いきもの」やエコアップのお話ししたいと思います。

ホタルはトンボとともに日本人のこころに残るいきものとして、また、地域の水環境の指標として代表的なふるさと生物といえます。
横浜では、ホタルの生息地が限られていることから、ホタルの保全活動に参加する機会がありませんでした。しかし昨年、コラムでも何度か紹介させていただきましたが、自然環境復元協会の仕事で、北海道から沖縄までホタルの保全を通した地域の水の保全活動を行っている19地区の団体の活動支援をさせていただく機会に恵まれ、ホタルの生息環境について多くのことを学ぶことができましたので、いくつか紹介したいと思います。

日本のホタル
日本には、ホタルの仲間が約50種類いると云われています。ほとんどは陸生のホタルで、水生のホタルは、ゲンジボタルとヘイケボタルの2種類のみです。正確には、ゲンジボタルは、本州、九州、四国に生息し、沖縄と北海道には生息しません。ヘイケボタルは本州、九州、四国、北海道に生息し、沖縄には生息していません。北海道でゲンジボタルを保全している場所があるようですが、それは人為的に持ち込まれたものだそうです。

ホタルの生息環境
一般的には、ゲンジボタルは流れのある環境を好み、ヘイケボタルは水田などの湿地環境を好むといわれます。しかしゲンジボタルの生息しない北海道の栗山町や美幌市では、湿地だけではなく、本州でゲンジボタルが生息しそうな流水域にもたくさんのヘイケボタルを観察することができました。美幌

ヘイケボタルの生息する水辺 (北海道美幌市)
本州ならゲンジボタルが生息しそうな環境です。

ゲンジホタルの生息環境=源流域という図式が横浜(関東)では何となくできていましたが、宮崎県延岡市の北川では、川幅が数十メートル、深さが5メートルもあるような河川で、数百のゲンジボタルが力強く乱舞している風景を見ることができました。対照的に、茅野市の標高1000mの冬は雪の閉ざされるような小川では、ゲンジボタル数頭静かに飛翔し、情緒溢れる風景もみることができました。

北川

北川2

ゲンジボタルの生息する水辺 (宮崎県延岡市 北川)

こんな大きな河川でゲンジボタルが乱舞するのです。
活動を指導いただいた大場先生(元横須賀市自然・人文博物館)の話では、ホタルは元々南方系の生物なので、国内でも南の地方では力強く生きていくことができるのではないか、またホタルの数はその地域の環境ポテンシャルを表しているので、無理に放流しても一時的には数が増えるが、最終的には環境ポテンシャル以上には飛ばないということであり、地域の環境保全や再生を考える上で重要な視点であると思いました。

減少するヘイケボタル
ゲンジボタルは、河川環境のエコアップ(保全・再生)をすることで、生息地域を保全することができます。実際に地域のシンボルとしてホタルで地域興しやまちづくりを行っている事例、また、多自然川づくりなどにより、ホタルの生息環境の保全が進みつつあるように思います。一方で,ヘイケボタルは湿地環境、特に水田環境を好むと云われており、人の生活との結びつきが強い性格を持っています。しかし、近年の減反政策による水田の減少、水田の基盤整備等による冬季の乾田化や農業用水路と水田の分断、さらには農薬の使用などによって、ヘイケボタルのみならず水田耕作と共存してきたいきものたちが、地方でも激減しているという報告を頻繁に聞くようになってきました。
生物多様性という視点からは、ヘイケボタルの生息環境の保全は重要ということです。

これからも、都市部でも農村地帯でも、いきものの棲める環境の大切さを、考えていきたいと思います。

水の流れは絶えずして