第十七話 よこはまのホタル 都市の自然環境
2015.2.1水の流れは絶えずして
はまどまの食事会などで、横浜でもまだホタルを見ることができる場所がある云う話題になると、「見たことがある」とか「知っている」という答えが返ってき来ることがありますが、「知らなかった」という反応が多かったように思います。
昨年は全国のホタルの生息地を多く見る機会を得ることができ、圧倒的に大きさの違う自然に舞うホタルは優雅でした。と、他の地域を羨んでも横浜の自然や水環境は良くならないので、いま一度横浜の谷戸環境をホタルの気持ちになって考えてみようと思います。
横浜でホタルの生息地として比較的有名な瀬上沢は、全国にあるホタルの里と比べても引けをとらないぐらいのポテンシャルを持っているといえます。他にどのぐらいホタルの生息環境が残っているのかを調べていたら、横浜市環境科学研究所が2010年に発行した所報第34号で「横浜のゲンジボタル、ヘイケボタルの生息環境調査」を掲載していたことを発見しました。この報告では、ゲンジボタルが21地域で、ヘイケボタルが9地域で生息の確認がされたとされています。これらの生息地域のほとんどは、開発で源流域が分断されながらも細々と残っている源流域です。
かつて森清和さんから、ホタルは日本的で素晴らしいけど、横浜では環境のポテンシャルが大きくないので場所が限られてしまい、横浜市全体への活動がひろがらなかった。生息環境の再生も試みたけど、ホタルが自力で再生できる環境まで作るのは難しかったと。それに比べてトンボは水辺を再生すれば、必ず戻ってくれるから、活動のやりがいにすぐにつながるので、指標生物として適している、などなど聞かされました。市域の大きさに比べホタルの生息地域が限られているので、活動が一般化できなかったと云うことだと思います。横浜市公害研究所(現環境科学研究所)から森さんを中心にホタルの生息環境作りマニュアルが発行されたのが1986年2月。当時は横浜でもホタルの再生を目指したいたようですが、私が環境再生に関わり始めた1990年代には既に「トンボ」の時代になっていたため、私自身が市内でホタルの生息環境保全に直接関わったことはほとんどありませんでした。都市化する以前に3700以上あった谷戸の源流と谷戸田にホタルが飛び交う姿を思い浮かべると、やはり特別な地域なのでしょうか。
昨年は、ホタルの生息地域を訪問させていただき、ホタルの保全活動は、たくさん飛ぶこと、つまり数を求めるのではなく、環境ポテンシャル似合った数で継続的に再生されることが重要ということを学ぶことができました。また、ホタルと云えば何となくゲンジボタルをイメージしてきましたが、湿地環境を好むヘイケボタルや陸生のヒメボタルの美しさをみることができ、横浜でも水辺や湿地を再生することで、ヘイケボタルの生息環境が復元できるのではないかと思い始めています。