第十八話 水辺のシンボル 螢と蜻蛉
2015.3.1水の流れは絶えずして
螢から蜻蛉へ
里山の水辺にはたくさんのいきものが暮らしていますが、代表的な種類として、螢(ホタル)と蜻蛉(トンボ)は、日本人の心の中にあるふるさと生物といえます。
蜻蛉と螢、生きもの環境としては似ているところもありますが、人との関わりではだいぶ異なるように思います。
日本には、約50種類のホタルが生息していますが、ここでは水辺に生息し、ホタルの代表格といえるゲンジボタルとヘイケボタルについて考えてみます。
生態的には、トンボ同様に幼虫時代を水中で過ごし、成虫になると、陸上で生活し子孫を残していきます。横浜では6月上旬からゲンジボタルが、2週間ほど遅れてヘイケボタルの成虫の飛翔が見られ、産卵後に死滅します。卵は2~3週間で孵化し、幼虫が育つと翌年の5月連休明け頃に上陸し、土に潜ってサナギになります。
ホタルの生活史(ホタルの生息環境づくり 横浜市公害研究所他、1986)
そしてまた成虫を観賞するホタル狩りの時期になりますが、ホタルの楽しみ方は、ホタルが放つ幻想的な光を観賞するだけでなく、ホタルを捕まえて螢籠に入れて光を楽しんだり、蚊帳の中に螢を飛ばして楽しんだなどと云うお年寄りの話を聞くことがよくあります。螢狩りには、観賞するだけではなく捕まえて楽しむ意味もあったように思います。
吉野川市美郷の螢籠 各地で蛍を観賞するための螢籠が作られている
一方でトンボですが、日本には約200種類ものトンボが生息しており、生息環境や生態も多様です。
トンボは、ホタルと同様に幼虫時代を水中で暮らし、成虫になると陸上で生活します。基本的には、幼虫(ヤゴ)で冬を越し、春になると羽化して成虫になりますが、ホタルと違い、サナギにはならず、幼虫から直接成虫に成長します。また、ホタルは1年で世代交代をしますが、トンボは、春から秋までの間に、何度か世代交代をする種類が多く、成虫の寿命も数ヶ月と云われ、その間良好な環境を求めて数キロから数十キロの間で移動します。
シオカラトンボの生活史
人との関係ですが、ホタルの楽しみ方が観賞だったの対して、トンボはトンボ捕り、トンボ釣りなど捕まえること自体を遊びとする文化があります。関西では、「ブリ」といって、ひもの両側におもりをつけて空中に飛ばして、ギンヤンマを引っかけて捕る遊びもあります。
全国的にはホタルやその生息環境/水環境の保全活動は、まちづくりや地域活性などと連携して活動が盛んに行われていますが、横浜では、環境ポテンシャルの大きさから、ホタルの保全活動がかなり限定的になっていましたが、静かに見守る螢と捕まえて遊ぶ蜻蛉、同じ水辺のふるさと生物ですが、その関わり方には大きな違いがあるでしょうか。