水の流れは絶えずして

第二一話 冬のプールはトンボの楽園時々地獄

2015.6.1
水の流れは絶えずして

6月に入り、そろそろ源氏蛍が飛び交うシーズンです。今年は螢や蜻蛉が例年より早いという情報もあるようです。さて、今月ちょっと息抜き、このシーズンならではのちょっとマニアックなトンボとプールの話をしたいと思います。
毎年夏のプールシーズンが終わると、待ってました!とばかり、トンボたちがプールに卵を産みにやってきます。プールに来るのはシオカラトンボ、ギンヤンマ、ショウジョウトンボ、ノシメトンボ、コノシメトンボやイトトンボの仲間などです。フールに産み落とされた卵は、まだ暖かいうちに孵化し、ヤゴの状態で一冬かけて成長します。そして、暖かくなった5月から6月に羽化してトンボとして飛び立っていくのです。

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プールに落ち葉が溜まると、ヤゴの住み処に

 

しかし、実際にトンボとして成長できるのはどの程度のヤゴたちでしょうか? トンボたちにとって、冬のプールは天敵もおらずヤゴたちが仲良く暮らせる楽園のはずなのですが、時々地獄が待っています。

その1、隠れる場所がなーい
プールシーズンが終わると、定期的な清掃も行われなくなり、プールには少しずつ落ち葉などが溜まってきます。紅葉が終わったころには落ち葉もたくさん舞い落ち、栄養分とともにプランクトンやアカムシなどの小さな生物が育ちはじめます。こうなればトンボの楽園、ヤゴは葉っぱの裏や隙間を住み処とし、肉食のヤゴのえさも豊富にあります。  しかし!もしプールが屋上のように周りに樹木がないところにあり落ち葉が溜まらなかったら、隠れるところがな~い。落ち葉もなくプランクトンやアカムシも育たずえさもな~い、そうなるとプールの中はたちまち戦争状態、肉食のヤゴにとってえさは「ヤゴ」....落ち葉のないプールでは、強いヤゴが数匹生き残る程度となってしまいます。実際、6月のプール清掃で数匹のギンヤンマが残っているだけの状況を何度か見たことがありました。

その2、突然の改修工事
プールは、夏の暑いときに人間が楽しむ施設。オフシーズンの冬場はメンテナンスに最適です。
ペンキの塗り替えや給排水施設の修・改善などなどの工事が行われることがあります。こんなときは人間の都合で冬に突然水を抜かれ、プールのいきものたちはすべて排水溝に.....何年かに一度はしょうがないですね。

その3、夏に備えてプール掃除
施設の改修は何年かに一度ですが、毎年6月頃になるとプール開きに備えて、掃除やメンテナンスが行われます。プールの側面は、人が上りやすいようにざらざらしていることが多く、成長が早かったヤゴたちはプールの壁を登り、トンボになって巣立っていくことができます。

 

ギンヤンマのぬけがらHP

プールの壁を上って羽化した(クロスジ)ギンヤンマのヤゴの抜け殻

クロスジギンヤンマは5月上旬頃、ついで成長の早いシオカラトンボやオオシオカラトンボが羽化し始めます。その他の種類も徐々に羽化するのですが、プール掃除に羽化が間に合わなかったヤゴたちは大量の水とともに排水溝へ  助けて~~
と云うわけで、横浜の小学校や公園では、プールのヤゴ救出作戦がもう20年以上も前から行われています。

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元町公園プールで行われたヤゴ救出大作戦

捕獲されたヤゴHP

救出されたヤゴ

 

子どもたちに、家で羽化するまで家で育ててもらったり、近くの池に放流されたりと、再びトンボとなることができました。

水の流れは絶えずして