第128回 釜飯仲間・おこげのお話

2019.8.28
神奈川・緑の劇場

釜飯仲間』=おこげのお話= 国連「家族農業の10年=2019年~2028年」

2018年の食糧自給率(カロリーベース)が37.33%になりました。1993年の米不足の年は37.37%でしたから、記録がある1960年度以来、過去最低の数値です。(農水省発表)。 それでも政府は、貿易自由化の材料に農産物を差し出して、まだまだ日本の農民は努力しろと言うのです。アメリカとの貿易協定交渉が本格化しています。

(8月25日、日米交渉大枠合意、9月下旬に決着を目指す。と報道されました。その内容は明らかにされないままです。)

日本では農業に従事する人は激減し続けています。  輸入の冷凍野菜の量は年々増加する傾向で今年も過去最多のペースです。業務用、家庭用とも輸入冷凍野菜が定着しています。家庭で素材から調理する機会が減っていること、気候変動もあいまって国内生産が不安定で国産野菜よりも安定供給ができる輸入野菜が増えています。より積極的に輸入野菜で利益を確保しようとする業界では、国内生産を維持拡大しようという動きは埋もれているようです。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2050年の予測として食糧不足や飢餓のリスクが高まると警告した特別報告書を公表しました。気温上昇は、干ばつ、水不足、熱波、砂漠化、山火事、害虫の発生、土壌侵食、永久凍土の溶解などを引き起こします。

ヨーロッパでは、若者たちが、自分たちの未来のために地球温暖化を食い止める運動を積極的に進めているといいます。そして、原発ゼロ、核兵器のない世界を求める人々の運動との連携が進もうとしています。平和で公正な世界、地球環境の保護、SDGs(持続可能な開発目標)達成など共通の課題に取り組む運動の連携です。

世界は急激な人口増加が進んでいます。その食糧を賄うだけの耕作地の確保は気候変動をはじめとした要因で困難です。日本では耕作放棄地が広がり、作物を作れるのに作らずに海外からの輸入を進めています。そして、食品ロスを生み出しています。

このようなことが許される時代は、まもなく終わりを遂げることでしょう。今は、輸入農産物は価格が安いかもしれません。しかし、世界がいよいよ食糧が不足した時でも、今のように輸入することができるのでしょうか?

農産物は、他の工業製品とはまったく違います。何より天候の影響を強く受けるのです。病害虫の発生による被害、鳥獣被害も深刻です。それなのに、まるで工業製品でもあるかのように、いつもいつも同様に作物が収穫できるという想像力の欠如も深刻です。生産者の努力の及ばないことがある、そのことを理解して、生産者を応援しようという人が増えることを願って「地産地消」、交流のできる生産者との繋がりを大切にしたいと思うのです。
安全でおいしい農産物を低価格で都市住民が利用するためには、農業・生産者支援を手厚くし、農業に従事する人を増やすことが必要です。生産者支援は、巡り巡って利用者の暮らしを守ります。
(2019年8月25日記  三好 豊)