10月30日 (日)|公開研究会「里山を保全する持続可能な仕組みづくりに向けて」報告

10月30日(日)公開研究会「高齢化するボランティアだけでは守れない。ならば、どうする?~里山を保全する持続可能な仕組みづくりに向けて」を永山公民館にて開催した。
参加者は、登壇者・スタッフを合わせて48名。会場の定員48名ぴったりだった。

話題提供者は次のとおり。
市民による里山保全のパイオニアとして
・中川重年さん(元京都学園大学/玉川アルプホルンクラブ)
全国的な森林づくり活動や支援の現場から
・鹿住貴之さん(NPO法人森づくりフォーラム理事/認定NPO法人JUON NETWORK理事・事務局長)
・木俣知大さん([公社]国土緑化推進機構政策企画部課長)
東京都の里山保全事業の現場から
・藤田樹生さん(東京都環境局自然環境部緑環境課課長代理)
・石川郁夫さん([公財]東京都環境公社環境事業部環境事業課緑地保全係長)
・山下詠子(恵泉女学園大学人間社会学部特任助教)
持続可能な里山保全の仕組みづくりの現場から
・松村正治(NPO法人よこはま里山研究所理事長/恵泉女学園大学人間社会学部准教授)

まず、この問題設定の背景を振り返っておくと、1990年代、里山保全ボランティア活動が全国的に展開された。これを後追いするように、2000年代には国・自治体による支援制度が整備された。
しかし、人が足りない、お金がないという課題は、2000年以降何も変わっていない。特に、里山を保全する担い手の固定化・高齢化が問題だと言われて久しい。林野庁の多面的機能支払交付金は、財務状況を好転させる効果があるが、むしろボランティアの高齢化問題から目を逸らしてしまう懸念もある。大事なことは、持続可能な社会-里山システムの構築へ向けて動くことだろう。

NORAでは、この問題に対して、3つのアプローチを採っている。
1つ目は、里山保全ボランティアの世代交代を促すものである。具体的には、登録ボランティア(2,000人強、20~40代が多い)と手入れが必要な緑地とをマッチングして、気軽に里山保全活動に参加できるようにする「よこはま里山レンジャーズ」がある。また、そうしたボランティアの中からリーダーを育てようとする若手の現場リーダー育成講座の開催である。
2つ目は、ボランティアに依存する里山保全活動の限界を認識し、ボランティアではなく若者に魅力あるシゴトづくりを目ざすものである。今年から始めた「まちの近くで里山をいかすシゴトづくり」の目的はここにある。現在、里山保全、公園管理、農福連携、環境教育、地域おこし、木工、ネットショップ、経営診断などを専門とする有志よるプロジェクトチームを発足。都市近郊の里山の資源・空間を活用した社会的起業を支援するプラットフォームづくりを進めている。里山保全の活動をシゴトにするばかりではなく、里山でのシゴトづくりが結果的に保全につながるようなことも視野に入れている。
これら2つは、民間主導で、NPO法人、株式会社、一般社団法人、個人事業主などの有志が連携して進めているが、都市近郊の里山は公有地であったり、公共的な価値があるために利用規制がかかっていたりすることが多いので、行政と協働で取り組んでいく必要もある。
そこで、3つ目として、公共的な樹林地管理に関する新たな制度づくりにも関わっている。
まだ思いつき程度の段階だが、たとえば、横浜市として「よこはま里山レンジャーズ」のような仕組みを導入したらいいとか。あるいは、もっと里山の資源・空間をいかした事業が生まれてくるように規制を緩和すべきとか、である。
まちの近くにある里山からは、教育、福祉、観光・レクリエーション、スポーツなどの生態系サービスがもっと提供できるだろう。そうしたサービス業の開発が必要ではないか。
ただしもちろん、利活用には一定のルールを設けなければいけない。それは、地域の生物-文化多様性に配慮した保全管理計画を策定し、これに基づいて活動をおこなうこと。また、サービスの送り手側も受け手側にも安全管理の徹底が必要である。そして、こうした管理がきちんと進められているかをモニタリングし、PDCAサイクルを回しながら改善していく必要があるだろう。
支援のあり方をひと言でまとめるならば、活動から活用へと支援対象をシフトしていくべきである。これは、アウトプットからアウトカムへとも言い換えられる。
これまで、里山保全活動は良いことだからと、その成果をきちんとチェックすることもなく、支援が継続されてきたように思う。それでは、社会-里山システムは持続不可能だ。どういうシステムであれば持続できるのか、不透明なことも多いけれど、まずは方向性を示して具体的に進めていこうと思う。

報告・ディスカッションの中では、中川さんの発言が光っていた。森の萌芽更新の本質と社会は萌芽更新しなくていいという話、さらに、里山の履歴と植物種数との関係から利用空間をゾーニングすべきという提言、どれも重要である。また、木俣さんが紹介してくれた森林ESDの動向は、知らないことが多くてためになった。

一般の参加者の方にはあまり発言していただく時間をとらなかったので、アンケートをとった。その中でもっとも響いたのは、若者のことをもっと知るべきという意見だった。たしかに、ボランティア活動に参加する若者は少なくない。また、里山での体験イベントに参加する親子はかなり多い。その彼ら、彼女らが何を求めているのか、そのニーズを理解することが求められよう。そのためには、若い世代とともに、悩み考えていくことが大事なんだと思った。
前日に観た芝居(→『フリック』)のことを思い出し、今日もまた同じことを考えていた。
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