寄り道18 事務局のスリム化により多様な参加の場を開く

2015.10.1
雨の日も里山三昧

日本NPOセンターから依頼され、下記のとおり、NORAの実践事例を原稿にまとめました。
NPOへの「参加」を促すためのブックレット『知っておきたいNPOのこと4(仮称:参加編)』の中で、「意欲的な人びとの関わりで組織に活力をもたらす」という項目に掲載される予定です。

 


2001年に法人を設立してしばらくは、行政からの委託事業を順調に受けることができ、常勤の事務局職員3名を安定して雇用できました。
しかし、6年目から受託事業収入が激減し、2年連続で大幅な赤字を出してしまい、また中心的な職員が体調を崩したこともあり、それまでの組織のあり方や事業の進め方を見直すことが急務となりました。
そこで、行政に頼らない自立した組織を目ざすには、自主事業を強化することが必要と考え、外部のアドバイザーを交えて検討を重ねました。
当時は理事会よりも事務局の主導で運営していたので、自立化を進めるには事務局職員が経営にも参画し、組織をリードしていく覚悟が必要だと思われました。
けれども、それは職員にとっては過大な要求でしたので、理事会は自主事業の拡大による自立化という方向性を断念しました。

ここで、NORAは再生を図るために大きく舵を切りました。
まず、運営にかかる固定費を削減するために常勤職員を置かず、組織を維持するための事務仕事を可能な限り減らし、会員がボランティアで分担することにしました。
また、かつては職員が働く事務所だった場所をフリースペース「はまどま」(横浜の土間という意味)として利用しやすい空間に変え、会員・会友の居場所であり、やりたいことを実践できる実験場にしました。
さらに、会員制度を見直し、それまでは少数精鋭をよしとして、総会の議決権を有する運営会員を中心に運営していたものを、議決権のない一般会員が運営に参加できる場や機会を増やしました。
そして、受託事業に追われて自主事業を展開できていなかったことを反省し、会員の提案により気軽に自主事業を実施できるようにプロジェクト制を採用しました。
ただし、事務局職員がいないので、プロジェクトリーダーが中心となって、原則的には独立採算制のもとで事業の企画・運営を自律的に取り仕切るように求めました。
その際、プロジェクトが際限なく広がると、NORAの目的とかけ離れていく可能性が生じるので、NORAの事業を5つ(ヤマ、ノラ、ムラ、ハレ、イキモノ)に整理し、この中に各プロジェクトを位置づけるようにしました。
くわえて、理事やプロジェクトリーダーによって構成される会議体を設置し、情報を共有しつつ運営に関して毎月協議することにしました。

このような改革を経て、2008年以降のNORAは大きく変わりました。
たとえば、設立後5年間の会計規模は約2,000万円でしたが、最近5年間は約500万円と小さくなりました。
一方、運営に参加できる会員数は、15名から約100名に増えました。
このほかに、リピーターとして活動を支えてくださる100名強の非会員がいます。
また、改革前は、自分の所属団体をNORAと名乗る人は常勤職員数名くらいでしたが、今では15人程度がNORAの肩書きで活動しています。
そうした会員は、ウェブサイトの更新やメールマガジンの編集・発行などの情報発信も適当に分担しています。
さらに、月に数人~十数人が集まる小さなプロジェクトを平均して2日に1回以上を実施し、年間1,500人程度の会員・会友が参加する場をつくり出しています。

こうした組織運営は、NORAが守りたい里山をモデルとしています。
理想的な里山では、身近な地域の資源が持続的に活用され、豊かな生物多様性が保全されてきました。
だから、NORAでは持続性と多様性を大事にしているのです。
ここでの持続性とは、日常的な活動を継続させつつ、楽しく無理のない範囲で活動を展開すること。
規模の拡大を目ざすのではなく、活動それ自体を充実させることです。
この価値観を共有するため、組織改革の際にキャッチフレーズを「里山でシゴトする!」から「里山とかかわる暮らしを」に変更しました。
一方、多様性とは、さまざまなメンバーの知恵や技を生かし、個人の意欲を大切にしながら、互いに互いを生かし合う関係をつくること。
一人ひとりが主体的に関わることで、自分の成長を感じられることを優先しています。

このようにNORAは、上意下達で「選択と集中」に重きを置くやり方とは異なる組織マネジメントを志向しています。
仲間を信頼し、その自主性を尊重し、自律的な活動を促すこと。
組織のための個人ではなく、個人のための組織であることをベースに運営するよう心がけています。

(松村正治)

雨の日も里山三昧