01月17日 (金)|「2020年代の環境NPOの仕事ゼミ」(全2回)レポート
「まちの近くで里山をいかすシゴトづくりプロジェクト」として、12/23(月)と1/17(金)に2回連続でゼミナール形式の勉強会「2020年代の環境NPOの仕事ゼミ」を開催しました。
<第1回>バックオフィス支援の最前線
12/23(月)18:30~20:30 文京シビックセンター
松浦亮輔さん(NPO法人NPOサポートセンター)
鹿住貴之さん(NPO法人JUON NETWORK)
後藤洋一さん(NPO法人樹木・環境ネットワーク協会)
宮本至さん(NPO法人森づくりフォーラム)
参加者:14名(ゲスト4名+コーディネーター1名含む)
<第2回>連携・グループ化と事業承継の可能性
1/17(金)18:30~20:30 地球環境パートナーシッププラザ
松本祐一さん(NPO法人NPOサポートセンター/多摩大学)
宮本至さん(NPO法人森づくりフォーラム)
後藤洋一さん(NPO法人樹木・環境ネットワーク協会)
参加者:10名(ゲスト3名+コーディネーター1名含む)
第1回:バックオフィス支援の最前線
まず、松浦さんから、おもにNPOサポートセンターが取り組んでいるバックオフィス支援のサービスについて説明がありました。
NPOは本来取り組むべき活動と公共的な組織として必要なバックオフィス(経理・情報管理など)との間にジレンマを抱えるものであり、この課題を解消するためには、団体内部の取り組み(ルール化、役割分担など)のほか、人の雇用や人材派遣サービスもあるが、その1つとしてアウトソーシングがあること。その上で、NPOサポートセンターとしては、このアウトソーシングを「B-SAPO」というかたちでサポートしていると、ひとまず整理できます
NPO側からすると、どの事務作業をアウトソーシングするのか考えることになりますが、その際、その作業が団体にとってコア-ノンコアという軸のどこにあるのか、さらに、業務量が多いのか、パターン化しやすいのかといった観点から検討することが大事になります。しかし、NPO側が自力でこの検討を適切にできるとは限りません。NPOサポートセンターとしては、事務代行サービスを引き受けるという考えではなく、本来注力すべき業務に集中できるように支援することを目的として、ヒアリングに時間をかけているとのことです。
松浦さんからの話題提供の後、鹿住さんからは、データベース「FileMaker」、寄附関係では「TechSoup」「GiveOne」「Gooddoo」「つながる募金」(ソフトバンク)、ネット決済「Robot Payment」などについて、それぞれの使い方や使い勝手について紹介がありました。後藤さんからは、ダンクソフトに相談して、現在取り組んでいるテレワークの導入について紹介がありました。宮本さんからは、「G-Suite」「Trello」の使い勝手について、参加者からは、「salesforce」「freee」「TeamSpirit」についての話題提供もありました。
バックオフィス支援については、適当なクラウドサービスを使うことによって効率化を図ることができるようになっています。しかし一方で、団体の規模が大きくなっていけば、バックオフィス業務を内製化するよりもアウトソーシングすることで一段と効率化が進み、本来取り組むべき業務に集中できる可能性もあります。そのためには、団体を大きくするという方向のほかに、中小の団体が連携・グループ化を図るという方向もあります。後者の方向へと向かうには、多様なクラウドサービスをバラバラに使用するのではなく、それぞれの長所・短所を比較検討した上でバックオフィス業務の統一化を進めていくという取り組みが必要になるかもしれません。
第1回目の議論は、このあたりで終わりました。
第2回:連携・グループ化と事業承継の可能性
松本さんからは、「協創のためのモデルチェンジに向けて」と題して、企業のM&A・事業承継と比較しながら、NPOの場合についてどう考えるべきかと話題提供がありました。
連携・グループ化や事業承継は、手段であって目的ではありません。それでは、何を守るのか、何を引き継ぐのか。M&Aでは企業の持つ資源について値段を付ける(金銭的に評価する)が、NPOの場合はその資源をどのように評価すべきなのかという論点が出されました。もちろん、金銭的な評価に馴染まないものがありますが、何が資源であり、それをどう評価するかと考えることは大事なことです。その上で、モデルチェンジに向かうには、現実をありのまま受け入れるとともに未来のシナリオを描き、メンタルモデル(メンバーの意識変革)とビジネスモデル(わかりやすく言えば、儲け方)の変化が必要になります。松本さんがご専門であるソーシャルマーケティングの観点からすると、社会的・環境的な価値と顧客が享受するビジネス的な価値とを理念的に分けて考え、足りない価値を自覚し、これらの価値の相互作用を促すことの重要性も指摘されました。
松本さんからの話題提供を受けて、後藤さんからは、一般社団法人スマートとして、バックオフィス支援や人材の共有を含む、コンパクトスマートオフィスの提案事業を進めていることが紹介されました。宮本さんからは、森づくり活動団体のネットワークを生かした保険事業、初心者向けの体験事業、寄附キャンペーンについて、事例紹介がありました。
ディスカッションでは、参加者と接触する機会の多い環境NPOのマーケティング機能を強化すること、自団体の状態を定期的に外部診断してもらうサービス、異分野NPO向けの体験ツアー、協同組合の設立などが提案され、第3回仕事ゼミの開催を約束して終了しました。
2回の勉強会を通して、今後はメンバーをある程度固定化して、より具体的に話し合いを進めながら、何か見える形へと落とし込めるようにしたいと思うようになりました。