第2回 外来生物

2009.7.31
イキモノのにぎわい

たまに、つじつまが合わない会話を耳にすることがあります。
例えば「とくほ」。一般的には「特定保健用食品」を想像しますが、
人によっては国立公園の「特別保護地区」が思い浮かぶようです。
この「外来生物(※)」も最近は耳慣れてきましたが、
はじめの頃は、病院の窓口のような名称だなと思いました。

外来生物はもともとそこに生息している生物(在来種)や生態系だけでなく、
人間生活にも様々な影響を及ぼすことから大きな問題になっています。

先月、沖縄・奄美にしか生息していなかったマングースが
鹿児島市内で確認されたという内地上陸の報道があり、関係者を驚かせました。
マングースはハブを駆除するために人為的に持ち込まれましたが、
希少種のヤンバルクイナやアマミノクロウサギをはじめ、
多くの生物を捕食することから、島固有の生態系に大きな被害をもたらしています。

外来生物は遠くの話ではなく、私たちの身近なところにも存在します。
最近、横浜市南区にあるNORAの拠点の側で、
アライグマやハクビシンが目撃されました。

アライグマやハクビシンは全国に分布が拡大しています。
神奈川県内では平成10年頃から野生化したアライグマによる農作物への
食害や人家侵入などの生活被害が発生しはじめ、
有害鳥獣としての捕獲数が1,224頭(平成19年度)にのぼり、
農作物被害額はここ数年、毎年約1千万円前後にもなります。

神奈川県では「特定外来生物による生態系等に係わる被害の防止に関する
法律(=外来生物法)」に基づき、「アライグマ防除実施計画」を策定し、
計画的な捕獲(のち殺処分)を打ち出しています。

問題を起こしているアライグマは、北米や中南米が原産地で、
ペットとして日本に輸入され飼育されていたものが、
逃げたり捨てられたりして野生化したものです。
また、子供たちが目の色を変えて買う外国産クワガタは、
年間100万匹以上の個体が東南アジア等から輸入されており、
野外に逃げ出したり、ペット用の売れ残りが捨てられてしまう場合があり、
日本産クワガタムシに対する影響が心配されています。

これらの問題の根本的な原因は、私たちの様々な欲求にあります。
外来生物を排除すれば問題が解決するものではありません。
それらが野に放たれたら、在来種や生態系にどのような影響を与え、
めぐりめぐって私たちの生活にどう関わってくるのか、
いま考えることが大切なのではないでしょうか。

(tanji)

※「外来生物」とは2004年6月に外来生物法が公布され、
この法のなかで使用されている言葉で、”海外から日本に導入されることにより
その本来の生息地又は生育地の外に存することとなる生物”と定義されています。
ほとんど同じ様に使用される言葉として「移入種」と「外来種」もありますが、
これはほぼ同義語で、「移入種」は人為に限らず何らかの理由で
対象とする地域や個体群の中に外部から入り込んだ個体の種を指し、
「外来種」は海外から日本国内に持ち込まれた種に対して多く使われています。