第6回 田んぼの佃煮

2009.11.30
イキモノのにぎわい

貴重なタンパク摂取のひとつとして、昆虫食は広く知られています。
最近では珍味として扱われることが多くなりましたが、
戦後しばらくまでは、重要な栄養素として食べられていました。
今でも常食やご馳走として食べる地域があります。

特に長野県の郷土食が有名ですが、昆虫のなかでもイナゴは
広く食べられ、農閑期における保存食とされてきました。
江戸時代の書物『本朝食鑑』にも記載されており、
昔から食べられていたことがわかります。

小学生の頃、1年生から6年生で班を構成し、6年生をリーダーに
街のゴミ拾いをするなど、レクリエーション活動の時間があり、
その活動のひとつに「イナゴ捕り」がありました。
ベルマークを集めて学校の備品を買うという活動がありますが、
それと似た様な意味合いのものです。

晩夏から初秋あたりの、奥羽連山がすっきり見渡せるお天気のいい日、
小学校の前に広がる田んぼに全校生徒で繰り出します。
班ごとに分かれ、各自で準備してきたイナゴを入れる専用の袋
(手ぬぐいを半分に折り袋状に縫い、袋の口に竹やアルミホイルの芯
のように筒状のものを入れ、紐で縛ったもの)にイナゴを入れます。

何キロ捕れたか班対抗で競い合うので、上級生や詳しい子に
種類や捕り方、どの辺りにいるのかポイントを教えてもらいながら、
1等賞をとるためみんな必死で動きまわりました。

袋のなかで飛び跳ねるイナゴの感触や、つかんだ手の中に
フンをされてしまったこと、
近所の農家や通りがかりの大人も手伝ってくれ、イナゴを自分の袋に
入れてもらいとても嬉しかったことを覚えています。
約600人の赤白の運動帽子をかぶった子供たちが、必死になって
イナゴを捕っている姿は微笑ましいのですが、今思えば、田んぼを
所有する農家の協力があってこそできた行事でした。

がんばって全校生徒で集めたイナゴは、その後、給食室の大釜で
グツグツと煮られ、業者に買い取ってもらい、得たお金で
図書室の本を購入していました。

主に食用とされるコバネイナゴやハネナガイナゴを捕っていましたが、
子供なので捕ることが楽しく、トノサマバッタやショウリョウバッタなんかも
袋に入れてしまっていたと思いますので、
買取価格はそれほど高くなかったのでは・・・と推測されます。

このイナゴ捕り、普通に行われている学校行事と思っていましたが、
同じ市内でも実施していない小学校が多くありました。
地域の自然や食文化、生き物の生態を知るきっかけとして
とても貴重な体験だったのと思います。

一時期、農薬の影響でイナゴが姿を消したこともありましたが、
最近はまた発生する様になり、
今年もイナゴを探す人があちらこちらで見られました。

先月、親戚から今年も豊作だったと、新米とイナゴの佃煮をもらいました。
一冬、充分に楽しめそうです。

(Tanji)