街なかの炭焼き事情

2009.3.12
ひねもす里山/NORA雑感

今日は、お昼の会議の後、職場に隣接する一本杉公園を歩きました。この公園には、本格的な炭焼きが設置されており、公園管理で伐採される樹木が集められ、冬の間に2-3回、一本杉炭やき倶楽部の人たちによって焼かれます。
これが、一本杉公園にある炭やき窯です。
ippon-sumigama.jpg
窯の横に、次のような説明書きがあります。
ippon-kamazu.jpg

形  式:岩手式標準窯(平成窯)
炭化時間:約90時間(3日と18時間)
製炭量:15俵(225kg)程度
窯内寸:窯壁 高さ1.0m(窯天井高1.3m)
窯床 横幅1.8m縦幅2.65m(窯床面積約3.2m2)
・・・(中略)・・・
製作指導:杉浦銀治+多摩炭やきの会
完 成:平成10年2月13日
初 窯:平成10年2月14日(火入れ)

ここにも、国内外で炭焼き技術の指導をされている「銀じい」こと、杉浦銀治さんの足跡が残っています。最近、杉浦さんは、農文協の「つくってあそぼう」シリーズに火と炭の絵本 炭焼き編』a>火と炭の絵本 火おこし編』を書くなど、80歳を越えてなお、子どもから大人まで広く炭の普及に努めていらっしゃいます。

ところで、一本杉公園は多摩ニュータウンのはずれに位置するとはいえ、近隣に民家があります。こういう街のなかでは、炭焼きにともなう臭いに対して苦情が来ることが多いのです。この公園でも、過去に何度か苦情が寄せられたと聞きます。そこで、一本杉炭やき倶楽部では、煙突を異常なほど長く伸ばして、煙を林の中へと誘導しています。
ippon-chimney.jpg
林に入ると、煙突の先に次のような装置が付けられていました。どうやら水を使って煙をどうにかしているようです。このように、街の中で炭焼きをおこなう場合は、近隣から苦情が寄せられないように、かなり苦労しないといけないのです。都筑中央公園(横浜市都筑区)では、排煙をガスバーナーで2次燃焼させることで煙を無くしていました(→詳細はこちらのレポートへ)。煙の出ない炭焼きは、全然、炭焼きらしくなく、炭化装置と言った方が適切だと思いましたが、そこまでして炭を焼きたい市民のパワーには脱帽した記憶があります。
ippon-nosmoke.jpg
少し昔の多摩丘陵では、炭焼きが盛んだったため、この辺りの里山にある公園には、たいてい昔をしのばせる炭焼き窯が設置されています。しかし、臭いに対する苦情が近隣から寄せられるので、現在では昔のような炭焼きができなくなっています。だから、いろいろ工夫しながらやっているのですが、むしろ、炭を焼く日は、近隣住民が協力して洗濯物を外へ干さないような、炭焼きの臭いを許容するコミュニティをつくる方が楽しいと思います。

(M_M)

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