SMPシンポジウム「横浜の谷戸の生物多様性保全を考える」

2010.2.6
ひねもす里山/NORA雑感

SMPとは瀬上の森パートナーシップの略称で、2005年の設立以降、毎年、骨のあるシンポジウムを開催しています。今年度のテーマは、「横浜の谷戸の生物多様性保全を考える」。昨年3月に横浜市生物多様性保全再生指針が制定されたことや、今年10月に名古屋でCOP10が開催されることを反映したテーマ設定でした。
会場となった上郷森の家までは自宅から2時間近くかかります。それでも、出席しようと思ったのは、パネルディスカッションでNORAの吉武さんがモデレータを務めることも理由の1つでしたが、神奈川大学(元平塚市博物館)の浜口哲一さんが講演されることが決めてでした。まずは、浜口さんによる基調講演「谷戸の自然と生物多様性」で、いくつか面白く思った点をまとめておきます。
普通、生物多様性は、種、遺伝子、生態系の3つのレベルで捉えますが、これまで私は、このレベルを水準の異なるものとして別々に把握していました。しかし、浜口さんから、(1) 遺伝子が不安定な(変わりやすい)一面を持っていたこと、(2) 地球上の環境が同じ条件ではなかった(不均質だった)ことという、遺伝子と生態系の多様性があってはじめて種が多様になったという進化の歴史を説明され、だから生物多様性は大事なのだと教えてくださったので、これらを連関させて捉えることの重要性がようやくわかりました。やはり、十分な深さで概念を理解されている方は、説明のポイントをよく押さえているものです。私は、知っているようでいて、勘所を外していました。
また、生物多様性は、市井の研究者、アマチュアなどが集めたデータによって、その危機がわかってきたところが大きく、だからこそ市民の役割が大きいという説明も、とても納得できるものでした。それと最後に、横浜市内の豊かな環境は谷戸にあり、横浜の生物多様性保全上、谷戸の保全が最重要の課題であるというメッセージをいただき、恩田の谷戸を守り生かさないといけないという気持ちを新たにしました。
基調講演の後に、パネルディスカッション「円海山、そして瀬上の谷戸の生物多様性保全のために市民ができること」がありました。パネリストは、浜口さんのほか、渡辺初恵さん(横浜自然観察の森レンジャー)、山上東平さん(栄さとやまもりの会)、中塚隆雄さん(瀬上の森パートナーシップ)、そしてモデレータが吉武さん(よこはま里山研究所)という面々でした。この中で驚いたのは、中塚さんのプレゼンテーションの質の高さでした。円海山周辺の里山生態系について、市民、地権者、行政がどう協働しながら保全すべきかを考え、調査+普及+管理を一体的に順応的管理する必要性を訴えられました。また、中塚さんは、そうした正論を述べるばかりでなく、現場の実態を踏まえて柔軟に動いていこうとする懐の深さも感じました。率直に、素敵なキーパーソンだと感じました。
もう1つ、このディスカッションで有意義だったのは、生物多様性は保全すべき対象なのかという浜口さんの問いかけでした。この問いに対して浜口さん自身は、自然に対して働きかける「ものさし」として生物多様性を持つことは大事だろうというスタンスでした。これは、生物多様性という厄介な概念を捉えるときに、良い切り口になるような気がします。

(M_M)

ひねもす里山/NORA雑感