白保の子どもたちとの約束
2009.12.20ひねもす里山/NORA雑感
石垣島白保集落の前に拡がるサンゴ礁は、
アオサンゴ群落をはじめとするサンゴ群集や海草の群落が多く存在し、
日本有数の浅海域生態系を有していると言われています。
1979年、ここに新空港を建設する計画が公表され、
地元住民を中心とした反対運動が起こると、
白保サンゴ礁の貴重性が明らかになり、全国的、国際的に注目されました。
この白保集落に、サンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」があります。
これは、白保のサンゴ礁を保全するために、
WWFジャパンが2000年に設立した施設です。
ここで、毎月第3日曜日に開催されるのが白保日曜市で、
白保のみなさんが地元の自然の恵みを生かした
民具・雑貨、郷土料理、地場野菜などを販売します。
今回、初めてこの市へ行ってみたのですが、
こぢんまりと丁寧に作り上げている雰囲気に好感を持ちました。
ただ見学するだけではつまらないので、
市場では見かけたことがない白保産の「もちきび」「たかきび」を買いました。
「しらほサンゴ村」を後にして、白保の海を見るために堤防に上がると、
数百メートル先の海岸で、ジャージを着た中高生と思われる生徒たちが
漂着ごみを拾っていました。
白保魚湧く海保全協議会の主催による、
白保海岸のビーチクリーンアップが実施されていたのです。
どんな風にしてやっているのか興味があったので、
海岸へ下りてゆっくりと生徒たちに近づき始めた矢先、
「おじさ~ん」と声を掛けられました。
振り向けば、「しらほサンゴ村」で資料を読んでいたときに、
後ろから目隠しをしてきた小学生の3人組でした。
どうやら、私は彼らの標的になってしまったようです。
何をしているのかと尋ねると、
質問には答えずに、ウツボの子どもを見せてあげるよと言うので、
子どもたちの後を付いていくことにしました。
男の子2人と女の子1人が、
潮だまりを見つけては、岩陰に潜んでいる生き物を探します。
何種類かカニを見つけることはできましたが、
30分ほど探しても、ウツボの子どもは出てきません。
この調子でいったら、きっと見つかるまで探し続けるだろうと思い、
次のバスがやって来る時刻が気になってきたので、
「時間だから、そろそろ帰るよ」と伝えました。
すると、女の子は「もっと遊ぼ~」と引き留めるのに対し、
男の子はぷいっと手のひらを返したように
「じゃーな、ジジー」と憎たらしく返答します。
私も笑いながら、男の子に向かって「あばよ、くそガキ」と言って、
子どもたちに向かって手を振りながら海岸を後にしました。
近くのバス停に向かって集落の中を30秒ほど歩いていると、
また背後から「おじさ~ん」と声がします。
立ち止まって振り返ると、先ほどの子どもたちが走って近寄ってきて、
唐突に私に向かって「目を閉じて」と言います。
大人しく目をつぶっていると、
その間に子どもたちは、私の手に何かを握らせました。
「もういい?」「いいよ」と目を開けると、
それはプラスチック製のキラキラ光る飾り物でした。
子どもたちがそれぞれ持っていたそれを、1つずつ私にくれたのです。
嬉しかったけれど、彼らにとっては大事な宝物なのだろうと思い、
「ありがとう。でも、大事なものだから返すよ」と言うと、
年上の男の子は「遊んでくれたお礼だから」と言って受け取りません。
ここで、もらったものを無理に返すのは、
かえって子どもたちの好意に対して悪いと思い、
「じゃあ、もらっておくね」と言って、素直に受け取りました。
そして、「バスに遅れるから」と、
また何度も手を振って子どもたちと別れ、バス停へと急ぎました。
別れ際、女の子から「私たちのことを忘れないでね」と言われたので、
きちんと覚えておこうと子どもたち3人の名前を尋ねました。
次に白保を訪ねるのはいつになるかわかりませんが、
そのときに彼らを訪ねてみようと思います。
(M_M)