恩田の谷戸ファンクラブ

2015.1.3

よこはま里山レンジャーズの受入団体の1つである
恩田の谷戸ファンクラブ(以下、OYFC)を紹介します。

OYFCは、恩田の谷戸(横浜市青葉区)を次世代に引き継ぐために
1991年から活動を続けている市民団体です。
恩田の谷戸は公道以外がすべて民有地であり、農家が生業を営む場です。
このため、谷戸の保存を声高に訴えるのではなく、「農家の応援団」を自認して、
谷戸を守ってきた農家を支えようと努めてきました。
畑や田んぼにかかわるときには感謝の気持ちを伝え、
盆暮れのあいさつも忘れないようにしています。
農家が農産物の直売所を設置するのをお手伝いしたこともあります。
こうした活動は、次第に農家の理解や信頼を得られるようになっていきました。
それでも、恩田の谷戸は数回に及ぶ農地造成で
谷底部が埋め立てられ、多様な生き物を育む谷戸田が減少しました。

OYFCが活動を開始してから20年近くが経過しました。
農家との交流の中で特筆すべきは、「恩田の谷戸・野菜券」の発行です。
OYFCでは、谷戸の保全活動に参加した人に対して、
谷戸にある直売所だけで通用する一種の地域通貨を配布しています。
保全活動に参加すると、谷戸の野菜を食べられるという地域循環の仕組みです。

OYFCは、これまでの保全活動が高く評価され、
2004年に「日本の里地里山30」に選定されました。
しかしながら、谷戸の造成と周囲の宅地開発は進み、開発圧は高いままです。
2008年には、周囲の景観にそぐわない墓地が谷頂部に建設され、
さらに、墓地開発は拡大する可能性もはらんでいます。
恩田の谷戸は横浜市の総合計画で「緑の7大拠点」の1つに
位置づけられてはいますが、法的には保全される保証はありません。
この地域の豊かな生物多様性や固有の歴史文化を守り育ててきた
恩田の谷戸を次代の子ども達に引き継ぐため、
将来にわたって保全、復元する必要があります。
OYFCによる活動の歴史が生かされることを願ってやみません。

(松村正治・藤田廣子・福富洋一郎, 2011,「生物多様性を谷戸が守る」
自然環境復元協会編『写真で見る自然環境再生』オーム社: 66-71.より)

◎詳細はこちら↓
http://www.oyfc.sakura.ne.jp/