「里山ガーデン」はこのままでいいの?~これまでの経緯と問題点を整理しました

2018.8.1

横浜市は、「里山ガーデン」を含む横浜動物の森公園未整備区域基本計画(案)について(←click)、6月25日(月)から7月25日(水)までパブリックコメントをおこないました。
NORAは、この土地の未来について、さまざまな方々に関心を抱いていただきたいと思い、以下のとおり、これまでの経緯を整理するとともに、この計画の問題点を示すことにしました。

「里山ガーデン」を問う

「植物公園予定地パブコメでてますよ。都市緑化フェアの会場だって」
2015年2月、全国都市緑化よこはまフェア基本構想のパブリックコメントが実施されました。その概要版には、ざっくりとした利用イメージしか書かれてなく、花畑ゾーン(のちの大花壇)、生物多様性ゾーン、新緑の里山、花の里山、花と緑のライフスタイルゾーン、といった名称を見て、ほぼ現状維持なのだろうとしか考えていませんでした。
しかし、4か月後にアップされた都市緑化フェア基本計画書を見て愕然としました。長い谷戸を埋め立てて花絨毯とし、森の中にも花卉を植え込み、いたるところに植栽を施すという内容でした。もともと希少な植物を避難させた場所だけ生物多様性ゾーンとし、上流部1haの山を削って広場を作る、という内容に、「これまでのみどりアップ施策とは何だったのか?」と疑念を抱くほどだったのです。
郊外部の緑を守り、緑被率を少しでも維持・回復できるように「みどり税」が導入されたはず。その税金を使って、緑の量だけではなく質を向上する取り組みもすすめていたはず。実際、市民の森や樹林地のある公園では、生物多様性保全の考え方を共有し、市民協働の管理運営があちこちですすめられていました。
また、この「植物公園予定地」は当初計画から30年もの間「塩漬け状態」で、途中では基本構想案が市民参加型で作成されたことを覚えていましたから、「あの構想はどうなった?」との思いがありました。「30年間の塩漬け状態」の結果、生きものたちにとってオアシスとなり、多くの種が眠る場所となっていたのです。拓く方法を間違えれば、熟成どころか「腐敗・壊滅」となってしまうので、少しでも将来にわたってつなげられるよう声をあげるべき、と判断しました。
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2015年7月 夏の風が抜ける谷戸

「里山ガーデン」をめぐる経緯

<2015年>
7月:意見書を提出
8月:緑化フェア担当及び公園整備課との意見交換会(1)
<横浜市の回答>
・植物公園の計画は何も決まっていない。
・谷戸の埋め立てはせず、湿地に適した植物を植えるようにする。
・既存の園路を管理用工事車両がすれ違えるように(3m弱から)6m幅にする。
→工事車両なら退避場をつくればよいだけ。その後、10月になって「シャトルバス」を通す計画だったことが判明。
9月:工事着工。園路沿いのサワラ並木の伐採、エントランス側の山の開発(約1ha)、森の中にサクラやサツキが密植される。
12月:緑化フェア担当及び公園整備課との意見交換会(2)
・1回目の意見交換会とほぼ内容は変わらず。市民や植生専門家等も交えた会議の設置希望を伝えたが、開催されなかった。
・施工については、行政内部で再検討が行われたらしく、ところどころ微修正された。

<2017年>
3月25日~6月4日(72日間):都市緑化よこはまフェア里山ガーデン開園。337,600人の来訪者。
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5月21日:NORA、意見交換会「里山ガーデンの過去と未来~動物の森公園を考える」(←click)を開催、さまざまな意見をいただいた。
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※左の意見をまとめたのが右図 右の画像をクリックすると拡大します

8月23日:林市長が定例記者会見で「里山ガーデンの継続」「ガーデンシティ横浜」を打ち出した。
市長定例会会見「里山ガーデン秋の大花壇公開と第33回全国都市緑化よこはまフェアの結果について」(←click)
9月22日~10月22日(31日間):秋の里山ガーデン開園(入口エリアと大花壇のみ)、開園時間=9:30~16:00。

<2018年>
3月24日~5月6日(44日間):春の里山ガーデン開園(入口エリアと大花壇のみ)、開園時間=9:30~ 16:30。
4月:みどりアップ推進課に「ガーデンシティ推進担当」設置。
5月3日:NORA、「里山ガーデンへ「里山」を探しに行こう!」を開催。
‪#‎里山ガーデンで里山をさがしてみた‬(←click)
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私たちが考える「里山ガーデン」基本構想

これまでの既存資料を調べ、3度の里山ガーデン開催を経て、私たちはこの場所の基本構想を作成しました。
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↑この画像をクリックすると拡大します

この計画に関して考えたいこと

(1)「横浜みどりアップ計画」では

「地域特性に応じた緑の保全・創出・維持管理の充実により緑の質を高めます」とあり、生物多様性の向上など、緑の質を充実させることが必要です、と謳っています。樹林地や湿地、草地のある公園や市民の森では、保全管理計画を策定し、生物多様性を高めるための考え方や技術の普及が、官民協働により行われています。

(2)生物多様性横浜行動計画(ヨコハマbプラン)では

重点施策その1)「bプロモーション」において「谷戸の保全をすすめ、谷戸を訪れ楽しむライフスタイルを提案する」と、谷戸の重要性を述べています。
重点施策その2)「生きものにぎわう環境づくり」では、緑の10大拠点について適切な維持管理により生物多様性を高める必要がある、とも述べています。この谷戸は、10大拠点の中の、さらに2大拠点である北の森の一部です。
この谷戸では、希少な動植物がかろうじて残されています。
※横浜市は、環境管理計画・生物多様性横浜行動計画の改定素案についてパブリックコメント(←click)が行われています(2018年7月31日まで)が、「横浜みどりアップ計画」「生物多様性横浜行動計画」はその中に盛り込まれているので、考え方は引き継がれるものと思います。

(3)里山ガーデンエリアは「ノアの方舟」では?

里山ガーデンの「生物多様性ゾーン」は、ズーラシアの開発に伴い、絶滅危惧種の貴重な植物を移植した場所です。狭いエリアのため、将来的には拡大し、シードバンクの場として確保する必要もあるのではないか、と思います。ズーラシアに併設する横浜市繁殖センターでは、地元(北の森地区)のカエル類の系統保存に乗り出している、と聞いています。
谷戸全体を改変すると、周囲の湿度も低くなり、樹林地全体の乾燥化がすすむでしょう。多くの生きものが激減していきます。横浜市内だけではなく、県内であっても、水辺や湿地環境が危機的状況なのです。
横浜郊外部の里山的自然景観は、かつての「線引き」の効果でもあり、370万人が住む大都市にもかかわらず、素晴らしい環境が残されています。臨海部の人為的な美しさ・海と対比し、郊外部の源流域・里山環境とのコントラストこそが、横浜の持つ大きな魅力の一つである、と考えます。
谷戸については、田んぼとして機能していた頃に近い環境を取り戻し、まるごと活用展示とすることが、将来、ズーラシアにとって、横浜市にとって、誇れる取り組みとなり、素晴らしいエリアになるのでは、と強く感じます。かつて、この一帯は国蝶オオムラサキの多産地でしたが、やはり開発によって市内では絶滅に追い込まれました(現在、寺家町の一部で見られます)。オオムラサキやゲンジボタル、ヘイケボタルなどを象徴として、復元にむけての技術を結集・蓄積し、そのプロセスを見せていくことが大切なのでは、と感じています。

(4)横浜市全体の森づくりの課題解決のためにも

みどりアップ計画により、公有地化した樹林地が増え、それに伴い樹林地の適切な管理をすすめていく量もふえています。しかし、「森づくり」という考え方、技術を持っている地元企業は非常に少ないようで、技術の伝承、レベルアップが喫緊の課題です。また、身近な地域の森を手入れするボランティア組織についても高齢化や安全対策、技術伝承等の課題があります。
市内全域の森づくり・里山再生の研修拠点として、子どもたちの環境教育拠点として、それらの方針を打ち出していただきたいと考えています。

(5)市民参加による公園づくりを

パブリックコメントでは、基本計画(案)の中身について意見を求められましたが、この間のプロセスについては疑問に感じます。検証すべきと考えています。
このエリアに公園を整備する構想は30年以上前から存在し、市民参加によって基本構想案もつくってきた経緯があります。当時、この公園づくりに参加し、その後の行方を見守っていた市民からすると、昨年の都市緑化よこはまフェア開催に伴う里山ガーデン開園は、これまでのプロセスがないがしろにされたように映ります。
しかし、すでに事業が実施され、進められたことを元に戻すことはほとんどできません。
ですから、今後の実施計画・設計、施工・管理運営については、ぜひ市民参加を促して議論の場を広げ、さまざまな既存データも公開しながら、市民協働によって進めて欲しいと願っています。
それが、舞岡公園・長屋門公園・新治里山公園など、全国の公園づくりをリードしてきた「横浜らしい公園づくり」になると思います。

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基本計画(案)リーフレット(↑この画像をクリックすると拡大します