[コラム]イキモノのにぎわい
最終回 いのち
信じられない事だが、このタイミングで新しい命を授かった。
交際期間を含め18年間、これまでそんな兆しはまったくなかったのに。
命が芽生えたのはどうも4月中旬あたりらしい。
この現象に大震災が影響しているのでは、と思えてならない。
東北道が一般車両の通行止め解除になった翌25日に郷里の福島へ。
倒壊は免れたものの瓦や壁が落ち、地盤沈下した実家や
旦那の実家の片付け、半壊した親戚宅の片付けをし、
4月に入りガソリン事情も落ち着いたため、沿岸部でボランティアに参加。
そこで目の当たりにした「集落の壊滅」。
福島への帰省を繰り返す合間、いまの職場で漁民を支援する
プロジェクトの担当になり、宮城県気仙沼市や南三陸町などへ行き、
ここでも目にした沿岸部の光景。
報道で「壊滅」という言葉を聞いたとき、よく飲み込めなかったが、
その言葉の意味を理解した。
3月11日には海上自衛隊の旦那は東北へ行き、帰ってきてから
何も語らないが、恐らく壮絶な状況を目の当たりにしたのだろう。
そんななかで、きっといままで眠っていた双方の細胞が何かを感知し、
「子孫を残す」という役目に目覚めたのではないかと思えてならない。
いま私の故郷・福島が東北電力福島第一原発の事故にさらされ、
大変な状況に陥っている。
私がこのような身体になってからか、「福島には帰らない方がいい」
とメールや言葉で伝えてくる人が少なからずいる。
それを一番分かっているのは福島人だ。
いつもそのジレンマのなかで悩み暮らしている。
そんななかに追い討ちをかける言葉。
遺族に対し放った慰めの言葉が、逆に遺族を傷つけるそれと似ている。
「福島に行かないほうがいい」=「福島から来るものは汚れている」
人の心の裏に潜む、差別の心が無意識に人間を動かしてしまう。
転院先、転校先、旅行先、修学旅行先などでの嫌がらせは収まらない。
先月、実家の近所の農家の方が、自ら命を絶たれた。
報道されるものから、報道されないものまで、様々な悲しい事件が今も続く。
そんななかでも踏ん張り、頑張っている人たちが沢山いる。
安心・安全な農産物を出荷するためにはどうすべきか苦悩する農家、
大地にばらまかれたものをどうにか除染しようと試みる人々、
目に見えない恐怖と戦いながらも子育てに奮闘する母親・父親たち・・・。
福島に住むいとこのうち3人に1月、4月、5月にそれぞれ新生児が誕生した。
みな福島で育てるという。
それを親のエゴだとか、親の身勝手な判断や都合で子どもの将来を
潰すのかなどと、その親を批判するのはたやすい。
しかし責めるべきところは、そこなのだろうか?
福島に残る人々の事情は百人百様だ。
ペースメーカーを入れ医者に無理するな、と言われながらも祖母は
今も畑を耕し続けている。
「おれらはいいが、孫とその腹の子っこさ、食わせてやれねえのが、なさげねえ」
そう言いながらも、畑を耕せるその時その時に感謝し、福島の大地に寄り添う祖母。
離乳食には祖母の野菜を食べさせてあげたい、と願う。
(Tanji)
※これまで「イキモノたちのにぎわい」をお読みいただいてありがとうございました。
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