[コラム] いしだのおじさんの田園都市生活
第38回 雨の中で
雨の中の田植えは乙なものだ。
何度か経験した。
泥に手足を突っ込んで、田に這い蹲り、
ふと前に目をやると、
水面に雨粒が波紋を広げている。
苗代から広い田んぼに移された早苗たちも、
陽光よりも天水を浴びることを歓ぶように見える。
そう思うとわが身が濡れることも、
むしろ気持ちよい。
身体が水と泥と稲と一体化する感覚になる。
田植え日和とは、
初夏の日差しがふりそそぐことではなく、
静かに雨の降る空模様だ、
と、私は思う。
早苗たちが泥の中に根付いたころ、
そして、また分ケツのころ・・・
草取りの季節。
これもまた照りつける太陽よりはそぼ降る雨がよい。
天水が地に浸み込むとき、
田んぼと私たちは溶け合うことができる。
しかし、
稲刈りは、やはり秋晴れこそ、だ。
秋晴れが数日間続いて、
できればさわやかに秋風など吹いて、
稲はもちろん、足元がよく乾いていること。
そうすれば、
人間が気持ちよいだけでなく、
稲も、泥も、そして稲刈りの機械さえウレシイ。
秋の陽の光の中で刈られて架け干しにされた稲は、
プチプチという音を聞かせてくれる。
稲刈りを終えて機械の音が止まり、
収穫が架けられて並び、
この音を聞く瞬間がなんともいえない。
しかし、今年のな~に谷っ戸ん田は、
雨中の稲刈りを経験することとなった。
ウィークエンドファーマーの宿命だ。
土方殺すに刃物は要らぬ、雨の3日も降ればよい、
と、言うが・・・
週末耕作者も3週続けて雨に降られてはカナワナイ。
田植えや草取りの時季ならトモカク、
稲刈りの時季ではオテアゲだ。
もちろん、手をあげてもおれず・・・
決行の決断を迷っていると、園主からは、
「先週のほうがまだましだった」
「自分たちで作った物を無駄にするのか」
と、言われ、
決行すれば、時折激しく降る雨に、
「こんな稲刈りはしたことないぞ」
とも、言われ、
でもね、そうは言いながらも面倒を見てくれる園主。
作業は足元手元の悪さと稲束の重さで過酷になり・・・
大事な稲も泥にまみれ、
それでも、
いつくしんで育ててきた、
いや、
育ってくれた稲は愛おしく、
そうやって作物に向き合っているときは、
やはり人と自然が一体化し、
いや、人は自然の一部でしかないことが実感でき・・・
そんな収穫の場面だった。
この収穫とは何だろう。
単に食料を手に入れることではない。
いうなれば、
自然と人との関係性を体感する刹那ではないかと思われる。
翌週は秋晴れのもとで脱穀ができ、
先に刈ってあった収穫物は籾摺りをして、分配される。
そして、片付けを終え秋の日が暮れるころ、
寂寞が襲ってくる。
なぜだらう 稲が米になる 寂しさは
種まき、田植え、草取り、
そやって生命の成長と共にあった日々、
それが終わり、
緑から黄金へとなった田んぼは土色へと戻る。
空の下にいた生命たちは、
これからお腹の中に納まり罪深い人間を養う。
そして、冬・・・
・・・
今回、お題を「市民共同耕作の悩み」として、
前回の続きを書く予定だった。
前回、ながながと芋のことを書いてから、
最後の数行に「ここからが本題です」と、
収穫物を
どうやって「みんなのもの」から「じぶんのもの」にするか?
と、書いた。
共同耕作の「収穫」の分配をめぐる話。
「共同」をどうやって創っていくかという話。
平等、公平、共助・・・
気持ちも論理もストンと落ちる何か
が、なかなか見つからず「悩み」は続いている。
整理をしてみたいのだ、
が・・・
都会に移りフィールドから離れて暮らしている。
ときに、こうしてコラムを書いていると、
田んぼでの身体感覚をことばで手繰り寄せられるときがある。
私にとっては貴重な時間。
それで、どうも・・・
また、話は本題を迂回してしまった。
お天気の話は、週末耕作のもうひとつの大きな悩みではある。
と、いうことで、次回には・・・
(いしだのおじさん)
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