第102回 釜飯仲間・おこげのお話

2017.6.29
釜飯仲間・おこげのお話

=神奈川の農業と食べ物のこと・生産者に寄り添って30年=

産直センターでも、今の野菜市でも、野菜の姿カタチは、いつも気になるところです。そして、長い間に、ふだんは、ほとんど無意識になっているのも事実です。

それは、お客様も同じようで、初めての方の驚きは、月日とともに消えていき、いつか、野菜市での野菜の姿が当たり前になってしまう、それが、いわゆる常連の皆さん、日ごろから支えて下さっている皆さんのように思います。

ところで、まもなく地球人口は73億人・気候変動の影響もあって世界の飢餓、食糧不足が問題となって久しいのに、日本はあいも変わらず、食べ物の6割を輸入にたよっていて良いものでしょうか?

農産物の輸入は、農産物に含まれる水資源と大地の栄養の輸入でもあると言われています。

それなのに、いまだに、世界の貿易交渉では、自動車などの工業製品を世界に有利に販売するかわりに、農産物とその加工品の輸入で、国内農業をどんどん弱くし続けています。現在、ヨーロッパ・EUとの貿易交渉で、チーズの無関税化を日本は求められています。

話は、いきつもどりつ、身近な話です。

神奈川の県土面積の約7%が農地です。その狭い狭い農地がら販売される農業生産額額は、47都道府県の中で例年35位あたりなのです。つまり、狭い農地でしっかり生産しているのが神奈川の農業であり、この中には、養豚・養鶏・酪農・肉牛・花なども含まれ、作物の種類も多様で、バラエティー豊かな姿を思い描くことができます。

そんな神奈川での、野菜類の自給力は、おおむね40%。これは、横浜市民が必要とする野菜は、県内で作ることができる、ということになる数字です。

私は、実はもっともっと神奈川産を県民が利用できるのではないか、と思っています。そのわけは、出荷されずにほとんど廃棄されている農産物がそうとうある、それはいわゆる規格外品が主で、食べるにはなんの問題もないものなのです。収穫されずに畑に残った野菜が、春になると菜の花を咲かせている姿などもその例に入るでしょう。

近ごろ、「食品ロスを減らそう。」「食べ物のムダをなくそう。」という声を見聞きする機会が重なりました。そんな折り、農林水産省が農産物の規格の簡素化をすすめるというニュースに触れました。

私などが扱っている生産者の農産物は、各生産者が手作業で選別するか、あえて収穫したまま、無選別で展示して、お客様に選んでいただいたり、私が主に大きさを選別する程度のものですが、全国レベルでは、大規模な機械化された選果場での話が重要になるのです。規格が細分化されれば、それだけ機械の能力も必要になります。諸々、簡素化し節約した経費を生産者の所得増につなげられないか、ということのようです。

そうしたら、デッサンの勉強をしている女性から、カタチの変わった野菜を描きたい、手に入ったら野菜市に取りに行きたい、と言われました。

「野菜市」の手伝いをしてくれた時に、子どもたちの健康と居場所づくりをすすめる「子ども食堂」(野菜市のお客様や地域の皆さんが運営しています。)のために生産者が用意した規格外作物の、個性的な姿を目にしたのです。

私たちは、カタチなんかこだわらない、と思いながらも、つい整った野菜に手が伸びてしまうことが多いのではと思います。それでも、規格外品、不揃い品が「安く手に入れば」暮らしを楽にしてくれるはずなのですが、こに課題があります。

農産物規格の細分化が進められてきたのは、そのような需要が、利用する側にあったとともに、有利販売を目指す産地間の競争も、より厳しい選別を生産者に要求したり、高度な機械化をすすめることになりました。

一方で、規格の簡素化はよいとして、ムダをなくそうと、規格外品、不揃い品を「安く多量に」出荷していたのでは、生産者は再生産費を得ることが難しくなってしまうのです。つまり、規格外品、不揃い品であっても、規格品に近いか同等の価格で買い支えてもらえる利用者とのつながりが必要なのです。そのためには、新鮮、安全、おいしい農産物、利用者の皆さんが、カタチにこだわらずに買い支えたいと思える農産物をつくることが、生産者には求められています。

さて、くだんのデッサン用の野菜ですが、私は、例えば二股、三股大根や人参、二つが、つながったナスなど、極端な姿の野菜を、あらためて生産者に残してもらって、渡さなければと思っていたのですが、それはそれとして、ふだん皆さんに利用していただいている作物は、ほとんど、「個性的」でありました。つまり、市場規格にはのっとっていない作物が大半でありました。

彼女は「絵の教室に持っていくよ!また来るね!」と明るく爽やかに「個性的な野菜たち」を抱えて帰っていきました。

きっと、素敵な、魅力的な野菜が描かれることでしょう。楽しみです。

(2017年6月29日・記 おもろ童子)

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