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第14回 青いイキモノ

2010.7.31
イキモノのにぎわい

「海のどんなところが好き?」
最近、縁あって海洋自然体験の仕事に関わっているのですが、じつはワタシ、
あまり海が得意ではなかったので、その質問の回答に一瞬、窮してしまいました。

父親が典型的な山男で、夏休みに出かけるといったら山。海の免疫が
ほとんどなく、海洋生物もビジュアル的に多くが苦手な感じ。
私にとって海は、富士山と同じで遠くから見て良きもの。
そのときの質問の回答は、「空と海が一体になる風景が好き」でした。

でも流石に仕事上、風景だけ見ていれば済む話ではなく、恐る恐るも
海の生き物に触れることになり、どうにか馴れ、今はむしろその魅力に
はまりつつあります。
そんななか出会ったのが、”青い色”のイキモノ。
まさに青空や海の色をそのまま吸いとった様な不思議なイキモノたちです。

先日、三浦半島の海岸で「カツオノエボシ」、「カツオノカンムリ」、
「ギンカクラゲ」というクラゲと遭遇しました。
カツオノエボシは何度か見て知っていましたが、他の2種ははじめて。

カツオノエボシは風船のような浮き袋、カツオノカンムリは兜のような帆、
ギンカクラゲは円盤形の浮きを使って、海面に浮び風力で移動します。
風力を利用するためかなりのスピードで移動するらしいのですが、
完全に風任せのため、よく海岸に打ち上げられてしまうんだそうです。
この3種とも、青い色をしています。
外敵から襲われないための保護色といわれています。

機会があったら是非!見てもらいたいのが、ギンカクラゲです。
身体の中心部はまさにコインのような円盤状。その部分は銀白色なのですが、
その周りについている触手が他の2種に比べ、目が覚めるような青い色!
しかも1色ではなく、藍色や縹色、水色などいくつかの青系で構成され
(少なくともワタシが拾った個体はそう見えました)、触手の長さも
長いものや短いものが絶妙のバランスで不規則に伸び、まるで紋様のよう。

全体を見ても、一部分を見てもなんとも形容しがたい、素敵な姿なのです。
思わず一目惚れ。仕事中にもかかわらず、魅入ってしまいました。
生き物それぞれの姿は、その種が生存するための最も機能的なつくりだと
思われますが、生き物たちが織り成す色や形には、いつも感動させられます。

季節の移ろいに敏感な日本人は、四季を十二月、二十四節気、三十六旬、
七十二候と分け、さらに立春・立夏・立秋・立冬、春分・秋分、夏至・冬至、
小寒・大寒などを設け、季節の変化を繊細に表現し、年中行事や歳時記として
生活に取り入れ過ごしてきました。
そして、建築物や調度品、着物等の紋様や家紋、絵画、和歌、俳句、音楽など
様々な伝統や文化のなかに、自然環境や動植物の姿を描写してきました。

クラゲ(水母・海月)は、俳句の夏の季語です。

この時期、海岸を散歩すると青い色のクラゲに出会えるかもしれません。
猛毒を持っているかもしれませんので、出会ったら触らず、ひと夏の思い出として
そっと見つめてあげてください。

(Tanji)

参考文献:
ジェーヒッシュ 『クラゲのふしぎー海を漂う奇妙な生態ー』 技術評論社 1996
藤井謙三監修 『きもの文様』 世界文化社 2009