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第12回 軒下の日向ぼっこ

2010.5.31
イキモノのにぎわい

先月、東京都でノラネコへの餌やり問題に判決が下され話題になりました。
イエネコ、ノネコ(※1)をめぐるご近所トラブルは絶えず、愛玩動物が故に
感情的な対立を招くこともしばしば。

ネコが人間社会に組み込まれたのは、狩猟時代のイヌよりもずっと遅く、
農耕時代がはじまり穀物等を鼠害から守る動物として広まっていきました。
日本では、穀物だけでなく経済の一翼を担う産業であった養蚕業の
お蚕様を喰うネズミを駆除する益獣として農村部で大切にされてきました。
私の故郷の福島では、養蚕の守護神としてネコを信仰の対象とした地域が
あり、猫稲荷や猫神が点在します。

人間と動物がうまく折り合い、益獣への感謝の気持ちを捧げるとともに、
人間の都合で害獣として駆除してしまった動物はきちんと供養し祀った、
そんな時代がありました。

今は生活様式も大きく変化し、イヌ・ネコは伴侶動物として家族の一員として
その地位を占めるようになりました。イヌ・ネコの飼育頭数は約2,700万頭に
も達し(※2)、未成年者数の約2,300万人を超えます。
しかし、その反面、保健所で殺処分されるイヌ・ネコは年間約40万頭。

原因はもちろん人間です。飼い主や愛好家の周囲への配慮の気持ちや
責任感、周りの人々の理解と協力が得られない限り、無垢な命は奪れ続けます。
人間の身勝手な思い込みの動物愛護の精神は、逆にその愛らしい生き物を
傷つけてしまいます。
私が住む横須賀市では、連合町内会や獣医師会、動物愛護及びボランティア
団体、保健所が「横須賀市猫対策連絡会」を立ち上げ、昨年にはネコの飼育
ガイドラインを作成しました。また、今年3月には環境省でもイヌ・ネコの適正
飼養ガイドラインを策定するなど、これまで曖昧だった地域社会でのネコ問題
の対策がはじまっています。

ノネコ問題は、もうひとつ大きな問題があります。
野生動物を調査している方が、外来種のアライグマの生息圏を把握する
調査を行ったところ、人家や田畑の他、森林の奥に仕掛けた檻のほとんどに
ネコ(イエネコかノネコか不明)が入っていたそうです。餌や仕掛けを工夫した
そうですが、何度か同じ状態にあい、これだけネコがかかるということは、
生態系になんらかの影響を及ぼしているのではないか、と話を聞いたことが
あります。
この調査場所は首都圏でしたが、実際に島嶼域ではノネコが生態系に対して
多大な影響を与えていることが分かっています。
例えば、北海道天売島のウミネコや東京都小笠原のハハジマメグロ、
沖縄県やんばる地域のヤンバルクイナなど希少種の捕食、その他、長崎県
対馬島のツシマヤマネコや沖縄県西表島のイリオモテヤマネコとの競合・
感染症媒介等の問題です。
これも、もともとネコがいない場所に、人間が持ち込んだことが原因です。
長い年月をかけ育まれてきた在来の生態系を崩すことは、何らかの形で
いずれ人間にかえってきます。

手元にある浮世絵集に、超ネコ好きとして有名な江戸時代の浮世絵師・
歌川国芳の作品があり、ネコの姿が愛情いっぱい描かれています。
私はどちらかというとキツネやオオカミなどイヌ科の動物のほうが好き
ですが、道端や軒下で日向ぼっこしているネコの姿には心が癒されます。
昔も今もこれからも、人間とネコの程よい関係を続けるためには、人間側の
モラルにかかっていると言っても過言ではないと思います。

(Tanji)

※1私たちが接するネコ、つまり「イエネコ」はリビアヤマネコを飼い慣らしたもので、
それが野生化したものが「ノネコ」。
※2環境省報道発表資料(平成22年3月11日)「住宅密集地における犬猫の
適正飼養ガイドラインの策定について(お知らせ)」より一部引用

参考HP:
総務省統計局HP 人口推計月報
地球生物会議ALIVI HP 犬猫の処分数の減少に向けて
環境省HP 動物の愛護と適切な管理