第126回 「障害」「障がい」「2次障害」

2019.3.1
いしだのおじさんの田園都市生活

・前回、「こんな夜更けに」の話をした。
そうだった。結局映画は見ていないけど、、、
・そうだね。映画原作者の『なぜ人と人は支え合うのか』という新書がある。
ちくまプリマー親書?
・入門書という意味かな?岩波にはジュニア新書がある。中高生向き。
でも、なかなか難しい。大塚さんも書いている。
・そうだよ。中学生を馬鹿にしちゃあいけない。大江さんも書いている。
うん。
・この本がいい。俺たち関係者が悶々としていることを整理して言語化してくれている。
そうなんだ?
・周囲に薦めたくなる。
薦めた?
・いや、それが、、、FBにはアップしたけど、職場では、、、
なんだよー。意気地なし。
・スマン。(職場ではあまり周囲に発信していない。)
ま、許す、か?(職場で、いろいろある。)
・この本の中に表記の問題が出てくる。
ヒョウキ?
・漢字で「障害者」と書くか?(「障がい者」と、)害のところをヒラガナにするか?
うん。最近、ヒラガナの方をよく見かけるよね。
・俺、自分の本のタイトルに漢字で書いたら、尊敬する先輩に「問題ある」と言われた。
そうなんだ。
・そういう時代だったかも、、、(2005年)
時代?
・ヒラガナ表記がじわじわ広がっていた。
ふうん。どうして?
・それは、なかなか一言では言えないけど、「害」って、イヤじゃん。イメージとして。

・畑でも、「害虫」とか、「獣害」とか、、、
「公害」とか、、、
・最近は、「光(ひかり)害」もある。
うん。
・あれって、農業に被害を与えてるんだって。田んぼの隣にコンビニがあると減収したり。
話がソレた。
・基本、害はマイナスイメージ。それだけで、打ちのめされる。
う、うん。害と者がくっついちゃったらねぇ。辛くなるよね。
・でも、俺の本に推薦コメントを書いてくれた福島さん。
盲聾の東大教授。前回も話に出た。
・そう。有名人にあやかろうとしている石田周一。
ははは。あやかっても、タイシタことない石田周一。
・ははは。彼は、それでも、「障害は不便だけど、不幸ではない」と言った。
うん。でも、ヘレンケラーを思い出すと「3重苦」なんて言ったりする。
・そう。障害=苦っていう風にとらえる。世間一般では。
世の中的にはそれがまだまだ主流じゃないの?
・パラリンピックとかで、少しは印象が変わるか?
そうだといいねぇ。
・障害に負けずに頑張る感動ばかりがステレオタイプになるのも問題。
愛は地球を救う的な、、、
・あれは、感動ポルノだという批判もある。
ナニ?それ?
・清く正しい障害者の並々ならぬ頑張りというイメージをつくっている。
なるほど。
・「私たちはあなたの感動のために居るんじゃない」と言った障害当事者の人がいる。
そうなんだ。
・よく、「クラスに障害の子がいるとみんなが優しくなれる」と言うこともある。
そうか。そのためにいるわけじゃないよね。
・いてあたりまえ。特別にいてくれる、という意味で言うなら、ちょっと違和感だよね。
話がソレたかも。またまた。
・?
漢字とヒラガナ、、、
・俺が仕事を始めたころは、「知的障害者」は「精神薄弱者」だった。
ヒドイよね。
・うん。知的ハンディがあっても精神が厚くて強い人はたくさんいる。
知的ハンディが無いはずなのに、精神が薄くて弱い人も、、、
・知的能力が高いはずなのに根性が悪い奴が国会で屁理屈言っている。
またまた、話がソレタ。漢字とヒラガナ、、、
・それは、本を読んでもらった方がいい。
なんだよー。
・いや、奥深い話なんだよ、これが。それは、だから、活字で読んだ方がいい。
はいはい。
・俺が今回考えたいのは、また、別の視点。
なんですか?ここからが本題?
・「2次障害」というコトバがある。

・「元々の障害が原因となり別の障害を発症する」というもの、とある。
例えば?
・それは、「障害への無理解や不適切な対応によって引き起こされる」と、ある。
だから、具体的には?
・「しばしば発達障害の方がうつや引きこもりになりやすい」と、ある。
うん。
・発達障害は、知的障害が無い場合など、分かりにくいということがあるよね。
「空気を読まない」とか、「カワリモノ」とか、で、いじめられたり、、、
・そう。そういう「不適切な対応」が引き起こされて、本人の状態が悪くなる。
それが2次障害?
・ただ、不適切な対応は、そういう悪意によるものだけではない。

・一見して障害が分からない場合、愛情をもって接している家族でも、、、
できるのに「やらない」のか、「できない」なのか分からず、とか、あるよね。
・特にお兄ちゃんは自然に身についたから、それがアタリマエと思ったのに、、、
弟は、いくら言っても、で、親がキレちゃったり、とか?
・よくあるんだよ、そういうケース。
うん。教員も分からなかったり、、、
・そう。分かろうとしないことすらある。
うん。
・そうなると、本人は家にも学校にも居場所がなくなったりする。
辛いね。
・いわゆる発達障害は最近いろいろ言われ過ぎの傾向もあるけど、、、
さかなクンとか?
・考えるキッカケにはなるよね。
うん。
・だけど、はっきりとした障害の場合も2次障害はさまざま、ある。
うん。
・障害が明らかだと、親や周囲が教育不可能と思いこんじゃう。
うん。教えても無駄だと、あきらめてしまう。
・ちゃんと教えればできることもできなくなっちゃう。
悪循環?
・あきらめて、イイカゲンな教育をして、結果2次障害が出て、問題行動が出る。
その、問題行動を「障害」と思ってしまう。障害があるからそうなるのかと、、、
・それが、「障害」というコトバの、まさに「障害」なんだよ。
漢字かヒラガナかの問題ではない?
・いや、それはそれで、モンダイなんだけどね。
難しいね。
・ただ、障害はもともと機能障害、能力障害、社会的不利に分けられていた。
ますます、難しい。
・それも、今日では、また別の指標、考え方になっている。

・障害を「医学(個人)モデル」ではなく「社会モデル」としてとらえる。

・歩けないことが問題なのでなく、段差があることが問題。
なるほど。
・かなり、端折った例えだけどね。
でも、社会を変えていけばいいということでしょ。
・そうなんだけど、、、
けど?
・段差をなくすと、練習すれば段差も越えられる人がその力をつける機会を失う。
うーん。
・バリアアリーというコトバもある。
なんですか?バリアフリーじゃなくて?
・例えば、家の中でもよく使うものをあえて少し高いところにおいておけば、、、
なるほど。身体を伸ばすよね。介護予防?
・そもそも、子どもは引力に逆らって発達する。
そうだね。でも、高齢になっても引力に逆らわなきゃって、ちょっと、ねぇ。
・社会を変えると言っても、それがどういう社会であるかは単純ではない。
立場によっても違ってくるね。
・社会レベルの話を個別レベルでも考え、いろんな立場から、対話していくことが、大事。

(石田周一:花粉症歴そろそろ40年)